フォーカス・ゴルフ・308を徹底比較 -オシャレで楽しい!欧州実用派5ドアハッチバック-(2/4)
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2012年の世界販売台数は100万台超。これぞ「世界で最も多く売れたクルマ」!
フォードと聞けば、真っ先に連想するのはマスタング、エクスプローラーといった大柄なアメリカ車だろう。
しかし、フォードは第二次世界大戦前から、ドイツ、イギリス、さらに日本においてもノックダウン生産を行い、グローバルな展開を図ってきた。
フォーカスはその欧州フォードに設定される主力車種で、海外では馴染み深い存在。120か国で販売されている。初代モデルの投入は1998年で、累計販売台数は1000万台以上。フォルクスワーゲン ゴルフが1974年の登場から数えて約2900万台だから、フォーカスの売れ行きはきわめて好調だ。
特に2012年の世界販売台数は102万410台に達し、「世界で最も多く売れたクルマ」として発表された。海外では人気車になる。
欧州製コンパクトカーの王道的なスタイルには、キネティック・デザインというフォードの新たなデザインコンセプトが脈打っている。キネティックとは「動的な」という意味で、車の持つ高い走行性能を具現化することが狙いだったという。確かにボディサイドのはっきりしたプレスラインには躍動感が漂う。
全幅は1810mmと少しワイドだが、全長は4370mmに収まり、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2650mmと全長の割に長い。全高は1480mmと意外に高いが、ルーフを後方に向けて傾斜させた。このデザイン手法は初代モデルからの伝統で、引き締まり感の伴う外観に仕上げている。
輸入されるグレードは5ドアハッチバックのスポーツのみで、エンジンは直噴の4気筒2リッター。最高出力は170馬力(6600回転)、最大トルクは20.6kg-m(4450回転)だから、自然吸気の2リッターエンジンとしては、動力性能が高い。
ユーザーの生活に溶け込むクルマだから、馴染みやすさを考えて外観の持ち味は6代目を踏襲
今、注目の輸入車であるフォルクスワーゲン ゴルフは2012年5月に7代目が日本国内で発売された。一番の特徴は、新たなプラットフォームを開発して「MQB」と呼ばれる手法を用いたことだ。
このプラットフォームは、小さなポロからLサイズのパサートまで用いることが可能。ホイールベースや前後のオーバーハング(タイヤからボディが前後に張り出した部分)の変更も自由自在だという。ペダルから前輪の中心点までは共通だが、そのほかは柔軟に対応できる。
メリットは共通化に基づく開発や生産の合理化だ。コストの節約が可能になり、衝突安全性の底上げ、高品質な素材の活用、安全装備の充実などを図りやすい。実際、7代目ゴルフは6代目と比べて価格を高めず、衝突回避の支援機能などを装着した。
フロントマスクなどの外観は、6代目のイメージを踏襲する。ゴルフは実用的な5ドアハッチバックの主力車種で、ユーザーの生活に溶け込んだクルマ。持ち味を変えない方が使いやすい。日本車でいえば、ワゴンRが同様の考え方に基づくフルモデルチェンジを行っている。
ボディサイズは、全長が4265mm、全幅は1800mm、全高は1460mm。全長は6代目に対して55mm伸びたが、ホイールベースも60mm長い2635mmだから、全長の拡大をリアシートの居住性に反映させた。全幅も10mm広がった。
エンジンはターボを装着した直噴式の直列4気筒。アイドリングストップと組み合わせる。排気量は1.2リッターと、新開発された1.4リッター。後者には2気筒を休止させる技術が盛り込まれ、燃費性能を向上させた。
グレードは1.2リッターがトレンドラインと、試乗車として選んだコンフォートライン。これに1.4リッターのハイラインが加わる。
プジョーの主力モデルらしく、外観には大人の落ち着いた情緒を感じさせる
フォーカス、ゴルフとくれば、欧州のライバル車として取り上げるべきはフランス車。シトロエンも魅力だが、今回はドイツ車的な雰囲気も感じさせるプジョーの308を選んだ。日本国内では2008年に発売されている。
308の位置付けはゴルフと同様で、ファミリーユーザーにも使いやすい5ドアハッチバック。今はコンパクトな新型車の208が登場したが、居住性とサイズのバランスという点では、308が中心的な存在になる。
外観では、大きなラジエターグリルと切れ長のヘッドランプが目を引く。これは近年のプジョー車の特徴だ。フォーカスやゴルフに比べるとインパクトが強く、ボディサイドにはボリュームが感じられる。
ボディサイズは全長が4315mmで、全幅は1820mm。2世代前の306までは5ナンバー車だったが、先代型の307で全幅が1700mmを上まわり、308は1800mmを超えた。この寸法が視覚的な存在感を強めた面もある。
ボディバリエーションは、5ドアハッチバックのほかにSWと呼ばれるワゴンも設定。エンジンはいずれも直列4気筒の1.6リッターだ。5ドアハッチバックにはノーマルエンジンを積んだスタイルと、直噴式のターボとなるプレミアム、シエロがある。今回試乗するのはターボモデルのシエロで、最上級グレードに位置付けられる。
日本で発売されてから5年を経るため、フォーカスやゴルフに比べると新鮮味は薄れたが、フランス車らしいデザインへのこだわりが魅力だ。フォーカスはスポーティーな雰囲気が強く、ゴルフは定番の実用指向。その点で308は、大人の落ち着いた情緒を感じさせる。
ここで取り上げた3車種は、日本のユーザーにとって馴染みやすい輸入車。価格帯もミドルサイズの国産セダンやミニバンと同等だから、輸入車でも背伸びをした雰囲気はない。誰がどの車種を選ぼうと気にする必要はないが、依然として愛車によってユーザーの性格が類推されたりする。「上質なクルマ、運転して楽しいクルマに乗りたいが、他人にとやかく言われたくない」。こう考える人にも、この3車は推奨できる。
特にフォーカスは面白い。アメリカンブランドであるフォードには、堅苦しさや気取った感じがなく、一方で欧州車としての正確なハンドリングとしなやかな足を有するなど、国境を越えた懐の深さみたいなものがある。
ボディサイズは3車とも全幅が1800mmに達する。デザインの流行を反映させて、サイドウインドウの下端は高めの設定だ。フォーカスと308はウインドウの下端が後ろに向けて持ち上がり、ゴルフはボディ後端のピラー(ルーフを支える柱)が太い。
なので全長は短いが側方や後方の視界を含めた取りまわし性は、全般的にあまり良くない。コンパクトな5ナンバー車を乗り継いできたユーザーは、購入前に縦列駐車や車庫入れを試すと安心だ。
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