三菱 パジェロ ファイナルエディション 試乗|有終の美となるか!? SUVブームの“火付け役” パジェロ 最終モデルに乗ってみた(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林 岳夫・MOTA編集部
最後を記念し、ファイナルエディションに試乗してきた!
そこでパジェロのファイナルエディションを試乗してみることにした。
パジェロのようなオフロードSUVは、立ち往生すると乗員の生命に危険がおよぶような、過酷な環境で使用されることも多い。そうなるとオフロードSUVにとって、舗装路での走りは副次的な性能だ。悪路を優先させたことで、舗装路の性能が下がることもある。この傾向は設計の古い車種ほど強まる。
現行パジェロの発売は2006年だが、フレームを内蔵させたモノコックボディやプラットフォームは、1999年に発売された先代型の3代目と共通だ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も同じ数値になる。
味のあるドライバビリティはオフロードSUVそのもの
従って現行パジェロのファイナルエディションも、運転感覚は古典的なオフロードSUVだ。例えば高速道路で車線を変える場合、ハンドルを切り込んだ時の反応が鈍い。ハンドルの操舵角にして30度くらいまでは曖昧な印象だ。
この設定は、悪路を走る時には都合が良い。激しいデコボコの通過では、前輪が左右に揺すられるが、操舵系統の動きが鈍ければ受け流すこともできる。ハンドルが左右に動く強くキックバックも抑えられる。
また高重心のオフロードSUVにセダンのようなステアリングを与えると、機敏に動き過ぎて、車両の挙動が不安定になる場合もある。ミニバンにも当てはまることだが、高重心のクルマは操舵感を鈍めに抑えることが多く、パジェロはこの傾向が強い。
背面スペアタイヤも走行安定性に影響を与えた。横開き式のリアゲートに、重いスペアタイヤを装着する収納方法だ。荷室を狭めず、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)も犠牲にしないスペアタイヤの取り付け方法として、第二次世界大戦で活躍したジープなどで普及した(1940年以前には乗用車にも同様の収納方法があった)。
ただしボディが後輪から後方へ張り出したリアオーバーハングの後端、しかも高い位置に重量物を取り付けて、リアゲートも補強で重くなるから、走行安定性に与える悪影響は大きい。危険回避を想定した車線変更などを行うと、ボディがかなり揺り返す。この素性で安定確保のために後輪の接地性を高めるから、峠道などを走ると結果的に曲がりにくい印象になった。
クリーンディーゼルターボ×オフロードSUVの相性は抜群
乗り心地は大きめの段差を乗り越えると、少し粗く感じる。車両全体の動きはゆったりしているが、タイヤとホイールの重さを意識させられる。前後方向の揺れも大きめだ。
エンジンは直列4気筒 3.2リッターのクリーンディーゼルターボで、この性能はオフロードSUVにピッタリだ。最高出力は190馬力(3500回転)、最大トルクは45kg-m(2000回転)だから、実用回転域の駆動力がきわめて高い。ATのクリーピングを使いながらゆっくりと発進して、軽くアクセルペダルを踏み増した1300回転付近から、ターボの過給効果を感じる。
クリーンディーゼルターボ搭載車には、1500回転以下で駆動力が明確に落ち込む車種も見られるが、パジェロにこの傾向はない。排気量に3.2リッターの余裕を持たせたこともあり、低回転域の粘り強さが魅力だ。
アクセル操作に対する反応もちょうど良い。ディーゼルターボには、アクセルペダルを踏んだ時の反応が鈍く、次の瞬間に駆動力が盛り上がるタイプもあるが、パジェロにこのような扱いにくさはない。
低回転域から高い駆動力を発揮するパジェロのエンジン特性は、滑りやすい悪路を低速で進む時も都合が良い。微妙なアクセル操作をすれば、駆動力を細かく調節できるからだ。
Dレンジでアクセルペダルをフルに踏み込んだ時のシフトアップは4100回転で行われ、ディーゼルとしては高回転域の吹き上がりにも不満はない。ディーゼルの良さを満喫できる。
>>パジェロ、長い間お疲れ様でした![次ページへ続く]
この記事にコメントする