MINI Cooper S E クロスオーバー試乗レポート｜MINIが持つ走りの愉しさを体現したSAV(3/3)

圧倒的な快適性とMINIらしいビートを感じて走る気持ち良さが共存

そして、肝心のドライブフィール。

エンジンとモーターを組み合わせることで、MINIとしての走りはどう表現されているのか。

MINI Cooper S E クロスオーバーに搭載されているプラグイン・ハイブリッド・システムは、モーターが後輪を駆動し、エンジンの動力は前輪を駆動して走る仕組み。ちなみに、このパワーユニットはすでにBMW 225 xeと呼ばれるプラグイン・ハイブリッド・モデルに搭載された実績があるもので、そこで鍛えたアーキテクチャーがMINIクロスオーバーに応用されています。

プラグイン・ハイブリッド車はコンセントから充電してバッテリーに電力を蓄えて走るクルマですが、クーパーS Eはモーターだけで走る「EV走行」が可能な車速域は発進～125km/h。バッテリーが満充電でEV走行ができる航続距離は最大で42.4km。200Vの普通充電で満充電に掛かる時間は約3時間です。

バッテリーが底をついても心配ご無用。136馬力を発揮する3気筒 1.5Lのツインパワー・ターボ・ガソリン・エンジンを搭載しているので、一般的なハイブリッド車と同じようにエンジンとモーターを連携させて走ることができます。

発進加速はモーターが後輪を駆動してスタート。エンジンのみで走るMINIクロスオーバーは前輪駆動ですが、後ろのタイヤで前に押し出される感覚は直進安定性が高く、モーターならではの滑らかに力を生み出す特性もあって、とてもスムーズ。

バッテリー残量が残されている状況の時に「MAX eDriveモード」を選んでアクセルを踏み込むと、EVさながらの静かで、滑らかで、力強い加速を披露します。

一方で、アクセルペダルを踏んだ瞬間から力を発揮するモーターと、回転が高まってから力を発揮するエンジンの強みを効率的に生かせるのが「Auto eDriveモード」。発進時やアクセルペダルの踏み込み量が少ないときはモーターで走って、高級サルーン顔負けの静粛性とエンジンやトランスミッションから伝わる振動から解放してくれるのに、いざ、追い越し加速で踏み込むと、違和感なくエンジンが始動して前輪を駆動。エンジン回転を気持ち良く高めていきます。モーター走行がもたらす圧倒的な快適性とMINIらしいビートを感じて走る気持ち良さが共存する感覚がとても新鮮！

車両の重量はバッテリーとモーターを搭載しているぶん、ディーゼルエンジンを搭載するクーパーSD（1630kg）と比較すると、プラグイン・ハイブリッドのクーパーS E（1770kg）の方が＋140kgも重め。でも、実際に走ると、モーター＋エンジンは状況に応じてパワフルな力を発揮するので、のっそり走る“まどろっこしさ”はナシ。その点では、このプラグイン・ハイブリッドのユニットは、前後重量配分にとことんこだわるBMW譲りのものであるし、重量物を低い位置に配置することでカーブなどの走行でフラツキなど感じさせず、思い描いたラインを辿って走れる操縦性の良さを与えてくれるのです。

車重の重さは、ともあれば乗り心地の悪さに結びつく場合がありますが、このクルマの場合、タイヤがしっとりと路面を捉えて走る“乗り味の良さ”に結びついているのが素晴らしいところ。そのあたりは基本骨格がしっかりしていて、足回りが仕事をしやすい環境が生まれているのだと実感させられる部分です。

MINIはこのモデルを「SUV」ではなく、「SAV（スポーツ・アクティビティ・ビークル）」と呼んでいますが、実際にハンドルを握って、MINIがもつ走りの愉しさを満喫させられると、思わず「ナルホド！」と納得してしまうハズです。

[レポート：藤島 知子／Photo：小林 岳夫]

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