注目のプレミアム・クロスオーバーSUV 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
ストレート6と「SAV」を標榜する走り
X3はBMWらしいフロントマスクに始まり、フロントウインドウが大きく傾斜した、スポーティなSUVスタイルを持つ。ボディサイドにつまんだようなラインを入れるあたり、近年のBMW共通のモチーフも見て取れる。
あえてところどころにウレタン部分を残し、オンとオフのテイストを巧く融合させたエクステリアは、遠目にも存在感がある。
ボディの前後端にかけて絞り込んでいるため、実際のサイズよりもコンパクトに映る。全体的にスクエアなフォルムはGLKと並べるとやや小さく見えるため、取り回しやすさを想起させる。
SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)を標榜する走りは、一連のBMW車と同じく、スポーツカー的な気持ちよさを追求したことをうかがわせる。X3にはアクティブステアリングの設定はないが、やや重めのステアリングは、微少舵領域からリニアなフィーリングを示す。BMWらしく、前後重量配分をほぼ50:50とした好バランスの恩恵は、運転している間ずっと味わうことができる。
「xDrive」と呼ぶ電子制御式4輪駆動システムは、路面状況に応じて前後の駆動力を最適に配分するのが特徴。オンロードでの通常走行時にはより多くの駆動力をリヤに配分させることで、スポーティなハンドリングを損なうことなくFRに近いドライブフィールを楽しめる。
BMWの代名詞である直列6気筒エンジンは、xDrive30iの3Lユニットでは200kW(272ps)を発揮。低回転域からトルクフルで、期待どおりのシルキーなフィーリングを味わわせてくれる。トップエンドまで極めてスムーズに吹け上がり、力感も十分に備えている。
また、最近BMWでは、最小限のエネルギー消費でドライビングプレジャーを体感させるという効率の高さを謳うエンジンによる「EfficientDynamics(エフィシェント・ダイナミクス)」の概念をアピールしており、X3からもその片鱗をうかがえる。
直感する「アジリティコントロール」
現行Cクラスがベースだが、ボディサイズは、全長をCクラスよりも55mm短い4,530mmに抑えながら、全幅は1,840mmとワイド。フロントウインドウをあまり寝かせることなく、また、サイドやリアウインドウについても切り立たせ、全体をスクエアなフォルムで包みつつ、エッジを利かせたスタイリングとしている。
また、フロントマスクを見ても明らかなように、過剰なまでにメルセデスらしさを強調した印象もある。
他2台よりも低めの車高やドライビングポジションにより、そのドライブフィールからは、乗用車的な感覚を優先したことがうかがえる。「アジリティ(=俊敏性)コントロール」のコンセプトで味付けされたフットワークは、このクルマがSUVであることを忘れさせるほど俊敏で、かつ極めて軽快である。
ただし、Cクラスとの共通する点だが、ステアリングのセンター付近に、切り始めにレスポンスの遅れが認められる。また、操舵力は軽く、接地感がやや希薄な印象をうけるが、あくまで全体のスタビリティは高く、その中でアジリティを感じさせることを狙った味付けといえる。
3L V6エンジンには7速AT「7Gトロニック」が組み合わされる。フラットかつスムーズにトルクを発生するV6エンジンに多段ギアという組み合わせは、なんら不満なくこのクルマを加速させる。
4輪駆動システムには、メルセデスが誇るフルタイム4WDシステム「4MATIC」の最新仕様のものを搭載。悪路でも安定した走行を披露する。
快適性を高めることでレクサスらしさを追求
エクステリアは、SUVにありがちな泥臭さを感じさせない乗用車的な雰囲気で、先代ハリアー(2代目RX)よりもレクサスの一員としてのモチーフを随所に採り入れている。
前記2台と比べると、ボディサイズはとくに全長がだいぶ大きく、セグメントとしては上級クラスに属する。北米向けのレクサスESなどと同じ、大型FF車のプラットフォームをベースとする点と、エンジンが横置きとなる点も前記2台との大きな違いである。
定評ある3.5L V6エンジンに6速ATを組み合わせた動力性能には何の不満もない。静粛性も極めて高く、なめらかな走りには、ISやGSはおろか、LSにすら通じる雰囲気がある。
電動パワーステアリングのフィーリングにも違和感はなく、ステアリングレスポンスを過度に高めることもしていない。全体のドライブフィールについても、スポーティという印象ではなく、乗りやすさや快適性を高めることで、レクサス車として目指す世界を表現しようと努めたことをうかがわせる。
最上級グレードとなるバージョンLには、電子制御エアサスペンションが装備され、高速巡航時のフラットな走りを実現している。
後席に座ると、前記2台と同じく、クロスオーバーの宿命であるバネ下重量の重さを感じさせるシーンも多々あるが、乗り心地面で気になる部分は小さい。これだけ大きなタイヤを履けば、乗り心地の確保には苦労したと思われるものの、概ねそつなくまとめている。
デザイン・スペックの総評
スタイリングのテイストが3台でまったく異なり興味深い。いずれも自身のブランドをアピールすることを意識しているようだが、とくにGLKはやりすぎではないかと思えるほど強力。エンジンについて言及すると、GLKやRXのV6もいたってスムーズで力感も十分だが、やはり伝統の直6エンジンでないと出せないサウンドやフィーリングがX3にはある。ドライブフィールについては、快適性の高さはRXに分があるが、ドイツの2車も快適性の高さは非常に高いレベルにあることには違いない。さらにドイツの2車は、いずれもスポーティさを追求しており、その中で味付けが異なる。チューニングの方向性でアジリティを表現したGLKに対し、X3は直6エンジンや50:50の前後重量配分、xDriveなど、クルマとしての素性の部分で勝負している印象だ。やはりBMWは“走り”を意識したブランドであり、X3もまぎれもなくその一員だということをうかがわせる。
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