ヴェゼル・XVハイブリッド・ジュークNISMOを徹底比較 ~人気が上昇中のコンパクトSUV~(3/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
全長を短く抑えたSUVでありながらリアシートの居住性にも余裕がある
ヴェゼルは比較的コンパクトなSUVだが、内装は上質だ。エアコンのスイッチは流行のタッチパネル式。手探りで操作しにくい欠点はあるが、取り付け位置が比較的高いので扱いやすい。ドライバーの方に少し傾けたことも特徴だ。
エアコンスイッチの手前に備わるシフトレバーは、ハイブリッドとあって丸みのあるデザイン。フィットやプリウスなどと同様に、L字型に操作するタイプだ。さらにスポーツモードのスイッチを入れると、有段式7速ATを生かし、ハンドルに装着されたパドルスイッチでマニュアル変速をすることも可能だ。
フロントシートはサイズに余裕を持たせ、座り心地は少し硬めではあるがボリューム感を持たせた。バックレストは腰を包み込んでサポート性が良い。コンパクトSUVのシートとしては上質だ。
リアシートは頭上や足元に余裕を持たせてあり、身長170cmの大人4名が乗車しても、リアに座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ半。フロントシートの下に燃料タンクを搭載するためにツマ先が若干持ち上がるが、気になるほどではない。座面の長さも十分で、フロント側と同様に硬めではあるものの座り心地は良い。全長が4295mmのSUVとしては、車内は快適だ。
前述のように、燃料タンクがフロントシートの下にあるので、リアシートの座面を持ち上げて背の高い荷物を積むことも可能。このリアシートには小さく畳む機能も備わり、ボックス状の荷室に変更できる。駆動用のリチウムイオン電池は荷室の床下に配置されるが、ラゲッジスペースの積載容量はほとんど損なわない。
装備では、ハイブリッドXの場合、赤外線レーザーを使った時速30km以下で作動する衝突回避の支援機能、サイド&カーテンエアバッグ、横滑り防止装置などが標準装備されている。
前後席ともに居住性が優れ、精度の高い衝突回避の支援機能としてアイサイトも装着
XVハイブリッドのインパネのデザインは水平基調でシンプル。仕上げは細部まで上質で、エアコンのスイッチは比較的高い位置に装着されているため操作性も良い。メーターはハイブリッド専用となり、文字盤はブルーで鮮やかだ。
着座位置はライバル2車よりも少し低く、スポーティーな雰囲気もある。シートのサイズには余裕を持たせ、肩の周辺までサポートされて包まれる感覚だ。体が適度に沈んだ部分で支えるので、着座姿勢も乱れにくい。
リアシートの居住性も良い。身長170cmの大人4名が乗車して、リアシートに座る同乗者の膝先空間には握りコブシ2つ少々のゆとりがある。ライバル2車に比べると腰が少し下がって膝は持ち上がるが、窮屈には感じない。
注意したいのは、2.0i-Lアイサイトには運転席と助手席の電動調節機能が備わり、リアシートに座った同乗者の足がフロントシートの下側に収まりにくいこと。些細な違いに思えるが、実質的な足元空間を少し狭めている。
荷室の広さはインプレッサスポーツやノーマルエンジンを積んだXVとほぼ同じ。床下に駆動用ニッケル水素電池と制御機能を配置し、容量はほとんど妨げていない。
荷室を広げる時にはリアシートのバックレストを前に倒すだけだが、床面積は十分にあって使い勝手は良い。
装備ではアイサイトに注目。幅広い速度域で作動する衝突回避の支援機能で、2個のカメラを用いて歩行者や自転車も見分ける。また、車間距離を自動制御するクルーズコントロールの機能も備わり、高速道路などではアクセルやブレーキ操作を車両に任せて追従走行することが可能だ。
外観と同様にインパネもスポーティー、NISMOには専用タイプのシートが備わる
ジュークNISMOは外観と同様に、インパネのデザインも個性的だ。中央部分と、シフトレバーが収まる下側のセンターコンソールは、丸みのあるデザインに仕上げた。
カーナビやオーディオが収まるスペースの下には、インテリジェントコントロールディスプレイを装着。ドライブモードコントロールも備わり、NISMOの場合はターボの過給圧、CVTの制御、パワーステアリングの操舵感などをエコ/ノーマル/スポーツの3段階に切り替えられる。
NISMOではメーターのデザインも異なり、ステアリングホイールは本革とアルカンターラを用いたタイプとなり、サイズが適度で手触りも良い。
フロントシートはサイドサポートが大きく張り出していて、体をしっかりとホールドする。肩まわりの支え方も良く、スポーティーな運転にも対応できる。
リアシートは足元空間が少し窮屈だ。身長170cmの大人4名が乗車して、リア側に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ1つ半にとどまる。
もっとも、床と座面の間隔は十分に確保され、リアシートに座った乗員の足がフロントシートの下側に収まりやすい。視覚的には窮屈に感じても、実際に座ると着座姿勢にさほど無理はない。頭上の空間は狭めで、身長170cmなら頭部が天井に触れることはないがあまり余裕は無い。
荷室の床面積はコンパクトカーと同等だが、リアゲートを寝かせたために、ラゲッジルームの容量は小さい。荷物を積む時にはリアシートのバックレストを前に倒す必要がある。
リアシートの広さ、荷室の容量や使い勝手はいまひとつだが、フロントシートは快適に仕上げた。スポーティークーペに似た雰囲気を感じる。
内装・装備の総評
コンパクトサイズのSUVといっても、居住性や荷室の使い勝手には違いが見られる。フロントシートの居住性には大きな差が付かないが、リアシートが最も快適なのがヴェゼル、次いでXV、ジュークの順だ。ジュークのリアシートも同乗者の足がフロントシートの下に収まりやすく、工夫はしているが、膝先の空間は狭い。
その代わりジュークはインパネのデザインが個性的でスポーティークーペのような雰囲気を感じる。
ヴェゼルとXVは前後席ともに快適なので、ファミリーカーとしても使いやすい。ヴェゼルの居住性はフィットを上まわり、ホンダ車での位置付けとしては、今はラインナップからはずれたシビックに近いだろう。
装備ではXVのアイサイトに注目したい。カメラで遠方の状況まで検知することができ、対象物を映像としてとらえることで、ミリ波レーダーや赤外線レーザー方式と違って反射の少ない歩行者や自転車も見分ける。さまざまな衝突回避の支援機能が登場したことで、アイサイトの優位性が改めて浮き彫りになった。
ヴェゼルが設定するのは赤外線レーザーを使った市街地向け。ジュークには今のところ衝突回避支援機能は用意されていない。
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