クルマでしか味わえない!辺境グルメ旅Vol.8「やきそばだけにあらず! 桜を愛でながら第二・第三の富士宮名産グルメを訪ねる」(3/3)
- 筆者: Art- Foods
- カメラマン:Art-Foods
観光ルートではないところに(こそ)光るものあり
朝霧高原道路やその周辺の観光道路と違い、ムカシからある場所に「ふじしげ」さんはあった。わざわざ調べてからでないと行けないような場所ではあるものの、イナカなのでそう難しくはない。近隣道路のポイントには誘導看板もあるのでカーナビがなくても辿り着けるとは思うが、事前に地図で確認してからの行動をお勧めする。
平成8年に現在の場所に移転した「ふじしげ」のご主人の小林繁嗣さんは、地元・富士宮の食材をこよなく愛し、それを活かす工夫をずっと続けてきた方なのだった。
お店のメニューの二本柱はニジマスとヨーグル豚で、どちらも焼そばで有名になる以前からこの地で育まれてきた食材である。これを大切にしてお客様に喜んでいただけるようにひとかたならぬ苦労をしてこられたようで、そうだからと言ってメジャーな観光地のように法外なお値段でバランスをとることはせず、ジツに真っ当な価格で提供されている姿には頭が下がる思いだ。そして先に述べた『紅鱒すし』に入っているロールも、菊の花は山形からわざわざ気に入ったものを取り寄せて使っているというこだわりなど、コストだけでなく手をかけたお料理が食すヒトの心を響かせるのだ。
法事や宴会そして仕出しが主な業務となっているというお店なので、もっと高いプライスが並んでいると勝手に想像していたが、テーブルに着いてメニューを眺めるとごくフツーなお値段に驚いてみたりもするのだな。平日ならかなりお得なランチもあるではないか。富士山が背後に控えるリッパなお店なのに意外に敷居は低くて、これならもっと気軽に利用してもよいだろう。
入口玄関脇の見事なミツマタ(和紙の原料として有名ですよね)の花が来訪する客を迎えてくれる。山に自生するミツマタはたいてい白か黄色の花を結ぶが、これは橙色と白のミックスで珍しい。さぞかしお手入れが大変でしょう?と問えば「放りっぱなしですよ」と謙遜してみせるご主人なのであった。
さてその食事だが、食べてみたかった朝霧ヨーグル豚のしゃぶしゃぶは酒も飲めない昼間ではつまらないので先送りすることにして、ガツンと昼メシらしく『とんかつ定食』にすることにした。
朝霧高原の隠れた名産「ヨーグル豚(よーぐるとん)」をとんかつで
出来上がりを待っている間お店の中をウロウロと拝見させていただいたが、テーブル席のルームには富士山の素晴らしい写真がズラリと並び観る者を飽きさせない。全日本富士写真連盟・静岡県東部支部の方々が自慢の作品を展示しているのね、こりゃ富士山好きには食事だけではないお楽しみを与えてくれるというものだ。落ち着いた和室やユトリを感じさせる吹き抜けなど、単に食事の内容だけではない悦楽があるお店なのである、なんだかいいねえ。
さあお待ちかねの『とんかつ定食』が運ばれてきた。「ご飯をお代わりしてくださいね」と優しいお言葉を下さったのはご主人の奥様である。一膳でちょうどよい加減のエロおやぢであるが、モリモリと大喰らいの向きには有難いサービスだ。
ウワサの朝霧ヨーグル豚は軽くサッパリした脂質なのに味わい深い肉質で、ほっくりとした柔らかさが印象的である。
サクサク熱々のロースかつをほおばるシアワセは何物にも替え難いが、そのボリュームにも満足で、これぞプロフェッショナルのシゴト!という上質な定食だ。たっぷり高原野菜のサラダ、三種のプレートにはニジマス南蛮・お漬物・鮪の角煮・味噌汁はなんと富士宮特産のナメコがフィーチャーされていてヨロコビ三重マルである。とてもこれが¥1500でいただける食事だとは思えない。
さきほど道の駅で購入した「紅鱒すし」はお店でも当然食べることができるので、複数でお邪魔できるのならばぜひシェアして、その美味しさを堪能していただきたい。
あっ、朝霧ヨーグル豚の「しゃぶしゃぶ」も、忘れちゃいけないよね。
■住所:静岡県富士宮市上井出2324-3/電話:0544-54-0848/営業時間:11:30~14:30、17:30~ 21:00/定休日:水曜及び火曜日の夜の部
肝心の桜はどうなった
あ~喰った喰った…さてお家に帰ろうか、ではない。本日のモクテキである桜はどう なったのかいな~なのよね。
ヒミツのスポットは「ふじしげ」さんからクルマで三分、あまりに都合の良すぎるスケジュールのはずだったが、まあ世の中そう甘くはないのである。行ってみれば未だ 一輪も開花していないではないか(※取材日は3月下旬)。昨年は見事な満開桜並木の中をメガーヌを走らせて調子にのってみせたりもしていたのに、今年は少しアセりすぎて勇み足だったようだ。ただ枝先はすっかり紅くなっていてツボミも膨らみ切っている。開花するのもあ と数日、遅いと言われた今年の桜もここにきてすっかり例年並みに追いついたようだ。
もうちょっとなんだけどな…ココはぜひ数日後の再訪を宣言して欲求不満の解消に努めるのである。つまりそのままスゴスゴと家に帰るのもナニだし、第一カラ振りなん て口惜しいじゃないのよ…とそのまま市街地まで下って、富士宮浅間大社まで行った。もうそこはすっかりニッポンの桜の世界が出来上がっているのを知っていたからね。
葉桜になりかけの早咲き系から満開の枝垂れ桜、そしてこれから満開を迎えるソメイ ヨシノまで種類の多さが自慢の境内は花期が長いのも嬉しいではないか。
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