メルセデス・ベンツ 新型 Eクラスの注目モデル、高性能版”AMG E43 4MATIC”と、人気No.1のディーゼル”E220d”に試乗
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
続々増える新型Eクラスのラインナップを比較試乗
メルセデス・ベンツの中核をなすEクラスがフルモデルチェンジを実施したのは2016年夏。新型Eクラス(W213)はまず2リッターガソリン直噴ターボ「E200」から導入され、その後さらにエンジンラインナップ拡充やステーションワゴン追加などを徐々にすすめていった。今回はEクラスの中でも常に人気の高いディーゼルモデル”E220d AVANTGARDE Sports(アバンギャルド スポーツ)”と、高性能なAMGモデルの新ラインナップ”Mercedes-AMG E43 4MATIC”に注目。新型Eクラスのディーゼルとガソリンモデルはどちらが買いなのか。またいつの時代でも、Eクラスには必ずハイパフォーマンスなAMGモデルがラインナップされる、その意義とは。自動車評論家の渡辺陽一郎氏がその理由をひとつひとつ紐解いていく。
コンパクトからSUVまで多彩に拡がるメルセデス・ベンツ車の中でEクラスが果たすもの
どこの自動車メーカーも規模の拡大に伴って車種の数を増やすが、近年で特に顕著なのはメルセデス・ベンツだろう。以前は今以上に高級車メーカーの性格が強く、1970年代の中盤までは商用車を除くと基本的にセダンとクーペだけを造っていた。それが2000年前後からバリエーションが急増して、今ではコンパクトなAクラスやCLA、SUVのGLAやGLSなどをそろえる。
このような状態になるとブランドイメージが曖昧になりやすい。それでもメルセデス・ベンツの販売店からは「小さなクルマに乗り替えるユーザーが増えた今では、高級車のイメージが不利に働く。800万円以上のクルマしか扱っていないと誤解しているお客様も多い。価格を300~400万円に抑えたAクラスやGLAが重要になった」という意見が聞かれる。
そうなるとブランド性を維持する上では、Eクラスも大切だ。伝統的なメルセデス・ベンツの高級感を受け継ぎ、1980年代の前半に190E(W201型)が登場するまでは、LサイズのSクラスと対比してW123型などは「コンパクトメルセデス」と呼ばれた。今はEクラスも大型化したが、ブランドを代表する中心的な位置付けに変わりはない。
世界最先端の安全運転支援システムが備わる新型Eクラス
そして現行の新型Eクラス(W213)は設計が新しい。日本仕様は2016年7月にセダンがフルモデルチェンジを受け、11月にはワゴンも一新された。注目される装備として、運転支援技術のドライブパイロットを採用している。一定の車間距離を維持しながら先行車に追従走行する機能では、ステアリングの制御も綿密に行う。
ドライブパイロットもほかの運転支援技術と同様、ドライバーがハンドルを保持しない時は警報を発するが、それでも反応がない場合、意識を失ったと判断して緩やかに速度を下げる。最終的にはハザードランプを点滅させながら停車して、電動パーキングブレーキを作動させる仕組みだ。ハンドルが保持されない時に運転操作の不作為と判断して制御を終えるほかのシステムとは異なり、ドライバーに対する信頼と、車両側で責任を持つ考え方を備えている。
今回は注目度の高いメルセデス・ベンツの新型Eクラスについて、まだご紹介していなかった新型ディーゼルエンジン搭載の”E220d アバンギャルドスポーツ”セダンとステーションワゴンと、そしてスポーツグレード”メルセデス AMG E43 4MATIC”セダンの3グレードについて、まとめて試乗した。
戦略的な価格設定のクリーンディーゼルモデル”E220d AVANTGARDE Sports”
まずE220d アバンギャルド スポーツは、メルセデス・ベンツ 新型Eクラスの中心的なグレードだ。
搭載されるエンジンは直列4気筒2リッターのクリーンディーゼルターボで、最高出力は194馬力(3800回転)、最大トルクは40.8kg-m(1600~2800回転)を発生する。後者の数値は、ターボを装着しない自然吸気のガソリンエンジンに当てはめると4リッター並みだ。
このエンジンは設計が新しく、従来型の2.2リッターディーゼルに比べると排気量が小さい。排出ガスの浄化機能も高効率化され、コンパクトに仕上げた。
試乗するとエンジンの回転感覚が滑らかだ。BMWなどにも当てはまる話だが、最近の欧州車のクリーンディーゼルターボは、以前に比べるとノイズが大幅に減って吹き上がりもスムーズになった。欧州ではディーゼルを乗用車にも長く使い続けてきた経緯があり、以前は「ディーゼルとはこのようなエンジン」という割り切りを感じたが、最近は快適性がガソリンエンジンに近づいた。
ノイズは遮音も含めて抑え込んだ。通常の走行では、タイヤが路上を転がる時に発するノイズや風切り音も生じるので、ほとんどディーゼルを意識させない。
>>ガソリン? ディーゼル!? メルセデス・ベンツ 新型Eクラス(W213型)の詳細を92枚の画像ギャラリーでも徹底比較
新型Eクラスはディーゼルとガソリン、どっちが買い!?
試しにATをスポーツモードに入れてフル加速すると、4600回転前後でシフトアップした。最高出力は3800回転で発生するから、4000回転以上を使ってもあまり意味はないが、活発に走ってもディーゼル特有の回転上昇が伸び悩む印象にならない。
今回は試乗しなかったが、E200が搭載する直列4気筒2リッターのガソリンターボはノイズが少し粗い。軽快に吹き上がってガソリンの良さを味わえるが、4気筒を意識させ、Eクラスのエンジンとしては物足りない。ディーゼルは実用回転域の駆動力が高く、同じ速度で走ってもアクセルペダルの踏み込み量が少ないから、ガソリンよりも快適に感じる場面が多い。ディーゼルの優位性はガソリンとの比較でも際立つ。
ちなみにガソリンのE200とディーゼルのE220dで価格を比べると、後者が23万円高いだけだ。ディーゼルは価格を戦略的に安く抑えた。
しかもE200はエコカー減税が減税、E220dは免税だから、セダンのアバンギャルドスポーツで比べると、減税額の違いだけで約17万円に達する。つまり実質差額は約6万円だ。JC08モード燃費はガソリンが14.7km/L(使用燃料はプレミアム)、ディーゼルは21km/Lで軽油価格も安いため、損得勘定、動力性能の両方でディーゼルが圧倒的に買い得になる。
今の日本の制度では、クリーンディーゼルも電気自動車やプラグインハイブリッド車と同じ「クリーンエネルギー自動車」に含まれ、燃費数値を問わずエコカー減税が免税だ。クリーンディーゼルでも人体に有害なナノ粒子(超微小粒子)の排出が指摘され、突出してクリーンなパワーユニットとはいい難い。クリーンディーゼルを一律免税にするのは大雑把に思えるが、ディーゼル比率の高い欧州車の販売促進には役立っている。この優位性をさらに発揮すべく、メルセデス・ベンツはディーゼルの価格まで抑えた。
Eクラスの高い直進安定性はメルセデス・ベンツならではの得意分野だ
直進安定性はメルセデス・ベンツの得意分野で、ボディの大柄なEクラスでは高い水準にある。今では時速100kmを上限に走る分には不安を感じる車種はほとんどないが、違いが生じるのは、例えば高速道路のカーブを曲がっている最中に段差を乗り越えたような時だ。雨天では瞬間的に進路を乱されることもあるが、Eクラスはその度合いが小さい。実際よりも低い速度で走っているように感じる。長距離を移動する時も、安全で疲れにくく、重心の低いセダンやワゴンの実用的な価値を一層高めるクルマ造りを行っている。
シートの座り心地も長距離移動向けで、少し硬めながら肩まで含めて乗員の体全体をしっかり支える。Eクラスは欧州では法人ユーザーも多いために後席も快適だ。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ半。セダンでは余裕を持たせ、着座位置も適度だから大人4名がゆったりと乗車できる。
注意したいのはボディサイズだ。E220dアバンギャルドスポーツの場合、全長はセダンが4950mm、ワゴンは4960mm、全幅は1850mmに達する。最小回転半径が5.4mに収まるのは後輪駆動の強みだが、サイドウィンドウの下端が高いために側方と後方は見にくい。
またE220dアバンギャルドスポーツは19インチタイヤを装着して、市街地では硬さが少し気になる。細かなデコボコを伝えにくく粗さはないが、段差では振動が相応に伝わった。想定する速度域が高く、日本の用途では17インチタイヤ装着車のバランスが良いだろう。
1980年代から1990年代にEクラスの人気を高めたW124型(当初はミディアムクラスと呼ばれた)などに比べると、安全かつ大らかに走る印象も薄れた。もちろん30年前のクルマと現行型を比べれば、機能は後者が格段に勝るが、「安全と快適」を徹底追求した往年のEクラスに比べると現行型はスポーティ感覚を強めた。いい換えればBMWなどの持ち味も兼ね備え、メルセデス・ベンツの個性が弱まったと感じる。
この変化は、コンパクトカーからSUVまで幅広くそろえる商品展開と無縁ではないだろう。今のEクラスも優れた商品だが、車種数を限った時代の「入魂の1車」というインパクトは乏しい。Eクラスだけに構ってはいられない事情もあると思う。
好バランスのAMGモデル ”Mercedes-AMG E43 4MATIC”
幅広い商品展開は、スポーティなAMGにも当てはまる。今では低重心のセダンやワゴンに加えて、高重心のSUVにもAMGを用意する。AMG G65などは、発売から40年近くを経過したオフロードSUVのGクラスに、V型12気筒6リッターのツインターボを搭載。最高出力は630馬力、最大トルクは102kg-mに達する。
こういった仕様に比べると、EクラスのメルセデスAMG E43 4マチックはバランスが良い。エンジンはV型6気筒3リッターのツインターボで、最高出力は401馬力(6100回転)、最大トルクは53kg-m(2500~5000回転)としている。性能的にはV型8気筒のターボを装着しない自然吸気エンジンと同等だ。
しかも4WDを搭載して、駆動力の伝達効率も高めた。JC08モード燃費は11km/Lで、トヨタ クラウンアスリート、日産 フーガなどの10km/Lを下まわるV型6気筒エンジンよりも優れている。
加速感を試すと、実用回転域で高い駆動力を発生させるV型8気筒に近い。エンジン回転の上昇に合わせて駆動力が力強く立ち上がり、3リッターのターボとは思わせない。AMGの伝統ともいえるV8の持ち味を上手に表現した。
タイヤサイズは20インチだから乗り心地はさらに硬いが、設計の新しいEクラスがベースとあって粗さはなく、高性能モデルでは上質な部類に入る。4WDの採用も、走行安定性だけでなく走りの品質感まで高めた。雨天時などは後輪駆動に比べるとトラクションコントロールの作動頻度が下がり、スムーズな走りを味わえる。
AMG E43 4マチックは価格も1149万円と高いから、販売台数はさほど多くない。売れ筋は先に述べたE220dあたりだが、これらを購入する時もメルセデスAMG E43 4マチックを試乗すると良いだろう。すべてのEクラスが高性能に対応できるシャシーを備えていることを実感できるからだ。スポーツモデルにはこのような価値もあると思う。
そしてEクラスを購入されたなら、周囲のクルマを気遣いながら、快適な長距離ドライブを満喫していただきたい。快適な走りは疲労を抑え、安全な運転に結び付く。万一の時には、優れた走行安定性が危険の回避を的確にサポートしてくれるだろう。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正]
Mercedes-Benz E220d STATIONWAGON AVANTGARDE Sports 主要諸元
全長x全幅x全高:4960x1850x1465mm/ホイールベース:2940mm/車両重量:1890kg/乗車定員:5名/駆動方式:後輪駆動(FR)/エンジン種類:直列4気筒 ターボチャージャー付 DOHC 直噴ディーゼルエンジン/総排気量:1949cc/最高出力:194ps(143kW)/3800rpm/最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1600-2800rpm/トランスミッション:「9G-TRONIC」9速オートマチックトランスミッション/燃料消費率:20.0km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:(前)245/40R19(後)275/35R19/メーカー希望小売価格:8,320,000円[消費税込]
※試乗・撮影車はオプション装着車
Mercedes-AMG E43 4MATIC 主要諸元
全長x全幅x全高:4950x1850x1450mm/ホイールベース:2940mm/車両重量:1930kg/乗車定員:5名/駆動方式:四輪駆動(4WD)/エンジン種類:V型6気筒 ツインターボチャージャー付 DOHC 直噴ガソリンエンジン/総排気量:2996cc/最高出力:401ps(295kW)/2500-5000rpm/最大トルク:53.0kgm(520Nm)/2500-5000rpm/トランスミッション:「9G-TRONIC」9速オートマチックトランスミッション/燃料消費率:11.0km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:(前)245/35R20(後)275/30R20/メーカー希望小売価格:11,490,000円[消費税込]
※試乗・撮影車はオプション装着車
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