戦闘力が向上した新型シビック Type Rで市販FF車最速を奪還せよ!
- 筆者: 工藤 貴宏
- カメラマン:MOTA編集部・本田技研工業
恐ろしいまでの本気だ!そこには「Type R」を極めようというホンダの執念がみなぎっている。マイナーチェンジを受けて今年の夏に発売が予定されている新型「シビックType R」の概要が発表された。その内容を知れば、クルマ好きは誰もがそう感じることだろう。そこに満ち溢れているのは、ホンダの熱い闘争心に他ならない。戦っているのは“自分自身”そして“あのライバル”だ。
新型シビックType Rは、単なる商品性向上に留まらないレベル
グリル&バンパーのリデザイン、ブレーキの変更、サスペンションのアップデート、ステアリング&シフトノブの改良、そして時代が求める安全運転支援機能である「Honda SENSING(ホンダセンシング)」の採用。こうして新型シビックType Rの改良項目を並べて見るだけでも、単なる商品性向上に留まらないレベルだということがわかる。
たとえば「シフトノブの形状変更」なんて、やっていることが細かすぎるのだ。そんな細かい部分まで及ぶ変更からも、「Type Rをさらに研ぎ澄ませ、極める」という開発陣の強い意思が伝わってくる。
Honda SENSINGを初搭載
内容を細かくチェックしていこう。
まず時代のニーズへの対応といえるのが、「Honda SENSING」の搭載だ。事故を防ぐもしくは被害を緩和する衝突軽減ブレーキをはじめ車線逸脱支援システム、路外逸脱制御機能、歩行者事故低減ステアリングに加え、ドライバーをサポートするACC(アダプティブクルーズコントロール)、オートハイビーム、標識認識機能、先行車発進お知らせ機能などが組み込まれる。
「Type Rに安全装備は不要。重量増反対!」という硬派なファンもいるかもしれないが、社会の流れを考えると多くの人に受け入れられるだろう。
また、ACCは高速道路移動においてドライバーの疲労を軽減してくれるメリットが大きい。
限界性能が高まり“路面の悪いステージ”でもこれまでよりしっかり走れるようになった
そしてここから先は、すべて走行性能の向上となる。
まずはフロントグリルの開口部が13%拡大し、フィンのピッチを従来の3.0mmから2.5mmへ狭めたラジエターを採用して冷却性能を向上。
さらにフロント部はリフト(高速時の車体の浮き上がり)を抑制するために、フロントバンパー下のエアスポイラーの形状と剛性を変更して、フロントタイヤ前の空気の圧力をコントロールしている。空力性能のチューニングを施したのだ。
速さにおいて重要な「減速性能」にも手が入った。ブレーキディスクを従来の1ピースから2ピース構造としたことでディスクの“倒れ”を防いでサーキットの限界性能でも安定したブレーキングが持続できるようになった。
限界性能といえば、サスペンションにも手を入れてハンドリングも大幅アップデート。電子式可変ダンパーの制御を変更したのに加え、フロントロアボールジョイントのフリクション低減、フロントコンプライアンスブッシュ高減衰化(約10%アップ)、リアロアアームBブッシュ高硬度化(約8%アップ)など部品単位でも新しくしている。
ホンダによると、改良のメリットとして「吸い付くような操舵追従性」「瞬時に決まる車両姿勢」そして「無駄なく伝わるトラクション」でコーナリング性能が向上。
さらに「荒れた路面での接地性・制震性」も高まっているという。つまり、路面の悪いステージでもこれまでよりしっかり走れるようになったというわけだ。
勘のいいクルマ好きであればここで、ニュル(後述)の路面が荒れているのと話が結びつくことに気が付くかもしれない。
「Type R」という存在に対する開発陣のこだわりの具現化
いっぽうで注目すべきは、今回の変更が単にハード面だけに留まらないことだろう。
たとえばステアリングホイールはアルカンターラ巻きになったが、単にそれだけでなく、内部構造まで変更してフィット感を高めている。
さらにシフトノブは、変更前は球形だったが新型はティアドロップ形状とすることでドライバーがシフトノブの傾きを把握しやすいように工夫したのだ(これは先祖返りともいえる)。そんな細かい部分まで……!?
マイナーチェンジでステアリングホイールの内部構造に手を加えたり、シフトノブ形状を変える例はほとんどない。それは言い換えれば、「Type R」という存在に対する開発陣のこだわりの具現化に他ならないだろう。
市販FF車最速を奪還せよ!
ただ、サスペンションやブレーキの進化はともかく冷却性能の向上に関しては、サーキットを走る人も含めて多くのユーザーには絶大なメリットをもたらすというほどではない。なぜなら従来モデルでも十分な冷却性能を持っていたからだ。
では、なぜ開発陣がそこへ踏み込んだのか? ホンダから公式に発表された資料への記載はないし、開発責任者も表面的には「気にしていない」と否定するのだが、目的はやはり“あれ”だろう。ドイツにある過酷なサーキットでスポーツカーの聖地といわれる「ニュルブルクリンク」のタイムアタックである。
シビックType Rはそこでの市販FF車最速タップタイムを何度か樹立しているのだが、その座は現在、ガチンコライバル車のルノー「メガーヌR.S.」に持ち去られている。
そこでの頂点奪回が今回のマイナーチェンジの裏テーマである可能性が高い。というか間違いない。
ライバルは“超大人げない仕様”
状況を説明すると、メガーヌR.S.は標準仕様でシビックType Rを超えることができなかった。
そこでルノーはエンジン制御を変更したうえでカーボンパネルやチタンマフラー、フルバケットシートの採用、リヤシートや自慢の4輪操舵システムまで取り外して130kgもの軽量化。
さらに車高調整式のオーリンズ製ダンパーや最大で標準車の2倍のダウンフォースを発生するアンダーパネル&リヤディフューザーを取り付けるなど「トロフィーR」と名付けた“超大人げない仕様”を投入(でもその仕様をしっかり市販したのはエライ)。シビックType Rを超えるタイムを叩き出した。
新しいシビックType Rがそこに挑むのは間違いないだろう(挑まなくてどうする!)
徹底的に“やる気”仕様の「Limited Edition」
実は今回、そのための隠し玉が用意されている。それが「Limited Edition」だ。
2020年秋に200台限定でリリースされる予定のこの限定車は、「サンライトイエローII」という黄色いボディにブラックのルーフやドアミラー、インテークカバー、そしてクロームのシリアルナンバープレートとエンブレムがコーディネートされて特別感が一目瞭然だ。
しかし、そんな見た目は“二の次”に過ぎない。ダッシュボード内、フロントフェンダー、ルーフ、そしてリヤサイドパネルの消音材が簡略化されて約13kgのダイエットを実現。さらにBBS製専用鍛造ホイールでも約10kg軽量化している。そのうえで専用タイヤ(ミシュラン・パイロットスポーツCup2)と専用セッティングのダンパーシステムとパワーステアリングを搭載。徹底的に“やる気”の仕様なのだ。これでニュルアタックをするのだろう。
それを待っている人のために、丹精込めて戦闘力を向上。新しいシビックType Rのメニューを見ると、そんな開発陣の心意気がひしひしと伝わってくる。
同時に「売られたケンカは買う」という熱い闘志も感じられるのは、きっと気のせいではないはずだ。
冒頭にも記したとおり、新型シビック Type R価格などの情報はまだ公表されておらず、追って発表される。
[筆者:工藤 貴宏/撮影:MOTA編集部・本田技研工業]
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