欧州プレミアムワゴン 徹底比較(3/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:山口敏尚
新たなるスカンジナビアンテイスト
S80譲りのインテリアもわかりやすい高級感がある。全体の雰囲気は落ち着いた印象で、水平直線を基調とした端正な構成となっている。今回でいうと、特にBMWとは対照的な雰囲気である。
ボルボの新しい手法であるフリーフローティングセンタースタックはもちろん採用されている。ダッシュパネルに入れられたシボの模様や、あしらわれた木目パネルなどの視覚的な質感も非常に高い。
ボディサイズの拡大もあって、室内空間はかなり広々としている。居住性は申し分ない。ボルボらしい大柄なシートに、大きなアームレストが備わる。後席も広々としており、ヒップポイントをやや高めに設定することで、後席乗員にも大きな開放感を提供している。
ラゲッジスペース容量も大幅に拡大された。そして、ようやく待望のパワーテールゲートが設定された。
また、2007年冬に米科学誌「ポピュラーサイエンス」の「Best of What's New」賞を受賞したという、子供の成長に応じてシートの高さを変えられる「2段階調整式インテグレーテッド・チャイルド・クッション」にも注目したい。その他、細かく挙げるとキリがないほど充実した安全装備もボルボの強みである。
ドライバーズカーとして構成された
センターコンソールからインパネをドライバー側に傾け、必要な操作系をドライバーの手の届く範囲に整然と配置し、あくまでドライバーを中心にレイアウト。さらに、上質な素材をふんだんに用い、ご覧のようなドライビング空間を創出している。
インテリアも、このような明るい色調のカラーコーディネートを選ぶこともできる。木目パネルの大胆な使い方も興味深い。なかなか高級感がある。
また、全体としてはオーソドックスな構成ではある。樹脂パネル自体の質感を上げたり、チリの合わせ目を非常に小さくしたり、ガッシリとした立てつけとするなど、そうした本質的な質感を高めるための部分に非常に力を入れていることも、近年のアウディ車の特徴といえる。
後席は、座面が長く、ヒップポイントをかなり下げて、背もたれを寝かせ気味に設定。着座感は少し固めとなっている。ラゲッジルームは、レールシステムをフロアに一体化し、必要に応じて自在にアレンジできるように設定。行き届いた配慮により、広いだけでなく、使い勝手にも非常に優れる。
エキゾチックなドライビング空間
エキゾチックなインテリアに、このようなデザインテイストを採り入れたことで、旧来のBMWファンを驚かせたものである。しかしながら、エクステリア同様、今となってはこれでよかったのだと思える。
BMWならではのiDriveは、運転しながら各種機能を呼び出して操作するという点で優れる面もあるが、慣れるまでは少々わかりにくく感じられる。また、マイナーチェンジでATのシフトノブが新型X5と同様の設定に変わった。
後席については、低い座面は前後長がかなり長く、アウディとは対照的に背もたれが立ち気味となっている。ラゲッジルームは、BMWのツーリングらしく、小さい荷物の出し入れはリアウインドウのみを開閉することで行なえるようになっている。
ラゲッジと後席を仕切るバーについて、トノカバーとネットがアウディのように別々ではなく一体になっている(ボルボは後席背面に内蔵)ので、かなり重量が重い点は難点である。リアには、エアスプリングを採用した自動車高調整機能付サスペンションを標準装備。これにより積載する荷物の重量にかかわらず車高を一定に保つことができる。
内装・装備の総評
室内空間の印象を一言でいうと、高級感に勝るのがボルボで、デザインが興味深いのがBMWで、実は素材の質感やパネルのチリの合わせ目など、もっとも徹底してつくりこんでいるのがアウディという印象。ワゴンとしての使い勝手では、このセグメントのワゴン車は、ラゲッジルームの使い勝手に非常に力を注ぐようになってきた。フロアアンダーボックスはもちろん、レールやネットを駆使したり、パーテーションを設けたりと、用途に応じて使い分けられるようになった。
今回の3台も、各車にそれぞれアイデアが見られるが、ボルボに一日の長があるように思える。容量の数値では、各車ともそれなりに大きいのかもしれないが、ラゲッジの実際の形状については、アウディもBMWもタイヤハウスに食われているスペースがけっこう大きく、フロアの横幅が意外と小さいところは、ゴルフバッグ等の積載性を考えると、どうかと思う。
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