ヤリスやノートが人気でもなお、激戦小型車のオススメは“クラス随一の広さと高コスパ”のフィットに軍配(1/2)

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ホンダが満を持してフルモデルチェンジした「フィット」が思ったほど売れていない。最新のハイブリッドシステムを搭載し、2020年にデビューした4代目フィットだが、2020年同時期にデビューしたライバルのトヨタ ヤリスに比べ、売れ行きが伸び悩んでいる状態だ。その原因とは。

今回は、デビュー1年が経過したホンダ フィットについて、改めてその実力を再評価してみたい。

癒し系のマスクが愛らしい! ホンダ フィットを写真で改めてチェックしてみる[画像80枚]

目次[開く][閉じる]
  1. ホンダ フィットがいまひとつ売れなくなってきた複数の理由
  2. 派手さは皆無だが、広くてリラックス出来る癒し系のフィット
  3. 4代目フィットは乗り心地の面でもライバルを圧倒! 最良グレードは「フィット CROSSTAR(クロスター)」
  4. コスパの高さはライバルを圧倒! フィットは総合力が高くお買い得度も群を抜く!

ホンダ フィットがいまひとつ売れなくなってきた複数の理由

かつてはコンパクトカージャンルの人気をけん引し続けてきたフィット

クルマにはさまざまなカテゴリーがあるが、小型/普通車の中で、最も多く売られているのはコンパクトカーだ。5ドアハッチバックボディに、排気量が1リッター~1.5リッタークラスのエンジンを搭載する。

最近は安全装備や環境性能の充実により、クルマの価格が全般的に上昇した。その一方で割安なコンパクトカーが質を高めたから、注目を集めている。

コンパクトカーの中で、主力に位置付けられる車種のひとつが「ホンダ フィット」だ。

初代モデルは2001年に発売され、2002年には軽自動車まで含めた国内販売の総合1位になった。この後も好調に売れている。

同時期にデビューしたトヨタ ヤリスとの販売台数差がじわじわと表面化

現行フィットは4代目で、2020年2月に発売された。発表の時点で1か月の販売計画を1万台としていたが、2021年1月の登録台数は5889台、2月は5782台だ。

ライバル車で、ほぼ同時期の2020年2月にデビューした「トヨタ ヤリス」(スポーツモデルの「GRヤリス」とコンパクトSUVの「ヤリスクロス」は除く)は、2021年1月が8180台、2月は9950台だから、フィットの登録台数はヤリスの60~70%に留まる。

ホンダ フィットの売れ行きがいまひとつ伸び悩む理由は複数あった!

ホンダ フィットの売れ行きが伸び悩む背景には、半導体の不足による減産があった。販売店によると「1月から2月に掛けて、納期が長引く傾向にあった」という。2020年4~9月には、1か月平均で8420台を登録したから、確かに直近の売れ行きは下がり気味だ。

また、同じホンダの軽自動車「N-BOX」が、国内の最多販売車種として絶好調に売れている影響もある。N-BOXの届け出台数は2021年1月が1万6369台、2月は1万8591台と圧倒的に多く、フィットの需要は少なからず奪われている。

世間は過小評価!? 実は高い総合点を誇るホンダ フィットを再検証

このほかフィットは現行型になってフロントマスクのデザインが大きく変わった。この評価がユーザーによってさまざまで、販売の伸び悩みにも少なからずつながっているのでは、とみる意見も聞かれる。

ホンダ フィットはメーカーを代表するコンパクトカーで開発にも力が入っており、実際に高い総合点を誇るクルマだが、上記のような事情からやや過小評価されている印象も受ける。

そこで今回は、デビュー1年が経過したホンダ フィットならではの美点も紹介しながら、改めて実力を考えてみたい。

ホンダ/フィット
ホンダ フィットカタログを見る
新車価格:
165.6万円274.9万円
中古価格:
15万円283万円

派手さは皆無だが、広くてリラックス出来る癒し系のフィット

好みが分かれる!? 柔和で個性的な癒し系フロントマスクの表情

まずは内外装のデザインや使い勝手などから、ホンダ フィットについて紹介してみよう。

現行型の4代目ホンダ フィットの外観(エクステリア)はフロントマスクが個性的だ。正面からボンネットにかけての角の部分が目立ち、人でいうとおでこが出っ張ったような形状をしている。これは最近のホンダ車の流れに沿ったデザインである。

「インサイト」、「オデッセイ」、新型「ヴェゼル」など、同様にフロントグリルを直立させているが、フィットの場合グリル(開口部)が少ないため強調されて見える。角は丸められているから全体には柔和な印象を受けるが、その分派手さや押し出し感はなく、やや好みが分かれるところだ。

ただしフィットシリーズの中でも、SUVタイプの「フィット CROSSTAR(クロスター)」のみグリルの面積を広げ、力強さを増したせいか、違和感は少ない。

視界の良さはクラス随一! 安全運転にもつながる重要なポイントだ

フィットで注目したいのは優れた視界だ。

フロントピラー(柱)を2本配置して、前面衝突時の衝撃は、手前の太いピラーで吸収する。前側のピラーはフロントウィンドウの窓枠だから細くデザインされた。そのために斜め前側の視界が優れている。

ボディの側面も、サイドウィンドウの下端を低めに抑えた水平基調のデザインだから、側方や後方も見やすく、運転の安全にもつながる。街中などで日常的に使用するコンパクトカーにとって、軽視してはならない重要なポイントである。

ちなみにライバル車のヤリスは外観のデザイン性を重視した影響で、サイドウィンドウの下端を後ろに向けて持ち上げたから、斜め後方が見にくい。その点でフィットは、縦列駐車も容易に行える。最小回転半径も4.9~5.2mに収まり、小回り性能も良好だ。

質感も高く、リラックスして運転できるのがフィットの良さ

内装(インテリア)ではインパネに注目したい。2本スポークのステアリングホイールは個性的だが、シンプルな仕上がりでメーターの視認性も良い。エアコンのスイッチは高い位置に装着されて扱いやすい。

ATのシフトレバーは、先代フィットのハイブリッド車のみ別の形状になっていたが、現行型ではe:HEV(ハイブリッド)まで含めて前後にスライドさせる一般的な方式に統一されている。

インパネの上端は平らにデザインされ、前方視界を向上させた。コンパクトカーにとって大切な機能性を優先させ、なおかつ質感にも不満はない。

車内が広いこともフィットの特徴だ。前席は頭上に十分な余裕がある。視界の良さや乗り心地の上質さとも相まって、現行型フィットはリラックスして乗ることが出来るのが美点となる。

ライバルに比べ圧倒的に広い室内と荷室も歴代フィットが受け継ぐ美点

後席の足元空間は、コンパクトカー※では最も広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ2つ半の余裕がある。この広さはミドルサイズセダン並みだ。ライバルの「日産 ノート」(握りコブシ2つ分)、「トヨタ ヤリス」(握りコブシ1つ少々)を大幅に上まわる。

※全高を立体式駐車場(タワーパーキング)の高さ制限(1550mm以下)の範囲に抑えたタイプ

現行フィットのプラットフォームは、先代型と共通で、燃料タンクを前席の下に搭載したから荷室の床が低いのも美点だ。後席を床面へ落とし込むように畳むと、大容量の荷室に変更できる。

また後席の座面を持ち上げると、車内の中央に背の高い荷物を積むことも可能だ。このシートアレンジは初代フィットで採用され、今でも大切な特徴として継承されている。

4代目フィットは乗り心地の面でもライバルを圧倒! 最良グレードは「フィット CROSSTAR(クロスター)」

エンジンは1.3リッターのガソリンと1.5リッターハイブリッドの2種類

エンジンは、直列4気筒 1.3リッターのガソリンエンジン(ノーマルタイプ)と、1.5リッターのハイブリッド「e:HEV(イーエッチイーブイ)」の2タイプを設定した。

ノーマルエンジンは少し高回転指向だ。車両重量は売れ筋の「フィット HOME(ホーム)」で少し重い1090kgに達する。高速道路や登坂路での走行では出力がやや物足らず、高回転までアクセルを踏み込むことになる。3000回転以下の駆動力を向上させるともう少し扱いやすくなるだろう。それでも街中の移動が中心であれば大きな不満はない。

ハイブリッドのe:HEVは、ホンダの上級車種と同様にエンジンは主に発電機を作動させ、駆動はモーターが担当する。加速が滑らかで、アクセル操作に対して機敏に反応する。

e:HEVの動力性能をノーマルエンジンに当てはめると2リッタークラスに相当するもので、余裕がある。モーター駆動だから、エンジンは燃費に優れる高効率な回転域を多用できるが、アクセルペダルを深く踏んだ時にはエンジン回転数を高める凝った制御も行う。ドライバーが自然な運転感覚を得られるためだ。また高速巡航時には、エンジンが直接車輪を駆動して、効率を高める制御も行う。

フィットの燃費は、ノーマルエンジンを搭載する主力グレードの「フィット HOME」が20.2km/L、「フィット e:HEV HOME」は28.8km/Lとなる(共にWLTCモード燃費)。

走行安定性は先代フィットに比べ大きく向上し、安心感を増した

現行型フィットは、車台のプラットフォームを先代型(3代目)と流用するが、ボディの各部を補強したこともあり、走行安定性も向上した。

先代型に比べると、ステアリングホイールを回し始めた時から、車両が正確に向きを変える特性になった。カーブを曲がっている最中に路上のデコボコを乗り越えた時も、進路を乱されにくい。

また下り坂のカーブで危険を避けるためにブレーキを作動させた時は、後輪がしっかりと接地して挙動を乱しにくい。現行型フィットは、走りの安心感も向上させた。

走行安定性の向上を図ったら、ライバル車を圧倒する上質な乗り心地も同時に得た!?

走りの安心感が向上した現行型 4代目ホンダ フィットだが、走行安定性が高まった理由として、柔軟に動く足まわりも挙げられる。

そのために現行型では、乗り心地も総じて快適になった。その点でライバルの「トヨタ ヤリス」や「日産 ノート」を圧倒する。ただし装着されるタイヤによって差が生じる面もあるから注意したい。

ハイブリッドe:HEVとガソリンで少し異なる乗り心地の質

フィットで最も乗り心地が快適なグレードは、SUV風の「フィット CROSSTAR(クロスター)」だ。

最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)を拡大したことで足まわりの設定が異なり、ほかのグレードよりも柔軟に動く。16インチタイヤも185/60R16の専用サイズだから、乗り心地のボリューム感を高めた。指定空気圧は前輪が220kPa、後輪は210kPaと適正で、走行安定性と乗り心地のバランスを向上させている。

ノーマルエンジンの15/16インチタイヤを装着する「フィット HOME(ホーム)」や、高級仕様の「フィット LUXE(リュクス)」も、おおむね満足できる。

ノーマルエンジンの「フィット BASIC(ベーシック)」と、e:HEV CROSSTARを除くe:HEV(ハイブリッド)モデルは、指定空気圧が高めだ。前輪が240kPa、後輪は230kPaになる。転がり抵抗が抑えられて燃費を向上させるメリットは得られるが、乗り心地は硬くなりやすい。販売店の試乗車を乗り比べて判断したい。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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