三菱 エクリプスクロス 試乗レポート|”ランエボ”の魂をSUVテイストにギュッと濃縮

懐かしい“エクリプス”の名が流行りのSUVテイストで復活

エクリプスといえば三菱が北米で発売していたスペシャリティカーであり、その誕生は今から30年(!)近く前の1989年に遡る。「スタリオン」の後継車として登場し、ギャランのコンポーネントをベースとしたこのクーペは名機「4G63」ユニットの強力なターボパワーを得て人気を博し、最終的には2006年まで三世代にわたって作り続けられた。その頃日本では「GTO」や“ランエボ”こと「ランサー エボリューション」が三菱の看板を背負っていたためメジャーな存在とはなり得なかったものの、クルマ好きの間ではその知名度も割と高く、“左ハンドルの逆輸入車”としてカルトな人気を誇った。

そんな歴史ある名前を復活し、エクリプスクロスは2017年のジュネーブモーターショーでデビュー。その名の通り流行のSUVスタイルを身にまとって生まれ変わった。そして東京モーターショー2017での日本お披露目を経て、とうとう我々ジャーナリストの手に試乗の機会が与えられたわけだが……。

果たしてその第一印象は、「やったね三菱!」とサムアップしたくなるほどの出来映えだった。

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4405mmの全長に対して全幅は1805mm。そのボディは決してコンパクトではないのだが、だからこそ日本ではプレミアムCセグメントとしてファミリーユースにも対応できるタップリ感。全高は1685mmと立体駐車場には向かないサイズながら前席へのアクセスはスムーズで着座しやすく、これなら女性ユーザーにも歓迎されると思えた。

デザインコンシャスと思われたボディはAピラーがそれほど寝かされておらず、高いアイポイントと相まって見切りは良好。バックミラーごしの後方視界も広々としており、運転してすぐに馴染むことができる。

1.5ターボエンジンの走りが気持ちいい!(ただし燃費はそれなり)

まず感心したのは1.5リッターのガソリン直噴ターボだ。この大柄ボディを走らせるなら、後に出るだろうPHEVか輸出仕様の2.2リッターディーゼルターボが本命なんでしょ? と思っていいけれど、どうしてどうして。パワーの絶対値こそ150psと非力だが、MIVECユニットそのものの吹け上がり感がまず気持ち良いのである。

これには2000rpmから立ち上がる240Nmの最大トルクと、このトルクバンドを適宜有効に保持してくれるCVT制御の恩恵も大きい。わざわざパドルシフトをステアリングに備え、8速の有段フィールを与えた割に特にダウン側のメリハリ感がないのは玉に瑕だが、CVTでよく言われるラバーバンドフィールがなく、加速時のレスポンスも上々。今回は高速道路での試乗は叶わなかったが、あとは極めて凡庸な14.0km/L(JC08モード)の燃費をどう取るかだろう。

その骨格は「RVR」時代から使われるプラットフォームが基本となっている。しかし大柄で重たい「アウトランダー」でも実証された通り、このベースはまだまだ十分現役で、「重厚な三菱」のイメージ通り。かつエクリプスクロス用としてはドア回りの接着溶接や、リアゲート及びフロアの補強が施されている。

そんなボディにタップリとストローク長が取られたサスペンションが組み合わさると、乗り心地が非常によい。そのダンピング性能にはクロカン的なユサユサとした緩さはなく、あくまでオンロード主体の、スッキリとした味付けとなっている。

ランエボの血筋を実感させるハンドリング

三菱のまじめさを感じたのはそのハンドリングだった。操舵に対するフロントの反応はやや緩慢で、ルックスの割にはおっとりしている。もう少し初期減衰力を早くから立ち上げて反応を高めれば、そのスポーティなルックスとかなりマッチすると思うのだが、好意的にこれを解釈するとまずはベーシックモデルとしての穏やかさを優先したのだろう。また前述したリアセクションの剛性アップや、常に後輪へ駆動が掛かっている安定性が、そのアンダーステア感を少し増やしているのかもしれない。

残念なのは電動パワステが軽すぎて、この穏やかさにリズムが合わせにくいこと。ただこれも、切り返し時などにおける扱いやすさを優先したのだろう。

ただそんな状況でも、ゆっくりとハンドルを切り込んで行けば、エクリプスクロスは着実にコーナーを曲って行く。そしてこれこそが、ランサー エボリューションで培った「S-AWC」(スーパー・オールホイール・コントロールシステム)の威力だとボクは感じた。

今回はオンロード試乗だったため3種類のモードは「オート」で固定(他にスノー/グラベルがある)。文字通り機械任せに走ったのだが、ハンドル舵角が増えて行く状況で4輪のトルク配分が変化し、クルマを華麗に曲げて行く。特に印象的なのは後輪で、内側タイヤの駆動力を絶妙に減らしているのだろう、流行の4WSや後輪ステアよりも極めて自然に回り込む。前述した通りフロントサスペンションの反応はダルなのに、である。

試しに回り込んだタイトコーナーで素早く大舵角を当てて見ると、リアタイヤはそのスタビリティを保ちながら、さらに強くググググ…っとエクリプスクロスのボディを小回りさせた。そしてこれを応用すれば、あらかじめコーナーを予測して、ニュートラルステアが作り出せることが予想できた。

これってまさに、自らヨーモーメント(旋回モーメント)を作り出す、AYC(アクティブ・ヨー・コントロールシステム)。……まんまランサーエボリューションの走りじゃないか!

この意外性にはワクワクした。つまりエクリプスクロスは、現状でも「スポーツモード」を設定して、ダンパー減衰力やステアリングアシスト量をスポーティにしてやるだけで、かなり先進的な4WD SUVとなる。今後はそういうモデルも、ぜひ出して頂きたい! と強く思った次第である。

インテリアも真面目に造り込まれている

三菱 エクリプスクロスはその走りだけでなく、インテリアもいい。

黒基調の内装は一見地味で樹脂パネルにコストの影もチラつくが、骨太なシルバートリムが効果的に立体感を出しているし、水平基調のインパネは整然としたまとまり感があって非常にスッキリとしている。

なおかつタッチパネル式のコントローラーはカチカチとクリック感があって、たとえば、狙いが定まらないトヨタ(レクサス)のポインター式より遙かに使いやすい。国産車の場合どうしてもドライバーは左手でディスプレイを操作しなくてはならないから、こうした操作性はとても大事だ。この先進性があるだけにディスプレイ画面は後付け感の高い独立式ではなく、思い切ってアウトランダーのようにビルトインタイプとした方が、もっと近未来感が出せると思う。

またリアシートはスライド及びリクライン機能を備えており、こうした部分も購買意欲をそそる。

三菱らしさがギュッと詰まった気持ち良いコンパクトSUV

アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)の追従性がコーナーの状況によっては甘くなってしまう部分には、「こういう所にこそ三菱の本領を発揮すべき!」と感じたが、それ以外はトレンドに乗りながらも随所に三菱らしい技術力が随所にちりばめられており、それが声高に過剰アピールされていないのにも好感が持てる。

木訥としながらも基本骨格がしっかりとしており、今後移行するであろう電動化に対しても親和性が高そうなエクリプスクロス。

総じてとても気持ち良いコンパクトSUVに仕上がっていたのではないかと思う。

[Text:山田 弘樹/Photo:小林 岳夫]

三菱 新型エクリプスクロスの主要スペック

三菱 新型エクリプスクロスの主要スペック
車種・グレード名エクリプスクロス G Plus Package[2WD]エクリプスクロス G Plus Package[4WD]

駆動方式

2WD

4WD

トランスミッション

CVT

CVT

価格(消費税込)

2,879,280円

3,095,280円

JC08モード燃費

15.0km/L

14.0km/L

全長

4,405mm

4,405mm

全幅(車幅)

1,805mm

1,805mm

全高(車高)

1,685mm

1,685mm

ホイールベース

2,670mm

2,670mm

最低地上高

175mm

175mm

乗車定員

5人

5人

車両重量(車重)

1480kg

1550kg

エンジン

4B40型 ガソリン直噴

MIVECインタークーラー付きターボ

4B40型 ガソリン直噴

MIVECインタークーラー付きターボ

排気量

1,498cc

1,498cc

エンジン最高出力

110kW(150PS)/5500rpm

110kW(150PS)/5500rpm

エンジン最大トルク

240N・m(24.5kgf・m)/2000~3500rpm

240N・m(24.5kgf・m)/2000~3500rpm

燃料

無鉛レギュラーガソリン

無鉛レギュラーガソリン

タンク容量

63L

60L

タイヤサイズ

225/55R18

225/55R18

三菱/エクリプスクロス
三菱 エクリプスクロスカタログを見る
新車価格:
277.3万円465.1万円
中古価格:
144.8万円429万円

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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

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