フォード マスタング 試乗レポート/大谷達也(2/3)

  • 筆者: 大谷 達也
  • カメラマン:フォード・ジャパン・リミテッド
フォード マスタング 試乗レポート/大谷達也
フォード マスタング 5.0リッター Ti-VCT V8 フォード マスタング 5.0リッター Ti-VCT V8 フォード マスタング 5.0リッター Ti-VCT V8 フォード マスタング 5.0リッター Ti-VCT V8 フォード マスタング 2.3L ecoboost 画像ギャラリーはこちら

新開発の直4 2.3リッターエコブーストエンジンをラインアップ

自動車評論家の大谷達也さん

乗っても、いかにもアメリカ車らしいテイストを味わえる。

その代表といえるのがV8 5.0リッターエンジンと6ATを組み合わせたモデル。シリンダーヘッド、バルブ駆動系、吸気系などを改良した新型V8は特に高回転域での特性が改善されたというが、どこから踏んでも溢れるようなトルクを生み出すだけでなく、あらゆる回転域で滑らかさを失うことがない。また、わずかに“緩さ”を残す6ATとのコンビネーションも絶妙で、ハイウェイをゆったり流すもよし、状況が許せばシグナル グランプリに興じるのも楽しそうだ。

フォード マスタング 2.3L ecoboost

この王道ともいえるV8エンジンに加え、フォードは「エクスプローラー」や「フィエスタ」などに搭載して高い評価を得ているダウンサイジングエンジン“エコブーストエンジン”の直4 2.3リッター版を新たに開発し、6代目マスタングに搭載した。

車重2トンのエクスプローラーを排気量2.0リッターで軽々と走らせてしまうエコブーストの実力を知っていたから心配はまったくしていなかったものの、2.0リッター版を20%近くしのぐ434Nm(320lb.-ft.)の最大トルクを発揮する2.3リッターエコブーストの実力は期待どおりで、右足に力を込めれば鋭い瞬発力でドライバーの期待に応えてくれる。パフォーマンスも充分以上で、ロサンゼルスの北に位置するワインディングロードでは、前後255/40R19のピレリPゼロを何度も限界まで追い込むパワーを見せつけた。

初めてリアサスペンションに独立懸架を採用

そのハンドリングについて語る前に、新型マスタングのシャシー面での進化についてお伝えしよう。

なんと、誕生から50年を経て、リアサスペンションに初めて独立懸架が採用されたのである。いささか遅きに失した感がなきにしもあらずだが、アメリカ人は自動車の伝統的な技術に強い愛着を抱く傾向が強く、このためメーカーによってはエンジンのバルブ駆動系にいまだにOHVを採用している例もあるくらいだ。

もっとも、この点フォードは進歩的で、マスタングでも全エンジンがDOHCとなっているが、独立懸架式リアサスペンションはハンドリングと乗り心地の両立に有利なうえ、ジオメトリーを工夫すれば発進加速時のテールの沈み込み(=スクワット)を抑えることもできるなどメリットが多い。

今回も、このアンチスクワット作用を狙って独立懸架式を採用したそうだが、その効果はてきめんで、加減速を行なった際のピッチングが大幅に減少した。あわせてロールもよく抑え込まれており、ワインディングロードを攻めたときの安心感は格段に増している。

とはいえ、たとえば最新のドイツ車のように、まったく隙のないフラット感を作り出しているかというと、そうでもない。軽い“あいまいさ”を敢えて残すことで、マスタングの血筋を演出しているように思えるのだ。

だから、本当の限界走行時にはわずかにボディがふらふらっとし、ステアリングでこれを修正する必要があった。とはいえ、そんなシーンを体験することは滅多にないはず。それよりも、一定のフラット感とマスタングらしい味わいをほどよくブレンドしたこの設定を私は高く評価したい。

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大谷 達也
筆者大谷 達也

1961年、神奈川県生まれ。エンジニア職を経験後、1990年二玄社に就職し、CG編集部に配属となる。以来、20年間にわたり同誌の新車情報、モータースポーツに関する記事を企画・編集・執筆。2010年3月フリーランスとなる。現在もCGの編集・執筆業務に携わる傍ら、ENGINE、GENROQ、東京中日スポーツ新聞、レーシングオンなどにも寄稿。日本モータースポーツ記者会会員。記事一覧を見る

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