スズキ新型アルト試乗&燃費レポート|低燃費のための軽量化は乗り心地に影響するのか?徹底評価!

スズキ新型アルト試乗&燃費レポート|低燃費のための軽量化は乗り心地に影響するのか?徹底評価!
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新型アルトの実燃費は24.1km/L|燃費レポート結果まとめ

カタログ値での燃費競争はひと段落しそうな気配もあるが、それでも他社に負けぬよう、ガソリンの一滴は血の一滴とばかりに、あらゆる技術開発を続けている軽自動車。そこで今回は登場後3年を経過したアルトを改めてテストの俎上に載せてみた。これは後日レポートするダイハツミライースの布石と考えて頂いてもいいだろう。

いつもはここでアルトとはどんなクルマかからスタートするのだが、それでは読者の方は許してはもらえないだろう。ということで、燃費結果からお伝えする。

▼スズキ新型アルト 燃費レポート結果まとめ

スズキ新型アルト 燃費レポート結果まとめ
アルト達成率<参考値>ワゴンR
グレードX--FZ
JC08モード燃費37.0km/L--33.4km/L
街乗り・市街地 実燃費24.7km/L66.90%23.7km/L
高速道 実燃費23.4km/L63.30%23.8km/L
ワインディング 実燃費9.9km/L26.80%--
実燃費 総平均値19.4km/L52.30%--
実燃費 総平均値*124.1km/L65.10%24.3km/L

*1:ワインディング除き

主に使われるであろう一般道での24.7km/Lをどう評価するかが、実用向けの軽自動車であるアルトの実燃費を考える際には重要だろう。

例えば、最近燃費レポートが掲載された新型ワゴンRの実燃費が23.7~25km/Lであることを考えると、24.7km/Lを記録したアルトはまずまずの数値といえるだろう。なぜなら、アルトはワゴンRに比べ140kgほど重量は軽い(アルト:650kg。ワゴンR:790kg)というだけで、ワゴンRにはマイルドハイブリッドが搭載されており、一番燃費に影響する発進時に、EV走行が可能になっているからだ。

高速道路においては23.4km/Lという数値だった。ハイト系のワゴンRが23.8km/Lとニアイコールだったことから、背が低く空気抵抗が低いアルトはもう少し伸びても良いかと思わないでもない。

総平均値でも、ワインディングを除き24.1km/LとこちらもワゴンRとほぼ同燃費を記録した。マイルドハイブリッドでもない軽自動車が、3年前にこの性能を引き出していたのは大いに評価に値するデータといえるだろうし、軽量化がどれだけ燃費に影響するかが窺われる数値だ。

しかし、JC08モード燃費と実燃費を比べたときの達成率が、6割台というのは少々乖離が大きいと評価せざるを得ない。

新型スズキ アルトとは

1979年、47万円という衝撃的な価格でデビューしたアルト。2017年には国内累計販売台数500万台を達成し、近年ハイト系が主流となっている軽市場にも関わらず、確固たる地位を確立している。

現行モデルは2014年にデビューした8代目。新型アルトは、ハイブリッドを除くガソリン車No1の37.0km/Lという低燃費で話題となった。その為にボディ構造はもちろん、シートフレームまで手が入れられ、先代比最大60kgの軽量化に成功。

レーダーブレーキサポートや横滑り防止装置のESPなどの安全装備も搭載された、今回テストしたXグレードの重量は650kg。因みに新型となったダイハツミライースの同等グレードとなるG”SAⅢ”は670kgなので、3年前に既にこの数値をクリアしていることは驚きに値する。燃費に最も影響するのは重量なのだからなおさらである。

新型アルトに搭載されるエンジンは、R06A型と呼ばれる先代アルトでも使われているものを高効率化。最大出力は52ps、最大トルクは63Nmと先代と変わらないものの、最大出力の発生回転が6000rpmから6500rpmにアップしている。

けれんみがなく、素直なエクステリアデザインの新型アルトは、誰からも好まれるものだろう。ユーザーの生活の中で美しいクルマを目指したというデザインは、無駄なキャラクターラインやデザインのためのデザインはなく、むしろそっけないくらいだ。しかし、フロント周りでは目力を与えられ、どことなく初代アルトも意識させている。

インテリアデザインは水平基調で広々感を演出。更に、先代よりも前後乗員間距離を85mm拡大。ホイールベースも先代に比べて60mm拡大していることで、予想以上に広々とした室内空間がもたらされている。

まだまだ紹介したい技術等もあるのだが、この辺りでテスト概要を述べたうえで、早速走り出してみよう。

実燃費テスト概要

テスト車両のグレードは、アルト“X”の2WD副変速機構付きCVT搭載車だ。テスト期間は5月18日から26日までの8日間で、主に一般道を中心に高速道路やワインディングロードも含めトータル800km弱を走行した。燃費計測は車載計を使用している。

新型アルト実燃費レポート|街乗り・市街地編

新型アルトの一般道での実燃費:24.7km/L

走行距離:610.5km

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テスト車両を受け取り、ドアを開けた瞬間に室内の広さに驚いた。それはデザインマジックだけではなく、ホイールベースを先代よりも60mm長く取ることで、室内空間をはるかに広く見せている。リアシートとニールームは大型サルーンかというほど広く、また、助手席に人が乗っていても狭苦しさは全く感じない。

走り出してみると、まずクルマの軽さに驚く。新型は、先代より最大60kg軽量化されているのだから当然だが、それを強調しているのがCVTのセッティングだ。アルトは副変速機構付きCVTを搭載することで、ギアレシオをワイド化。そうすることで、発進時から高速域まで幅広い範囲を細かく制御できているのだ。なので、発進時においてもアクセルを踏むと、これまで想像していたCVTよりもはるかにきびきびと、遅れなくスタートが可能になっている。

また、軽量化した場合、ボディが緩くなったり、走らせても安定感がなく安全性に不安を感じたりと想像しがちだが、新型アルトの場合はその予想は良い方に裏切られた。確かに走らせれば、クルマが軽く、軽快な印象を与えるが、一定速度で走っていたり、交差点での右左折時、あるいは、信号で止ったりする際に、いかにもクルマが軽く、どこかへ飛んでしまいそうな不安感は全くない。極端にいうと、軽自動車に乗っているということを忘れさせてしまうくらい、しっかりとした乗り心地を確保している。

これは、ボディ剛性の高さが大きく影響している。新プラットフォーム(HEARTECT)の採用で軽量化を実現するとともに、アンダーボディの曲げ剛性やねじり剛性を30%アップ。また、高張力鋼板や超高張力鋼板を適宜使用することで、剛性の高いボディを実現。軽自動車とは思えないしっかりとしたボディに仕上がっている。

街中を軽自動車で走ると、その取り回しの良さや運転のしやすさを常に再確認するのだが、それは今回のアルトでも同様だった。くるくるとよく回る軽いステアリングは、街中では強い味方となるし、駐車時もこの上なく楽である。

しかし、その駐車時や車線変更時に左後ろに死角が出来てしまった。これはデザインの影響によるものだ。新型のアルトは、フロントから流れてきたキャラクターラインをリアドア部分で蹴り上げることで、軽快感を演出しているのだが、実はそこで死角が生まれてしまったのは何とも残念だ。

乗り心地の硬さもやや気になった。これは軽量なボディと共に、最上級グレードに設定される15インチタイヤが影響し、若干路面からの凹凸をこまめに拾って乗員に伝えてくるのだ。もう少し突き上げ感を減らすために、サスペンションの入力方向のしなやかさが欲しいと感じた。そうすることで、更に落ち着きのある乗り心地を得ることが出来るだろう。

アルトが輝き始めるのは、実は混んだ渋滞路や狭い街中ではなく、流れの比較的速い郊外のバイパス路などだ。特に40km/hから60km/h程度でスムーズに流れている道路では、硬い乗り心地もそれほど気にならず、軽いエンジンのハミング音と共に快適なドライブが楽しめる。

さて、アルトを街中、特に混んだ市街地でドライブして一番気になったのはCVTの制御だ。特に信号からスタートし、10km/h程度で若干アクセルを戻し、再び踏み込むとぎくしゃくした動きと、時にごつんとショックを感じる。これは、40km/h程度の速度域でも再現されることがあった。せっかくアクセルを踏んで、回転がある程度上がり切ってから速度が追い付いてくるというCVTの嫌らしさが限りなく減ったにもかかわらず、これでは元も子もない。

この原因は大きく2つあると思う。ひとつはロックアップだ。単純に説明すると、エンジンの駆動力をダイレクトにCVTに伝える機能で、そうすることでロスを抑え燃費向上につなげている。近年では10㎞/h程度からロックアップさせ始めている。そのタイミングとアクセルのオンオフのタイミングが重なって、ショックが起きるということ。もう一つは副変速機構の切り替えタイミングだ。このどちらか、あるいは両方が影響しあいショックが出てしまっているようだ。

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さて、街乗りでの燃費は24.7km/hを記録した。朝夕の通勤ラッシュなどに遭遇すると20km/Lをわずかに割ることもあったが、多少なりとも流れれば、20km/Lを下回ることはなく、前述の得意と感じる郊外の空いた道では30km/Lに手が届こうという数字まで伸びることも度々あった。

新型アルト実燃費レポート|高速道路編

新型アルトの高速道路での実燃費:23.4km/L

走行距離:171.0km

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軽自動車といえども、たまには高速道路も走るだろう。そこで、アルトも170kmほど走らせてみた。やはりというか当然というか、料金所からのスタートダッシュや合流などでの俊敏な加速は期待できないが、速度さえ乗せてしまえば淡々と80km/hを保って巡行することは苦もないことだ。法さえ許せばそこから1.5倍程度の速度での巡行も可能な余力は残っており、エンジンの透過音もそれほど大きくなく、耳障りでもない。

ただし、上り坂になると徐々に速度が落ち始め、速度を維持するためにその分アクセルを踏み込む量が増え、アンダーパワーを感じる。その結果、燃費も低下傾向に陥ってしまう。一方、平たんな道や下り坂では面白いように燃費が伸びていく。平均すると、23.4km/Lと、一般道より約1km悪い結果になったのは、パワーの点からも致し方ないだろう。

さて、アルトのシートは軽量化を図られたとは思えないほど良く出来ており、長距離を淡々と走る分には意外にも疲れが少なかった。ただし、後ほど述べるワインディングロードではサイドサポートが不足気味であったものの、クルマの性格を考えれば仕方のないこと。それ以上に乗降性を優先した結果だ。

残念なことに直進安定性はそれほど高くない。これは、ステアリングによるものが大きく、路面のフィールがほとんど伝わってこず、また、切り始めが少し甘く、かつ中央に戻ろうというキャスターアクションが弱いので直進を保つのに意外と気を遣うからだ。

それを除けば高速では下手なリッターカーよりも快適に移動できるだろう。27リッターのタンク容量をフルに使えば、600km以上を無給油で走り切る実力はある。

新型アルト実燃費レポート|ワインディング編

新型アルトのワインディングでの実燃費:9.9km/L

走行距離:7.7km

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アルトのような実用車でワインディングを走るのはどうかと思われるだろう。個人的にもそう思う。しかし、あえて今回ワインディングにハンドルを切ったのは、ボディ剛性の高さをきちんと確認したかったからだ。

シフトをLにセレクトし、グイグイと上り坂を攻め始めると、力強くアルトはコーナーをクリアし始めた。ステアリングフィールはあまり路面の感触を伝えてこないのは心もとないが、意外とあてずっぽうでもボディサイズが小さいので、それほど狙ったラインを外れずにクリアできる。

コーナーではかなりタイヤが勝った印象を受ける。そこそこのスピードでコーナーに突っ込んでも、弱めのアンダーステアで、あえてアクセルを戻してタックインを誘発しても、それほど姿勢に変化が見られない。また、硬い乗り心地もあり、ちょっとしたギャップ(凹凸)ではかなりのショックを覚悟しなければならない。

本来の目的であるボディ剛性はしっかり確保されているといっていいだろう。前述のギャップをクリアするときに、若干フロア周りの緩さを感じるものの、もしこれが13インチタイヤであったら、ほとんど気付かないレベルだ。シートはホールド性が低いので、腰が痛くなることがあった。

新型アルトは、予想通りワインディングで楽しめる類のクルマではない。もしそこも求めるのであれば、アルトRSかアルトワークスを選べば間違いはなく、それだけのパワーを受け止られるボディ剛性は持っていそうだ。そのうえホールド性の高いシートも備わっているのだから、なおのこと安定するだろう。

新型アルト実燃費レポート|総合評価

アルトの細かい欠点をあげつらうのは簡単だ。例えば、ドライバー右側のアームレストに肘をかけると、肘の部分にポケットの角が当たって痛いし、信号停止時などで間欠ワイパーが作動すると、ステアリングに響いてくる。

しかし、クルマの基本性能となる、曲がる、走る、止まるという点はきちんと押さえられている。更に大幅に軽量化されつつもしっかりとしたボディ剛性も保たれ、本当に生真面目に作られたクルマということが伝わってくる。

ただし、度々述べて来たCVTの違和感は、このクルマが主に使われるであろうシーンにおいて、ウイークポイントとなるものなので、近い将来改善されることを期待したい。

今回テストしたのは最上級のXグレードで、165/55R15タイヤが装着される。まずこのタイヤはオーバースペックなので、チルトステアリング(これはXにしか付かない)の必要性が感じられなければSグレード。シートリフターも必要なければ、“X”以下のレーダーブレーキ装着グレードで十分だ。これらグレードは何よりも145/80R13と少し細くハイトのあるタイヤが装着されるので、乗り心地がかなり改善され、実燃費も向上する。

新型スズキアルト 主要スペック[Xグレード]

スズキ アルト テスト車両主要スペック
主要諸元アルト
グレードX
価格1,134,000円
駆動方式2WD(FF)
トランスミッションCVT
全長3,395mm
全幅(車幅)1,475mm
全高(車高)1,500mm
ホイールベース2,460mm
乗車定員4人
車両重量(車重)650kg
エンジン水冷4サイクル直列3気筒
排気量658cc
最大出力38kW(52PS)/6,500rpm
最大トルク63N・m(6.4kg・m)/4,000rpm
燃料無鉛レギュラーガソリン

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内田 俊一
筆者内田 俊一

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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