ホンダ フィットe:HEVで採用されるビスカスカップリング式4WDは、駆動力が滑らかに増減し雪道でも走行安定性を向上させるメリットを備える

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ボディが小さくて価格の安いコンパクトカーや軽自動車に搭載されるビスカスカップリング式4WD。長い歴史を持つこのシステムとe:HEVの相性はどのようなものか? 今回は、雪上での走行機会を得たので、その内容をお届けする。

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  1. コンパクトな車種に搭載される4WDの定番メカニズム「ビスカスカップリング式4WD」
  2. フィットe:HEVクロスターの4WDは、高重心でも重量が軽いため、雪道でのカーブでの旋回ロスが生まれにくい
  3. e:HEV×ビスカスカップリング式4WDのメリットは、滑らかに増減する駆動力
  4. e:HEVとの組み合わせでビスカスカップリング式4WDはより安心感が増し、運転しやすくなっている

コンパクトな車種に搭載される4WDの定番メカニズム「ビスカスカップリング式4WD」

ホンダ フィットのようなコンパクトカーや軽自動車では、ビスカスカップリングと呼ばれる4WDシステムを使うことが多い。前後輪の駆動系の間に、筒状のケースが装着され、この中には複数のプレートとシリコンオイルが封入されている。主たる駆動輪となる前輪が空転すると、プレート間に回転差が生じて、シリコンオイルの働きにより後輪側のプレートへ駆動力が伝えられる。

ビスカスカップリング式4WDは、ヴェゼルやCR-Vなどに使われる電子制御式のリアルタイム4WDとは異なり、すべて機械式で作動する。そのためにコストが下がり、重量も比較的軽い。このメリットを生かして、ボディが小さくて価格の安いコンパクトカーや軽自動車に搭載されている。

ビスカスカップリング式4WDは、1986年に発売された日産 3代目パルサーから採用され、今ではコンパクトな車種に搭載される4WDの定番メカニズムになった。この4WDシステムを搭載するフィットe:HEVクロスターを雪上コースで試乗した。

フィットe:HEVクロスターの4WDは、高重心でも重量が軽いため、雪道でのカーブでの旋回ロスが生まれにくい

フィットe:HEVクロスターの4WDは運転がしやすい。一番の理由は車両重量だ。フィットe:HEVクロスターはSUV風のワイドなボディを備えるために3ナンバー車になるが、車両重量は1200kgと軽い。

そのために雪上のカーブを曲がる時も、旋回軌跡が拡大しにくい。下り坂では後輪がしっかりと接地して、ドライバーの操作に対して忠実に反応する。ボディの重い高重心の車種では、雪道のカーブを曲がる時にムダな動きが生じて運転を難しくするが、フィットはこのような状態に陥りにくい。

そして雪上のカーブでは、ステアリングホイールを内側へ少し積極的に切り込み、アクセルペダルを踏み増すと、さらに運転しやすく感じた。後輪を若干横滑りさせることで、旋回軌跡が拡大するのを抑えるからだ。ステアリングホイールの操舵量も少し減り、運転がスムーズになる。

e:HEV×ビスカスカップリング式4WDのメリットは、滑らかに増減する駆動力

この運転のしやすさには、先に挙げたボディの軽さに加えて、ほかの要素も影響している。まずはビスカスカップリング式4WDの進化だ。30年以上前の同システムには、前輪がしばらく空転した後に後輪へ駆動力を伝えるタイプも多かったが、今は時間差をほとんど感じない。電子制御式ではないから、時間差は残るが、違和感を抑えた。

そしてビスカスカップリング式4WDは、駆動力の伝達方式がシンプルだから、運転操作と、それによって生じる4WDの作動や挙動変化が分かりやすい。先に述べたステアリングホイールを少し積極的に切り込みながらアクセルペダルを踏み増す操作も、安心して行える。

ハイブリッドシステムのe:HEVと、ビスカスカップリング式4WDの相性も注目される。e:HEVでは、エンジンは基本的に発電機を作動させて駆動はモーターが受け持つ。モーターは瞬発力が高いので、アクセル操作に対する反応の仕方も機敏だ。

いい換えればe:HEVでは、アクセルを操作してからパワーが増減するまでの時間が短い。モーター駆動では変速も行われないから、駆動力が滑らかに増減するメリットもある。

これらの相乗効果により、ビスカスカップリング式4WDは運転がしやすく、特に雪道では走行安定性を向上させるメリットが際立った。駆動力を綿密に調節しやすいことも含めて、e:HEVは雪上の走りにも適する。

e:HEVとの組み合わせでビスカスカップリング式4WDはより安心感が増し、運転しやすくなっている

ちなみに最近のハイブリッド4WDには、後輪側に前輪側とは別個の駆動用モーターを搭載するタイプも増えた。この方式では、走行状態に応じて後輪の駆動力を前輪に比べて高めるなど、さまざまな制御が行える。プロペラシャフトを装着しないから、空間効率も優れている。

その半面、この方式ではさまざまな制御が可能になるから、従来の4WDでは生じない挙動を見せることもある。つまりは一長一短だ。

今回のe:HEVとビスカスカップリング式4WDの組み合わせでは、従来から用意される4WD方式にも、優れた走行安定性と運転のしやすさが備わることを確認できた。特に積雪地域で長年にわたり4WDを乗り続けてきたユーザーにとって、フィットのビスカスカップリング式4WDは、運転がしやすく安心感も高いと思う。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:本田技研工業株式会社]

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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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