話題沸騰の高級クーペ「レクサス LC500/LC500h」を日本の公道で試す!
- 筆者: 五味 康隆
- カメラマン:LEXUS INTERNATIONAL
早くもバックオーダーを抱える美しいクーペ”LC”を国内初試乗
レクサスの最新ラグジュアリークーペ「LC」がいよいよ日本の公道へ舞い降りた。美しさと力強さ、そしてオリジナリティに溢れるエレガントなデザインで早くも話題沸騰中だ。既にバックオーダーを抱えているほど人気を集める国産高級ブランドに早速試乗したのはモータージャーナリストの五味康隆氏。内外のプレミアムブランドを知り尽くした五味氏は、そのスタイリングや内装、そして異なる2つのパワートレイン、V8 5リッターとV6ハイブリッドをどう評価したのか。美しい画像の数々と共にお届けする。
”オーラ”すら漂う圧倒的な存在感
一般道を走る姿は、発表会や様々なモーターショーなどで見てきた印象とは違っていた。レクサス LC。周りに比較対象になるクルマが走っている状態で見るその姿は、より一層に…文句無しに・・・カッコ良い!
ボディスケールが大きく、加えて低さと幅広感が強調され、車群に紛れ込まない”オーラ”とも言える存在感を備える。フロントマスクからして、あれだけ主張が強く個性的だと「オレは嫌いだ!」という人もいるだろうが、同時に感性に鋭くビタッとはまる方も多いはず。
個人的にはリアからの見た目がとても好き。内部にミラー構造を取り入れて近未来的な見え方をするリアコンビネーションランプに始まり、サイドからの抑揚のあるフォルムラインが繋がり成されたあのボリューム感と高級感、そしてドシッとしたリアスタイルがラグジュアリークーペと名乗るに相応しい。
ちなみにこれだけデザイン性を作りこみながら、ゴルフバックが一つ入るトランクスペースを備えるところがレクサスらしい。
主張の強いデザインなだけに、色選びがレクサス LCでは特に重要だろう。
用意されたどの色も存在感は抜群ではあるが、スポーティな雰囲気が強まるものから、エレガントさが強調されるものまで多彩。個人的には受注の約半数を占めるホワイト(ホワイトノーヴァガラスフレーク)も良いが、エッジラインが明確に浮き上がり引き締まった印象を漂わせながらも、光の当たり具合によりボリューム感も備える”ソニックチタニウム”がエレガント&スポーツ系でオススメ。
ラグジュアリーな内装の仕上がりはライバル不在
その外装に負けず劣らず、内装の作りもまた質感が高い。ドアハンドル周りの内張り加工やデザインの仕上がりは見事。そこを見たら、どのクルマと比べようがラグジュアリー性で負けることは無いとさえ思える。
シートポジションなどを含めて、その作りの基調にしているのは”スポーティ”なのだろう。ダラっと座ることもできるし、座面もシートバックもピタッと体に密着させて潜り込むように低く座るポジションも可能。ちなみに助手席についても、視覚のみならず実際に包まれ感が高く、安心してシートに身を委ねられるのも良い。
褒めてばかりも悔しいので、気になる細かい要素を挙げるとすれば、ドライブモードセレクターがメーターダッシュボード側にあり、カッコ良いが手を大きく伸ばさないと操作できないこと。低く座れるようにしつつ、その低さに対応しない小さいサイズのサンバイザー。慣れるのか?と疑問を抱く、センターモニターを操るコントローラーの操作性などなど・・・。
しかし総合的に踏まえれば、LCの内装の落ち着きや高級感は格別で、休みの日に“あの”環境に身を置きたいからクルマで出かけたくなる・・・そんな気持ちすら芽生えるレベルにある。
始まりは2012年のコンセプトカー”LF-LC”から
レクサス LCの開発のスタートは、2012年のデトロイトショーにさかのぼる。デザインコンセプトモデルとして出展された”LF-LC”に予想を上回る反響が集まり、そのまま市販しようと開発がスタートしたそうだ。だからこそショーモデルがそのまま市販されたかのようなスタイルを確立できたそうだが、裏では相当な苦労を乗り越えたという。
量産と市販を前提にしていないLF-LCの再現は、ヘッドライトひとつとっても難しい。小型化はもちろん内部シャシーへの干渉など課題は多数。結果としてあのフォルムの実現には、各パーツだけでなく足回りからシャシまで全てを専用で立ち上げる必要に迫られた。結果としてその一新されたシャシーは”GA-L”(グローバル・アーキテクチャー・ラグジュアリー)と名付けられ、次期型LSを始め今後のレクサスFR系を担うシャシーベースとなる大役まで任された。まさにLCは次世代レクサスへのスイッチングモデルなのだ。
ちなみに偶然なのか意図的なのか、レクサスが単なるラグジュアリーブランドから、クルマだけではない体験や商品を提供することで「豊かな人生を手助けする」ラグジュアリーライフスタイルブランドへの転換を打ち出した時期と、LCの活動開始時期は相まっている。
と話は逸れたが、大きな変革を果たしたその乗り味もまた、今までのレクサスとは大きく異なっていた。
まずは安定感が抜群。
4つのタイヤが地面を捕まえるどっしり感などを含めて、走り出した瞬間の安心感がとてもある。わだち路では21インチサイズの極太タイヤゆえか、若干落ち着かない一面を見せるが、慢性的に得られる安心感は高い。また運転すると見た目以上にクルマが小さく感じるのも特徴。もちろん狭い道など物理的に走るのに気を使う場所では大きく感じるものの、クルマの動きはドライバーの意思に寄り添うかのようで自由自在感があり、ひと回り小さいクルマのようで普段走りはもちろんスポーティにも走りやすい。それでいて21インチのランフラットタイヤという乗り心地において足枷になりそうなタイヤを履いているとは思えないしなやかさがあるのが特徴。そこにはフワフワ系の乗り味はなく、どこにも緩みなくシャキッとしていながら突き上げを抑えた乗り味が見事。
それら完成度高い乗り味実現の背景には、これから詳しく述べるが、重いものを中央の底辺に極力集め前後重量配分を整えたフロントミッドシップタイプの新シャシーGA-Lが関係する。
吠える! V8 5リッター 大排気量自然吸気エンジン ”LC500”の気持ち良い走り
「用意したハイブリッドモデルとガソリンモデル、どちらが上という概念なく仕上げました。」
開発責任者 佐藤 恒治氏の発言の通り、この2つは実際に購入を考えたら、ハンコをつく瞬間まで悩みそうな独自の魅力をそれぞれが持っていた。
前章で述べた乗り味を基準にしながらも、そのテイストすら若干異なっていたので伝えていこう。
まず、今までのスポーツモデルの価値観の延長線上にあり、直感的にその魅力を理解しやすいのがガソリンモデル”LC500”。直噴ターボが増えている昨今、V8 5リッターという大排気量の自然吸気エンジンは珍しい存在だ。ターボのように、アクセルを踏んだ際のエンジン回転数を問わず圧倒的な加速が得られるトルク感こそないが、エンジン回転が高まるとともに吸排気音の高まりと、シートに体が押さえつけられる力漲る加速感があり、とても気持ち良い。
特に刺激的な音色は、運転席へ届きやすい吸気音に重点を置いたチューニングが上手く、ドライバーの興奮を呼び起こす。それは”天使の咆哮”と表現された、あのLFAの気持ち良さを思い起こさせる味付け。
もちろんこの吸排気音も絶えず吠えているわけではない。
新開発の10速ATとの相性も抜群で、時速100キロの時の回転数は1320rpm。低く抑えられ回転が振動及び音を抑え、上質な移動空間も提供する。また停止状態からの走り出しも、アクセルを穏やかに踏む分には静かで上質で滑らか。10速ATは、レクサスが他モデルで採用する8速ATから比べて、8速ATでは回転数変化が大きかった2速と3速の間に1速設け、巡航時に使うトップギア(10段目)を加えたことで、合計10速にした。それによりスムーズで回転数の変化も少なく走ることが出来るのは当然だ。それらを駆使しても実燃費は8km/L前後に留まるだろうが、その分が気持ち良さに割り振られていると思えば良い。
また、屋根がカーボンになりリア操舵機構がつく”S package”(S パッケージ)も、購入に際しては悩みの種に成るだろう。この選択においては、 “手軽に速く走りたい方”はS パッケージ。“こう操作したらこうクルマは動く”と鮮明にイメージして運転される方はS パッケージなしがお勧め。
と言うのも、リアで操舵される感覚は気がつきにくいというほど自然には仕上がっているが、路面の凸凹と旋回及びハンドル操作の“何かしら”の兼ね合いで、本来こう動くと予想したものと若干異なる感触が生じるときが“稀に”あるからだ。もちろん通常はフロントからしか発生できない曲がる力をリアから発生するし、切り返しなどに大きな効果を生むカーボンルーフは魅力的だが、自然さを求めるなら、また自ら操るという意識があるのなら、S パッケージなしが良いだろう。
新生LEXUSの世界観を体現する”LC500h”マルチステージハイブリッドシステムのおもてなし
新生レクサスへの皮切りモデルとなるLCの世界観を踏まえたとき、ハイブリッドモデル”LC500h”こそイメージ通りとなるかもしれない。そこには今までにない乗り味、より快適に上質に走る“静”とより刺激的に走る“動”の世界が見事に融合した、その時々の気分にも寄り添う世界観があった。それは乗り味でオーナーをおもてなししようとするかのようなもの。
より具体的には、そもそもガソリンモデルと比べたときに姿勢変化が少ない。前後重量配分でたった1%の違いだが、リアにバッテリーを積むハイブリッドモデルの方がバランスに優れ、クルマの揺れ方が穏やか。微小ではあるが、ガソリンモデルの場合、凸凹などを通過した際にフロントがリアに対して上下に動くような落ち着きの無さがある。またハイブリッドは重量が約60kg重い効果だろう、重さでクルマが抑えつけられるような重厚感がある。
そのうえで、LC500hで新たに搭載されたマルチステージハイブリッドシステムが威力を発揮。静かに走り出すのはハイブリッドとして当然だが、アクセルを踏み出すとステップ式にエンジン音と調和しながら速度が上がる味付けがある。その変速感、ATをイメージすると若干ダルく感じるときがあるかもしれない。時には速度とエンジン回転音が合わないCVT風のニュアンスを得る時があるかもしれない。しかし、ハイブリッドなのにまるでAT車のような味付けが基調となり、ハイブリッド=走りに向かないとか、我慢を強いるエコカー、といった様子は無くなる。
簡単に機構をお伝えしておくと、レクサスが鍛えてきたハイブリッドシステムは、エンジンに加えて2つのモーターを積み、その2つのモーターの制御の兼ね合いで変速効果まで出すトランスミッション要らずの機構。なので、カタログ上は電子制御式変速機となる。
マルチステージは、その出力軸に機械的4段変速機、言うなれば4速ATを付けたもの。言うなれば変速効果を電子制御と4ATという2カ所で生み出せて、その変速内容は自由自在。細かい話だが、表示上の1・2・3速を機械式AT1速x電子制御ステップ変速で生み出し、4・5・6速を機械式AT2速x電子制御ステップ変速、7・8・9速を機械式3速x電子制御ステップ変速、最後に10速は機械式AT4速x電子制御無段階で、なるべく巡航時の回転数を抑えるという内容。
ハイブリッドとV8、実に悩ましい二者択一
スポーツモードやスポーツプラスモードでは、その走りと味付けはかなり積極的。まず4000回転くらいからスピーカーからの音も相まって刺激的なエンジン音が耳に届く。この高揚感に加えて、モーターの力も存分に使い、カーブからの出足だけならガソリン以上の領域も作り出すのが興味深い。
連続するカーブなどでは車両重量が重いことを意識するときもあるし、電子制御式変速だからかガソリンモデルとは違ってアクセルオフ時にタイヤに伝わるトラクションが抜けてフワッとするクルマの動きを生む時もある。さらにはブレーキのタッチも、ハイブリッドにありがちな素直さが足らない時がある。
もちろん、いま言っているのはかなり高度な領域におけるスポーティドライブでの話で、逆視点で申せば、スポーツカーを乗り継いできて走りへの強い意識や要望を持つ方がスポーティに走っても、その程度の不満で収まる乗り味にハイブリッドモデルが上り詰めてきたということ。
このように速度を問わず、穏やかで静かな移動空間と、刺激ある移動空間を得られるのがハイブリッドだ。
今までの価値観での刺激ある走りをガソリンモデルLC500で手にするか、これからの時代を先取ったような静と動の融合の世界をハイブリッドLC500hで手にするか、改めて振り返っても悩むだろう仕上がり。何はともあれ、欧州を始め世界中の高級車と比べて一切の引けを取らない完成度になっており、悩むほどの仕上がりに両モデルが到達していたことに拍手を送りたくなった。
すでに1800台のバックオーダーを抱えていると発表され、内ハイブリッドが800台で6ヶ月待ち、ガソリンが1000台で7ヶ月待ちとのこと。欲しい人は急いだ方が良さそうだ。
[Text:五味康隆/Photo:LEXUS INTERNATIONAL]
LEXUS LC500 主要諸元
全長x全幅x全高:4770x1920x1345mm/ホイールベース:2870mm/車両重量:1940kg/乗車定員:4名/エンジン種類:「2UR-GSE」V型6気筒 DOHC ガソリン直噴エンジン/総排気量:4968cc/最高出力:477ps(351kW)/7100rpm/最大トルク:55.1kgf-m(540Nm)/4800rpm/トランスミッション:Direct-Shift 10AT 10速オートマチックトランスミッション/燃料消費率:7.8km/L[JC08モード燃費]/サスペンション:(前)マルチリンク式(後)マルチリンク式/タイヤサイズ(標準仕様):(前)245/45RF20 99Y(後)275/40RF20 102Y/メーカー希望小売価格:13,000,000円(消費税込)
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