まるで“ミニデリカD:5”なeK Xのデザインはどうやって生まれた!? 三菱デザイナーインタビュー(2/2)

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三菱独自のテイストはカラーリングにも

アイデアとデザイン力で4車種を作り分けている兄弟車だが、日産と三菱をまたいだNMKVという会社を経ているにせよ、別メーカー間でその差異を出すのは容易になしえないことだと感じた。そこで、なぜこのような“デザインの妙”が共同開発車で可能となったのかを、 eKシリーズのデザイン担当である三菱自動車工業株式会社 デザイン本部 プロダクトデザイン部 デザイン・プログラム・マネージャー 大石 聖ニ氏にお話を伺ってみた。

「 eKシリーズとデイズの設計は日産が行っています。私たち三菱のデザイナーも日産社内に入って、デイズ担当のデザイナーと一緒にデザイン作業を行いました。4車種を作り分け、同じ工場で4車種を流すには、その方法は必須でした」

————作り分け以外にもボディカラーも4車種分だとかなりのバリエーションになりますね。工場では生産工程が大変なのではないでしょうか。

「三菱だけで5パターンの2トーンカラーがあります。日産は4パターンです。うち一つは共通(赤×黒)ですので、合計8パターン。塗装ラインを2度回り、その間に塗装の継ぎ目は手加工のマスキング工程があります。ズバリ、大変です(笑)。」

————カラーリングのテーマやコダワリはありましたか?

「三菱らしく、 eKクロスではSUVテイストで“振り切る”ことにしました。そのため日産側には無いイエローやグリーンを用意しました。スポーティ、かつ女性にも親しみやすいカラーリングを目指しています。一方で日産と同じ色も多くあります。色名は異なっていますが(笑)。カラーリング選定についても、日産のデザイナーと定期的にミーティングを行いました。まさに共同開発ですね。私は国内車種を数多く手がけてきましたが、メーカーをまたいでの開発は初めてでした。今回、ボディサイドにはしっかりと陰影を与えて、軽自動車に見せないデザインを実現していますが、ベースを手がけた日産のデザイナーの手腕と、軽自動車開発のノウハウを多く持つ三菱の生産技術の高さによるものだと思います」

————なるほど、両社のメリットが生きている感じですね。それと、SUV風を含め4車種でボディを共用することで、デザイン上ではご苦労がありましたか。

「デザインは、いろいろと大変でした。大変じゃなかったことが少ないくらいです。SUVだとキャラクターラインはなるたけ水平にしたい。でも、日産側ではスポーティに見せたいので、極力斜めにしたい。そういう細かなやりとりは数え切れないほどありました。でも、三菱の“わがまま”もたくさん聞いてもらえました。私たちにとって素晴らしい経験になりました」

各部や用品、インテリアにもこだわりと工夫がいっぱい

———— eKクロスでは、大胆な顔を上手に eKワゴンに収めていますね。

「日産サイドからは eKクロスのグリルに配置したメッキパーツについてコスト的な指摘もありましたが、“ダイナミックシールド”を作るのは大命題でしたので譲れませんでした。あと、アクセサリー(オプション)で“フロントバンパーガーニッシュ”という用品があるのですが、これで eKクロスのバンパー下部にあるシルバー部を色替えすることができます。白、黒、オレンジを用意していますが、黒を取り付けるとバンパーが引き締まって、SUV感がアップすると好評です」

————確かに、バンパー下部が黒くなることで「エクリプス クロス」のような雰囲気も出ますし、アプローチアングルが深いようにも見えます。これはいいですね。アクセサリーは別の部署が手がけているのですか?

「それが、この4車種のうち、三菱では用品デザインも私たちが担当しました。クルマと用品を同じメンバーが担当することはなかなか無いことですが、一体感を生むには良いことです」

————他にこだわっているポイントがありますか。

「 eKクロスのフェンダーに黒いフィルムを貼っているのですが、フィルムはフェンダー内側にも少し折り込まれています。そのため eKクロスでは、フェンダーの中もフィルムを貼りやすい処理になっています。それと、車名エンブレムもステッカーではなく立体で、しかも細いブリッジで繋がっていない“バラ文字”です。高級車レベルです。細かいことですが、高い質感を生み出すことができます」

————軽自動車は限られた寸法の中で作らなければならないですよね。その中で eKシリーズはデザイン、機能ともに素晴らしいクルマに仕上がっていると思います。

「ありがとうございます。このクルマに関しては“やりきった!”という感覚が強いです。自分でも欲しくなって、 eKクロスを買ったほどです(笑)」

今回、デザイナーインタビュー以外にも、開発者の声もお聞きしている。そこで感じられたのは、“作り手も eKシリーズに自信があり、大いに気に入っている”ということだった。そういうクルマは、得てして仕上がりがとても良いものだ。日産と三菱の長所が詰まった、新しい三菱 eKワゴン/ eKクロス。もし試乗に行った時、さらに買ってお手元に来た時は、そのコダワリを感じて欲しいと思う。

[筆者:遠藤 イヅル/撮影:小林 岳夫・和田 清志]

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

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