新型シビックは新鮮な驚きだらけ! 往年の歴史を知る層も改めて注目したい、“新生”シビックを徹底テスト
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:佐藤 正巳
間もなくデビュー50周年を迎えるホンダ シビック。近頃はスポーツ版「タイプR」以外の話題をあまり聞かなかった車名だった。しかし2021年9月3日(金)に発売を開始した11代目は、かつての歴代シビックを良く知る層、また過去を知らない若い世代にとっても、各々に新鮮な印象を与えてくれるニューモデルに生まれ変わっていた。
昭和世代の筆者、モータージャーナリストの岡本 幸一郎氏が、改めて新生シビックをテスト。シビックの歴史と共に、新型の魅力についてここで改めてひも解いてみる。
1972年の初代登場から間もなく50周年! 紆余曲折あったシビックの歴史
7代目までは5ナンバーサイズのコンパクトカーだった市民のためのクルマ「シビック」
1972年に誕生し、まもなく50周年を迎えるシビックは、ホンダの四輪車の中でもっとも長く同じ車名が続いている、ホンダを代表する中核モデルだ。
“市民”を表す車名の通り、2000年登場の7代目までは5ナンバーサイズの親しみやすいコンパクトカーだったところ、翌2001年によりコンパクトなフィットが出現したこともあり、2005年登場の8代目からは上級移行して3ナンバーサイズとなった。
ボディ拡大で3ナンバー化、2000年代にシビックの販売は低迷! 特殊なタイプRばかりが目立つ状況に
ところが、その8代目が2010年に販売終了となると、9代目は諸事情により日本に導入されず、5年の後のモデル末期にタイプRのみが750台限定で導入された。そして2017年発売の10代目では一転して4ドアセダンと5ドアハッチバックとタイプRを揃えるも、後年には販売比率の低かった4ドアセダンを廃止している。
今回の11代目は、当初から4ドアセダンの投入は見送られ、5ドアハッチバックのみでのスタートとなった。なお2022年にはe:HEV(イーエイチイーブイ/ハイブリッド)とタイプRを投入予定であることがすでに明らかにされている。
すっきりしたスタイリングと、簡素なのに上質で斬新な内装! 新型シビックは「カッコいい」クルマに生まれ変わった
基本メカニズムは10代目のキャリーオーバーとなるが、ひとクセあるスタイリングが特徴的だった10代目に対して、新型シビックでは一転してスッキリとしたルックスとなった。
内装も、水平基調のインパネに配されたワイドフローのエアコンアウトレットは、見た目も斬新で興味深い。上級のEXグレードに標準装備される10.2インチのフルグラフィックメーターは、さまざまな情報をわかりやすく表示することができる。
300万円台の価格は一見割高!? コネクティッドナビ標準装備でむしろお得だ
「Honda CONNECT」は9.0インチの大画面ディスプレイを備え、クルマをWi-Fiスポットにできるほか、スマホをクルマのキーにしたりリモート操作したりもできる。
11代目新型シビックの車両価格は319万円~353万9800円。300万円を下回っていた先代(10代目)に比べ高くなったように感じられるのは、Honda CONNECTに対応したカーナビが標準装備とされたためで、実質的な新旧の差はずっと小さいことをご理解いただきたい。
先進運転支援機能も進化
「Honda SENSING」も大幅に進化した。従来型ではミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーとして用いていたのに対し、約100度の視野角を持つワイドビューカメラと前後4個ずつの超音波ソナーセンサーを備えた新型は、踏み間違い衝突軽減システム、アダプティブドライビングビームもしくはオートハイビーム、トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)などの機能を実現。さらに、ブラインドスポットインフォメーション、パーキングセンサーシステム、後退出庫サポートなどの機能も加わった。
旧型からの継承技術も多いはずなのに、あらゆるものが“良くなっている”ことに驚き!
走りについても、従来型もその実力はかなりのものだったが、大幅に改良を加えた新型は、さらにあらゆるものがよくなっている。
1.5リッターターボエンジンは、基本的には従来の踏襲となり、貴重なMTがCVTと同価格で選べるのも特徴で、販売比率も従来型では約3割にも達しており、新型の初期受注も4割に達しているという。
最高出力182ps、最大トルク240NmというエンジンスペックはMT車では新旧変わらず、CVT車は20Nm増となりトランスミッションを問わず同値となったが、高効率ターボチャージャーの採用および圧損を低減した過給配管、クランクシャフト剛性向上などによりドライブフィールが改善し、従来型で見受けられたターボラグも解消している。
今どき珍しいMT(マニュアル)も用意! これがなかなか気持ち良かった!
MTのシフトフィールは抜群に良い。ストロークが適度に短く、しっかりとした節度感と高い剛性感がある。
MTを駆使してパワフルなエンジンを存分に味わえるのは良いのだが、惜しいのはアクセルオフ時のエンジン回転の落ち方がゆるやかなことだ。エミッション(燃費や排ガス規制などの環境対策)のためにこうしているらしく、従来型に比べると多少よくなっているものの、もっと素早く落ちてくれたほうがテンポよくシフトチェンジできてより楽しめるのに、と思わずにいられない。
CVT特有の癖は抑えられ、ダイレクトな走りが楽しめる
一方のCVTは、大幅に見直された甲斐あって、CVT特有の「踏んでから遅れて加速がついてくる感覚」が払拭された。リニアになったエンジン特性との相乗効果で、よりダイレクト感のある走りを楽しめるようになっている。従来型と同じパーツながら、制御をつきつめてここまで良くできたのには恐れ入る思いだ。
気持ち良い走りと、引き締まっているが快適な乗り心地
操舵したとおり正確に応答してくれるハンドリングも実に気持ちがよい。ホイールベースの拡大やリアのワイドトレット化、235サイズの太めのタイヤなどにより、リアの踏ん張りが効いていて、操縦安定性も極めてハイレベルな仕上がり。
それでいて、ひきしまった中にもしなやかさを感じさせる足まわりは、路面をしっかり捉えながらも、乗り心地の快適性も高く保たれている。
また、ホイールベースの延長により後席の居住性が向上しており、ラゲッジスペース容量もクラストップレベルの452リットルを確保するなど、運転の心地よさと使い勝手のよさの両面で優れたパッケージを実現している。全体として印象は上々だった。
かつてのシビックを知る層のみならず、シビックを知らない若い層が「カッコいい」と思えるシビックへ
シビックの名に親しみを覚える層はもちろん、ホンダが新型シビックのターゲットユーザーと据えている、「Generation Z」と呼ばれる1990年代半ば~2000年代前半生まれの若い世代まで、少しでも多くの人にこのクルマのよさが伝わるよう願いたい。
[筆者:岡本 幸一郎/撮影:佐藤 正巳]
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