トヨタ 新型カムリ燃費レポート|カムリハイブリッドのセダン復権への貢献度を実燃費で検証してみる(2/2)

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トヨタ 新型カムリ燃費レポート|カムリハイブリッドのセダン復権への貢献度を実燃費で検証してみる
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トヨタ 新型カムリ実燃費レポート|総合評価

トヨタ新型カムリの総合実燃費:23.7km/L

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トヨタ 新型カムリハイブリッド 総合実燃費
グレード等総合実燃費カタログ燃費
カムリG23.7km/L28.4km/L
プリウスS 2WD28.8km/L37.2km/L
アコードハイブリッド現行初期型21.0km/L30.0km/L
アテンザ(ディーゼル)現行初期型 MT18.8km/L22.4km/L

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初めに新型カムリの燃費について。

車両価格は300万円を大きく超えるラージセダンにおいて、燃費は「それほど重要視されない」のかもしれない。それでも新型カムリは、アコードハイブリッドやアテンザディーゼルといった十二分に燃費のいいライバル車に明確なアドバンテージを持つだけでなく、プリウスと比べても納得いく燃費を記録したのはやはり凄いことである。

カムリなら広い車内で大人4人とその荷物が20km/Lオーバーの燃費で快適に移動できるというのは素晴らしい。

前半に書いた「買いたくなる積極的な理由を持つカムリにしたい」という開発の狙いはどうだろうか。

「運転して楽しい」という部分は特にないものの、燃費の良さだけでなく躍動感あるハイブリッドシステムや流麗なスタイル。

さらには、今までフロアにあったトランクリッドや給油口のオープナーがダッシュボード右下に移動した細かい点等から、「変わるんだ!」という意思のようなものを感じた。これらの変化を考慮すれば、開発陣の狙いは十分達成されたと思う。それだけに郊外路編で書いた「乗り心地がもう一歩」な点が非常に惜しく、早急な改善を願いたいところだ。

新型カムリの登場まで、忘れがちな300万円台のラージサイズのセダンだったが、現行カムリの登場を期に改めて見直して欲しい。

新型カムリ以外には、燃費はそこそこだがリーズナブルな価格で、今や希少かつ趣味性もあるV6ノンターボエンジンをFRで味わえる“トヨタ マークX”、カムリの直接的なライバルとなる“ホンダ アコードハイブリッド”、ディーゼルエンジンでMTの設定もある“マツダ アテンザ”、4WDの“スバル レガシィB4”、と日本車だけでもなかなか個性的な車が思い浮かぶ。

さらに「1年落ち、走行5000kmまで」といった実質的に新車に近い中古車(通称“新古車”)や、新車においても大きな値引きまで加味すれば、メルセデス・ベンツ CクラスやBMW 3シリーズといったプレミアムカーまで含めた輸入車も選択肢に入ってくるという、非常に面白いジャンルとなっている。

それだけに、競争厳しいこのジャンルでの現行カムリの戦いぶりや登場自体が、はたして文字通りの「セダンの復権につながるか」など、現行カムリの登場をきっかけにした注目すべきポイントは意外に多いのではないだろうか。

トヨタ カムリとは

トヨタ カムリは、1980年に当時のスペシャリティカー「セリカ」のセダン版として登場したセリカ・カムリ以来、現行モデルで10代目となる長い歴史を持つモデルである。

カムリは82年登場の2代目モデル以降、海外市場を中心に販売されるセダンで、86年登場の3代目モデルからはアメリカやオーストラリアでも生産。96年登場の6代目モデル以降はボディサイズがかなり大型化されている。

ここ20年ほど日本では目立たなかった存在のカムリだが、世界的に見るとヨーロッパ以外の地域、特にアメリカでは15年連続乗用車のベストセラーカーであるなど、トヨタにとっては失敗のできない非常に重要なモデル。例えるなら「大きな車が好まれる地域のカローラ」と言える存在だ。

ライバル車としては、国産車ではアメリカ市場も含め最大のライバルでもあるホンダ アコードやスバル レガシィB4、輸入車ではVW パサートや韓国のヒュンダイ ソナタといった「プレミアムカーではない、実用性重視のラージセダン」が挙げられる。

トヨタ カムリは、先代モデルまでカローラ店の専売扱いであったが、10代目にあたる新型カムリはトヨペット店、ネッツ店でも販売される。

昨今クルマ好きの間では「マークXがカムリに統合される!?」という噂が出回っているようだ。マークXを扱うトヨペット店(東京地区はマークXも販売されるトヨタ店でも扱われる)でカムリを扱い出したということは、その噂も真実なのかもしれない(今のところ公式発表はない)。

このようにカムリは、日本のトヨタのセダン車ラインナップにおいて、今後クラウンと並ぶ大きな柱となる可能性のある重要な役割を担っている。

新型カムリの開発コンセプトは「性能、智能を突き詰めることで官能をもたらす心揺さぶる上質セダン」である。このコンセプトが産まれた背景には、カムリはアメリカで「食パン、バニラアイス」というニックネームで呼ばれることがあったことが大きく関係している。

「食パン、バニラアイス」というのはよく解釈すれば「間違えのない定番商品」といえるが、悪く捉えれば「無難ではあるが、あまりこだわりなく選ばれる」とも解釈できる。そういったネガティブな声に対し「積極な理由を持つ買いたくなるカムリにしたい」というのが、新型カムリの開発意図だ。

この開発コンセプトを実現すべく、現行カムリの開発では車の土台となるプラットホーム、エンジンやトランスミッションとパワートレーンともに、トヨタが現行プリウス以降提唱するTNGAコンセプト(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)で同時に一新するという滅多にないチャンスに恵まれた。

現行カムリで初登場したプラットホームはGA-Kと呼ばれる。プリウスやC-HRのTNGA-Cプラットホームに続き、トヨタブランドとしてはTNGA第二弾となるもので、GA-KでもTNGA-Cプラットホームと同様の車の骨格の強さとなるボディ剛性の大幅な強化、スタイリッシュな低いボンネットの実現、低重心化、リアサスペンションの形式がストラットからよりタイヤの接地性に優れるダブルウィッシュボーンへの変更、などが行われている。

ハイブリッドのみとなる日本仕様のパワートレーンは、「ダイナミックフォース」をコンセプトに新開発された2.5リッター直4エンジン(最高出力178馬力&最大トルク22.5kgm)に、駆動用(最高出力120馬力&最大トルク20.6kgm)と発電用モーターを組みあわせたトヨタ車では当たり前となっているTHS-II(実質的な最高出力となるシステム出力は211馬力)を搭載。

この2.5リッター直4エンジンはロングストローク化や燃焼効率の向上、D-4S(燃焼室に直接燃料を吹き低燃費と高出力を両立する直噴と通常のポート噴射の2つのインジェクターを持つ)の採用などにより、熱効率(ガソリンをいかに効率よくエネルギーに変換するかを示す割合)は世界トップレベルの41%を実現した。

またハイブリッドシステムについては、駆動用バッテリーを従来のニッケル水素バッテリーから、軽量コンパクトで充放電性能にも優れるリチウムイオンバッテリーに変更。性能向上に加え、駆動用バッテリーは小型化により従来のリアシート後方からリアシートの座面下への移動が可能となり、ラゲッジスペースの大幅な拡大や低重心化にも貢献している。

結果、カタログに載る新型カムリのJC08モード燃費は、最良値で33.4km/L、主力グレードで28.4km/Lというラージセダンとしてはトップクラスの数値をマーク。全グレードが取得税、重量税の免税と翌年の自動車税の75%軽減が適応となる。

なお海外仕様の新型カムリには、ハイブリッド用と同じコンセプトで開発された2.5リッター直4(最高出力205馬力&最大トルク25.5kgm)と、3.5リッター V6(最高出力305馬力&最大トルク36.9kgm)がそれぞれ、こちらも新開発となる8速ATとの組み合わせで設定される。

最近では車を選ぶ際の重要なポイントになりつつある自動ブレーキも、「トヨタセーフティセンスP」が全グレードに標準装備される。

これはミリ波レーダーと単眼カメラからの情報を基に、歩行者検知機能付きの緊急ブレーキ機能、車線逸脱をドライバーに警告し逸脱を防ぐステアリング制御も行うレーンディパーチャーアラート、夜間ハイビームを積極的に使うオートマチックハイビーム、停止とボタン操作かアクセル操作による再スタートまで対応する先行車追従型のレーダークルーズコントロールから構成される。

さらに主力グレードのG以上には、進路変更などの際に死角になりやすい斜め後方を監視するブラインドスポットモニター(BSM)、駐車場などで前後に障害物がある場合にエンジン出力を絞り接触した場合でも被害を軽減する、リアクロストラフィックオートブレーキ機能付きインテリジェントクリアランスソナー、バックで駐車場から出る際などに通過する車を検知し警告するリアクロストラフィックアラート(RCTA)という3つの安全デバイスのセットもオプション設定される。

トヨタセーフティセンスPは、カムリのものと同等の性能を持つと思われるプリウスが受けたJNCAPのテストで、車に代表される物体に対しては50km/h、日中であれば歩行者の単なる飛び出しに対しては60km/h、陰からの飛び出しにも35km/hで停止しており、カムリの車格を考慮しても満足できる性能を備えていると考えて良いだろう。

グレード展開はベーシックなX、上級グレードのG、最上級のGレザーパッケージの3つから構成されている。

[レポート:永田恵一]

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筆者
樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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