世界初の量産EVだからこそ失敗は許されなかった! デビュー11年で今なおバッテリー火災ゼロを誇る日産 リーフの技術力
- 筆者: 鈴木 ケンイチ
- カメラマン:茂呂 幸正・和田 清志・小林 岳夫・MOTA編集部・NISSAN
2010年12月の初代リーフ発売から10年が経過した2020年12月、日産は世界初の量販EV(電気自動車)「リーフ」のグローバル累計販売台数が50万台となったことを発表した。日本を始め米国、英国の各日産工場で造られるリーフは、世界59の国や地域で愛用されている。大量なリチウムイオンバッテリーを車載し、世界で延べ180億キロ以上を今も走り続ける日産 リーフだが、10年以上に渡りバッテリー起因による火災事故は発生していないという。これは驚くべき事実だ。世界が急速にEVシフトに向かう中、改めて日産 リーフの優秀さについてモータージャーナリストの鈴木 ケンイチ氏がレポートする。
国内での車両火災は年間3000~4000件発生! 今後はリチウムイオンバッテリー起因の火災も危惧される
可燃物の石油を燃料とする自動車、故障や交通事故などで発火する事故が毎年発生している
クルマは、意外と燃えるものである。総務省が発表する「平成30年版 消防白書」を見ると、平成29年(2017年)に発生した車両火災は3863件であった。その前年は4053件。つまり、日本国内だけで、毎年3~4000件もの車両火災が発生しているのだ。ちなみに日本の交通事故死亡数は平成30年で3532人。だいたい、交通事故死亡者数と同じだけの車両火災があるのだ。
それだけ燃えてしまうのは、クルマには、非常に燃えやすいガソリンが積まれているからだ。そのガソリンに、クルマの故障や交通事故などで火が着いてしまうと、もうちょっとやそっとでは消えることはない。
モバイルバッテリーやPCなどでも事故が発生中! EVに積まれるリチウムイオン電池にも発火の危険性がある
そして、今、注目を集めているEVにも同じく危険な可燃性のモノが大量に積まれている。それがリチウムイオン電池だ。リチウムイオン電池は過熱すると、中から可燃性のガスを発して燃え出す。発生するガスに火が着くのだから、文字通り火を噴くように燃える。これもガソリンと同じように、非常にやっかいな火災だ。不具合でも燃えるし、物理的な破損があると内部がショートして燃えだす。
EVメーカーの代表格であるテスラは、パナソニック製のリチウムイオン電池を搭載する。信頼性の高い電池ではあるが、それでも、交通事故で度々、車両火災を発生させている。同じように他メーカーのEVも交通事故などでバッテリーが物理的に破損すると、やはり燃えてしまうだろう。
車両に搭載する大量の電池は一度燃え出すとやっかいな代物だ
しかも、問題は、EV搭載のバッテリーは、モバイルバッテリーとは比べものにならないほど大きいため、消火も大きさになりに難しいことだ。一度、火が消えても、熱によって再び発火することがある。
あまりに電池を冷却するのに大量の水が必要であるため、いっそ水を満たしたコンテナに燃えているEVを水没させる方法まで検討されている。EVの車両火災のたびに水を溜めたコンテナを用意しなくてはならないのは、あまりに面倒だが、他にうまい手立てがないということだろう。
世界50万台を超える販売台数を誇る日産 リーフでバッテリー火災事故は確認されていない
ところが、驚くことに、日産のEV「リーフ」は、まったく燃えていないという。不具合どころか、交通事故でも燃えていないというのだ。リーフは、2010年の発売以来、世界市場で50万台以上が販売されている、世界屈指の大量生産モデルだ。販売から現在まで、総走行距離は180億km以上にもなる。それだけ走れば、交通事故に遭った車両も数多くあるはずだ。しかし、リーフが燃えたという話を耳にすることはない。
実は、最近、踏切で電車と衝突したという痛ましい不幸な事故がテレビにて報道されていた。見ると、クルマはグチャグチャになっていたが、Cピラーやリアのストップランプの形から、日産 ノートと推測できた。そこで注目したのが、ズタズタになって露出したパワートレインだ。オレンジ色の特徴的なケーブルがあってハイブリッドの「e-POWER」車両であることもわかった。これに搭載されているのは、少量だが、やはりリチウムイオン電池だ。そして、驚くことに、その事故車両は燃えていなかったのだ。電車と衝突しても燃えていないとは、どれほど丈夫に作られているのだろうか。
世界に先駆け市販化した責務! 車載リチウムイオン電池の安全性を最優先に設計された日産 リーフ
その報道を見ながら思い出したのが、3年ほど前に取材したリーフのリチウムイオン電池の座間工場だ(現在のエンビジョンAESC社)。そこは、人間の発する水蒸気さえも嫌って、徹底的に自動化が推し進められた工場であった。機械はクーラーでカラカラに乾燥されたクリーンルーム内に設置されている。その取材の一環で、リーフのリチウムイオン電池の安全性のテスト動画を見た。
バッテリーパックひとつひとつまで徹底して安全性を追求する姿勢
日産 リーフの電池は、1つ1つがレトルトカレーのようなラミネートパック形状をしている。そこに釘のようなものを打ち込み、物理的に壊して、内部ショートを発生させるのだ。ところが、それで火を噴くことはなかった。ブスブスと燻るだけで、最後まで燃えずに済んでしまったのだ。これには驚いた。
もちろん、見た動画は、限られた条件であり、100回中100回とも燃えないことを確認したわけではない。リアルな現実世界では、燃え出す可能性も決して否定できない。しかし、日産 リーフの現実世界の車両火災はゼロだ。2010年の販売から10年以上をかけて「燃えない」ということを、リアルな世界で実証してきたのだ。その説得力は、他に肩を並べるものはない。
「燃えない」。この一点だけでも、リーフの価値は計り知れないほど高いと言えるだろう。
[筆者:鈴木 ケンイチ/撮影:茂呂 幸正・和田 清志・小林 岳夫・MOTA編集部・NISSAN]
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