イタリアの産業用車両メーカー「イベコ(IVECO)」、天然ガスで走る新交通BRTシステムと大型トラックで日本進出か(3/3)
- 筆者: 遠藤 イヅル
- カメラマン:IVECO・オートックワン編集部
天然ガス車はガソリン・ディーゼル車代替の「現実解」
日本では次世代代替エネルギー車としてEV、HVが一般的だが、欧州でも各メーカーがEVとHVの開発を進め、次々と新しいモデルが登場している。EV、水素自動車、HVなど次世代代替エネルギー車にはそれぞれ一長一短があるものの、環境面、コスト面、供給面、エンジンとしての動力性能面などの優位性において、欧州では天然ガス車を最適な現実解のひとつと考えているようだ。特に大型トラックやバスなどのEV・HV化は課題が多く、EVトラックの実現はまだ遠いといわれる。現実的に2040年のガソリン・ディーゼル車廃止という目標を鑑みると、トラック・バスに関してはすぐに実用的に使用出来る技術として天然ガス車が最も優れていると欧州で評価されるのはよく理解出来る。また、企業活動で排出するCO2量の大きな欧州の大企業では「物流に使用するトラックの排ガスをクリーンにすること」も必要になっているようだ。
EUの天然ガス車普及政策は、天然ガス車があまり日の目を見ていない日本の感覚からは想像以上に大規模で、2020年までに交通インフラに日本円で約4兆円を投資、そのプロジェクトの一貫としてEU全域を天然ガス車で走行可能とする「ブルー・コリドー・プロジェクト」を展開している。EU内11カ国27社が参加するこのプロジェクトでは、2015年だけで4つのメイン・コリドー(廊下)に14箇所の充填所を設置し、LNGトラック100台まで運送会社ごとに約182万円の補助金を出しているという。また「代替燃料供給インフラ整備のための警告(DAFI)」を発表し、CNG充填所は最大150km、LNG充填所は最大400km間隔で幹線道路に設置することを進めている。
なお2017年現在、天然ガス車は世界中で2450万台ある。中国、イラン、インドなど欧州以外での普及が特に進み、2012年以降は年間150万台のペースで増加中という。
一方日本では天然ガス車が一時期「ワゴンR」や「カローラバン」から大型路線バス「日野 ブルーリボンシティ」などさまざまなモデルに設定されたが、現在ではEV・HVに置き換わって次々と廃止されている状況である(ブルーリボンシティも「ブルーリボンシティハイブリッド」に移行)。
普及が進まない理由として、伸び悩んでいる充填所の数にあるとされるが、イベコ社の天然ガス車を取り扱うITSジャパンの橋本博文代表取締役社長は「魅力ある車両で日本の天然ガス車の活性化を図る」としている。
今後の日本でのイベコ社製トラック・バス、そして天然ガス自動車の発展に期待
日本では次世代代替エネルギー車としてEV、HV、燃料電池車、水素自動車などが注目されているが、欧州ではこのように天然ガス車普及に向けて官民一体になって積極的に進めていることがこの記者発表で良く理解出来た。
前述のようにEV、HVは良い悪いではなくそれぞれ一長一短があるため、日本でもすぐに天然ガス車の復活と普及が進むというわけではないだろう。しかし今回のこの発表とイベコ社日本進出のニュースを契機に、天然ガス車の優位性や世界の自動車市場での情勢、欧州での本格的な取り組みが広く日本に知れ渡ると、EV、HVと並ぶ新しい日本の次世代代替エネルギー車として天然ガス車が改めて脚光を浴びることになるかもしれない。
そしていよいよ日本にやってくるイベコ社の日本のトラック・バス市場での健闘が期待される。
[レポート:遠藤イヅル/Photo:IVECO・オートックワン編集部]
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