ジャガー I-PACE試乗|ブランド初のバッテリー電気自動車(BEV)。その実力はいかに!?(2/2)
- 筆者: 島下 泰久
- カメラマン:佐藤 正巳
ツインモーターが発生する400PSの威力は!?
では走りはどうか。I-PACEのボディは全体の94%をアルミ製としたモノコックで、ねじり剛性値は3万6000Nm/deg.とF-TYPE並みの数値を実現している。空力性能も優秀。フロントバンパー開口部内の自動開閉されるフラップ、格納式フラッシュドアハンドルの採用などもあり、Cd値は0.29を実現している。
電気モーターは前後アクスルに各1基ずつが搭載され、合計で最高出力400ps、最大トルク696Nmを発生する。大容量90kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載するため車重は2.2トンを超えるが、0-100km/h加速は4.8秒という俊足ぶりを見せる。
しかも、このバッテリーはホイールベース間のフロア部分に敷き詰められているため、重心高は非常に低く抑えられ、また前後ほぼ50:50の良好な重量配分も可能としている。サスペンションはフロントがFタイプ譲りのダブルウィッシュボーンに、リアがF-PACE由来のインテグラルリンク式で、オプションとしてエアサスペンションも装着可能である。
その走りで鮮烈なのは、月並みだがやはりその滑らかさ、そして力強さだ。電気モーターはアクセルオンで即座にトルクをもたらし、騒音も振動も極小。しかもギアボックスによる変速も無いから、どこでも、どこまでも思いのままの加速を味わえる。
モーター音も変更可能。回生ブレーキの調節でシングルペダルドライブも
もし物足りないと感じる人のためには、電気モーター音を強調した電子音をプラスできるアクティブサウンドデザインも用意されている。正直、ギミックっぽいなとも思っていたのだが、使ってみると加速感とうまくハーモナイズされていて案外悪くなかったと報告しておこう。
減速はブレーキペダルを踏み込めば、回生ブレーキと機械式ブレーキが自動的に制御され、スムーズに停まれる。とは言えタッチはもう一歩だから、特に市街地などでは、回生ブレーキの効きを2段階のうち強い方に設定して、シングルペダルドライブで走らせた方が良さそうだ。
ジャガーらしいハンドリングのよさは健在
そして何より感心させられたのがハンドリング性能である。その走りは、まさにジャガー。操舵に対して小気味良く反応してよく曲がるというだけでなく、すべての挙動の繋がりが滑らかで、とてもコントローラブルなのだ。クルマの重さを忘れられるわけではないけれど、それがどうしたと言わんばかりのハンドリングカーぶりにには大いに唸らされてしまった。
ノーマルサスペンションの20インチタイヤ付きと、エアサスペンションの20インチと22インチという様々な仕様を試したが、個人的にはノーマル+20インチでも十分満足できた。一方、もっとも洗練された、あるいは外観通りの先進感が味わえるのは、エアサスペンション+22インチ。予算と好みで選ぶといいだろう。
BEVということで気になるのは航続距離と充電所要時間だ。I-PACEはWLTCモードの数値で、満充電の状態から438kmの走行が可能。200Vの普通充電では約10時間で満充電となり、50kWのCHAdeMO急速充電を使えば0%から80%まで充電するのに約85分となる。実際、1時間充電すれば、ざっと270kmほどの走行が可能だという。
内燃エンジン車とまるで同じように使えるとは言わないが、しかし不便はずいぶん減ってきている。しかもデザイン、パッケージング、各種の先進機能に走りと、BEVならではのメリット、特徴がフルに活かされているから、きっとI-PACEとの生活は多少のデメリットなど吹き飛ばしてくれるのではないかという印象を得た。プレミアムカーメーカーが作ると、ジャガーが作ると、BEVはこうなる。その力量を見せつける会心の1台の登場だ。
[筆者:島下 泰久/撮影:佐藤 正巳]
ジャガー I-PACE 主要スペック | |
---|---|
全長 | 4695mm |
全幅 | 1895mm |
全高 | 1565mm |
ホイールベース | 2990mm |
乗車定員 | 5名 |
車両重量 | 2230kg |
駆動方式 | AWD |
最高出力 | 294kW(400PS) |
最大トルク | 696N・m |
メーカー希望小売価格(消費税込) | 1162万円(HSE) |
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