2035年から日本でも新車販売は電動車のみ! 今知っておきたいEV、PHEV、FCVの仕組みと課題
- 筆者: MOTA編集部
- カメラマン:MOTA編集部
世界の自動車メーカーがこぞってEV(電気自動車)など電動車へのシフトを進めている。二酸化炭素の排出と吸収を同等にするという試みであるカーボンニュートラルなど、環境への配慮という観点から見ても、電動車の普及は欠かせないという見方なのだろう。
そもそもなぜ電動車シフトが始まったのか、日本での電動車ラインアップや、課題をまとめていく。これからの自動車選びの参考にしていただきたい。
日本では2035年以降ガソリンとディーゼルの新車販売ができなくなる!
世界の自動車メーカーがEVシフトを進めるきっかけとなったのが、2015年12月に採択された「パリ協定」だ。世界中で気候変動による災害が増えたことで、地球温暖化の歯止め、温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題となっている。そこで設けられたのがパリ協定で、各国はパリ協定での枠組みをもとに、それぞれの削減目標を掲げているのだ。
特にヨーロッパ圏は熱心に取り組んでおり、イギリスは2030年、フランスは2040年までにガソリンとディーゼル車の販売を禁止し、EVに切り替えると発表。EUも2035年までに内燃機関車の新車販売を禁止する方針を掲げている。
欧州にならい、日本でも2035年までに新車販売を電動車のみにすると発表!
これを受けて、特に欧州の自動車メーカーが続々とEVモデルへの切り替えを進めている。そして、日本では2035年までに新車販売を電動車のみとする方針を打ち立てた。
ここでの電動車にはハイブリッド車、EV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)が対象となる。つまり、2035年以降はガソリンとディーゼル車の新車は販売できなくなる。軽自動車で主流のマイルドハイブリッドは含まれるかどうか未定だが、低価格で勝負している軽自動車に高価なバッテリーを積むわけにもいかないだろう。今後の展開にも注目だ。
日本ではハイブリッド車が主流であり、すでに多くのモデルに採用されていることからも特別大きな混乱は起きないだろうが、ハイブリッド車はガソリン、ディーゼル車に比べて大容量バッテリーや高電圧モーターを備えている分高額になりがちなため、2035年以降の新車販売は今以上に落ち込んでしまう可能性も考えられる。
EVの課題は航続距離と充電スポットの少なさ
それ以外の電動車については選択できる車種も少なく、それほど浸透していないというのが現状だろう。それでも海外市場も見据え、EVは各メーカーが力を入れて開発を進めている分野だ。
EVはガソリンに代わり、モーターの電力によって駆動するクルマのことだ。加速または減速することによってバッテリーから電気を取り出したり、充電することで走行することができる。
主な国産車としては日産のEV車リーフ、アリアをはじめ、ホンダ Honda eやマツダ MX-30、レクサス UX300eなど、徐々に選択肢が増えてきている。
EVのネックというと航続距離、そして充電環境の少なさだろう。
現在最も航続距離が長いモデルはテスラ モデルS ロングレンジで約651kmだ。輸入車モデルは比較的航続距離の長いものが多い。主たるモデルは約200km〜400km程度で、日常使いなら困らないが、遠出をするとなるといささか不安ではある。しかし、Honda eなど日常使いをメインに考え、航続距離に重きを置いていないモデルも存在する。
ハイブリッド車とEVのいい所どり! ガソリンでも電気でも動くPHEV
ハイブリッド車の進化版として注目を集めるのがPHEVだ。外部電源からバッテリーを充電できるEVとハイブリッド車のいい所どりのモデルとなる。ハイブリッド車よりバッテリー容量を拡充し、EV走行とガソリン走行の両方を選ぶことができる、画期的なモデルだ。国産モデルではトヨタ プリウスPHVをはじめ、トヨタ RAV4 PHV、三菱 アウトランダーPHEV、ホンダ クラリティPHEVなど徐々に選べるモデルが増えている印象だ。
充電設備は徐々に増えてきているが、ガソリンスタンドの約6割
EVとPHEVの動力源である充電器はマンションや事業所、道の駅、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアなどに設置されている。2020年3月で全国の充電スポット数は1万8270箇所(ガソリンスタンド数の約6割)、急速充電器(CHAdeMO規格)の数も国内での伸びは鈍く、2020年5月で7700箇所にとどまる。設置場所が少なく、多くの充電エリアで1回の充電時間がおよそ30分程度と制限されていることからも、EVの購入には二の足を踏むユーザーは多いはずだ。
最近では自宅に充電器を設置するV2H(Vehicle to Home)も注目されている。設置費用はおよそ10万〜20万円程度だが、契約アンペア数の見直しや、コストを抑えるには電気料金が安価になる深夜帯に充電するなどの工夫が必要だ。
2035年に新車販売を電動車のみとすると宣言されたことを踏まえると、今後、急速充電器を拡充する必要があることは言うまでもない。
水素の力で動くFCV! 環境には優しいがネックは価格
最後に、FCVについて紹介しよう。FCVとは水素と酸素の化学反応によって電力を取り出し、動力とする電気自動車のことだ。
国産車ではトヨタ MIRAIやホンダ クラリティ フューエルセルの2台のみ。輸入車を含めても日本で買えるのは3モデルと選択肢が最も少ない。その理由の一つがおそらく価格だ。2代目MIRAIはエントリーグレードでも710万円(税込・以下同)からで、最上級グレードでは860万円となる。FCVを購入した際に国から交付される補助金210万5000円(上限額)を差し引いても、高額な印象は払拭できない。
また、FCVの動力源として欠かせない水素充填ステーションの数が少ないことも普及の足枷となっているだろう。2021年8月時点で4大都市圏を中心に154箇所が設置されているが、日常生活で見かける機会はそれほど多くない。
ハイブリッド車だけじゃない! 次世代モデルの今後の普及に期待
ここまで、電動車の種類と主なラインアップ、課題について触れてきたが、やはり普及に向けて必要なことはインフラ整備ではないだろうか。
インフラ整備には各自動車メーカーも力を入れており、ディーラーなどに設置されるケースも増えてきている。特にPHEVは災害時の非常用電源としての機能も持ち合わせており、災害の多い日本では貴重な存在と言えるだろう。実用面と環境への配慮、両面を持ち合わせた次世代車の普及がさらに進んでいきそうだ。
【筆者:MOTA編集部】
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