直3 1.5リッターターボ搭載の新型「BMW 318i」はカジュアルに楽しめる通好みの3シリーズだ[試乗]
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
2016年10月、BMW 3シリーズの新たなラインナップとして、直3 1.5リッターガソリン直噴ターボの新世代モジュラーエンジンを搭載した「318i」が追加された。パワーや騒音の面で不利な小排気量エンジンを高級スポーツセダンの3シリーズへ搭載するにあたり、BMWはどう仕上げてきたのか。試乗レポートを届けてくれたのは自動車評論家の渡辺陽一郎さん。直4 2.0ターボ「320i」との違いなど、気になるあれこれについて、徹底解説してくれた。
往年の高級セダンを想わせる通好みなベーシックグレードの登場
プレミアムブランドとされる今の欧州車は、小排気量ターボが普及したこともあり、動力性能を全般的に向上させた。しかし1980~1990年代は、ベーシックなグレードには少し非力なパワーユニットを組み合わせていた。例えば当時のW124型メルセデス・ベンツ ミディアムクラス(マイナーチェンジ時に「Eクラス」名へ変更)に用意された230Eは、直列4気筒の2.3リッターを積む。最高出力は135馬力程度だが、エンジンが軽いために6気筒の300Eなどに比べると操舵感が軽快で、動力性能とシャシー性能のバランスも後者が勝っていた。上質で安心感の伴う独特の運転感覚が特徴で、通好みのグレードだった。
BMW3シリーズは、古くから直列4気筒の2リッターが主力。排気量には比較的余裕があったが、最高出力は130~150馬力程度だ。ターボを装着した今日の320iは184馬力だから、やはり当時は動力性能が抑えられていた。
しかし実際に運転すると、動力性能の数値の割に、加速力は活発であった。ボディが軽かったこともあるが、高回転域までしっかりと回り、性能をフルに発揮する楽しさを併せ持つ。排気量をむやみに拡大せず、エンジン性能を合理的に活用する考え方は、今日の小排気量ターボに通じているように思う。
直3 1.5リッター直噴ターボの新世代モジュラーエンジンを搭載
新しい318iが搭載するエンジンは、直列3気筒の1.5リッターターボだ。BMW2シリーズアクティブツアラー、BMWミニなどに幅広く使われる新世代モジュラーエンジンになる。吸排気バルブのタイミングを無段階に調節するダブルVANOSなど、数多くのBMWに使われるメカニズムを採用した。
最高出力は136馬力(4400回転)、最大トルクは22.4kg-m(1250~4300回転)なので、ターボを装着しない自然吸気エンジンに当てはめると最高出力は1.8リッタークラス、最大トルクは2リッターを少し超える水準だ。
318iはセダンとツーリング(ワゴン)の両方に設定され、グレードは318i SE(スタンダード)/318i/318i Sport(スポーツ)/318i Luxury(ラグジュアリー)/M Sportの5種類になる。
318iセダンの車両重量は1550kgで、直列4気筒2リッターターボの320iに比べて30kgほど軽い。試乗車はセダンの318i Luxuryであった。
高回転型ではないが軽快でメリハリの効いたエンジン性能
試乗を開始して気付いたのは、エンジンのノイズが意外に大きく響くことだ。3気筒エンジンの宿命でもあるが、320iとの違いは小さくない。今のBMWでは、320dが搭載する2リッターのクリーンディーゼルターボが大幅に静かになったから、ラインナップされるエンジン同士の相対評価でも、1.5リッターターボのノイズは不利になる。
最高出力は前述のように4400回転で発生する設定で、ガソリンエンジンとしてはかなり低い(ディーゼルの320dが4000回転)。しかし吹き上がりは軽快で、5000回転を超える領域まで機敏に回る。
高回転域まで回しても性能的なメリットは乏しいが、峠道などを走ると、シフトアップ/ダウンを頻繁には行いたくない。最高出力の発生回転は低くても、318iなら幅広い回転域を使えるガソリンエンジンのメリットを十分に味わえる。
またATは320iなどと同じ8速タイプだから、走行状態によっては高回転域を維持できる。これもパワーを出し切る上でメリットになる。CVT(無段変速AT)でも高回転域を保てるが、エンジンがアクセル操作にダイレクトに反応するメリハリの良さは、有段式ATならではの魅力だ。
2リッターターボと比べた時の動力性能や加速性能の受け取り方は、ユーザーによって異なるだろう。先に述べた1980~1990年代の小排気量車が好きなユーザーなら、エンジンをフルに回すことが楽しく感じると思う。
高レベルな走行性能ゆえ、動力性能にはやや不満も残る
逆に優れた走行安定性とのバランスを考えると、318iは少し性能不足で、320iがちょうど良いという見方も成り立つ。
走行安定性は、320iに比べてボディが若干軽いこともあり、軽快感がさらに向上した。ハンドルを少し切った時から車両の向きが忠実に変わり、ドライバーが一体感を得やすい。十分な走行安定性を確保しながら、カーブを曲がる時には操舵角に応じて車両が確実に回り込む。後輪駆動による前後輪の優れた重量バランスと、それを実感させる正確な運転感覚は3シリーズのメリットで、318iでも十分に実感できた。
乗り心地はグレードによって異なるが、318i Luxuryは17インチタイヤ(225/50R17)を採用しており、粗さを感じさせない快適性が特徴だ。タイヤの銘柄はブリヂストン ポテンザS001で、指定空気圧は前輪が220kPa、後輪が240kPaとなる。タイヤのサイズと銘柄(ポテンザS001はスポーツ指向のタイヤでも乗り心地に配慮したバランス型)、指定空気圧などが適度で、走行安定性と乗り心地を高い水準で両立させた。
ちなみに最近のミドルサイズのスポーティーカーは、日本車、輸入車を問わず18/19インチタイヤを積極的に採用するが、バランスの良くない車種も多い。だからといって16インチではグリップ性能が不足しやすい。318i Luxuryの17インチは、車両重量が1300~1500kg前後の車種では、ベストなサイズといえるだろう。
318iの気になる燃費、そしてコストパフォーマンスはどうなのか
318iの価格は318i SEを409万円に抑え(ただしレーンディパーチャーウォーニングなどが省かれるので推奨できない)、試乗した318i Luxuryで489万円になる。320i Luxuryの552万円に比べて63万円安い。
318iではストップ&ゴー機能付きアクティブクルーズコントロールが、全車にわたり非設定になってしまう。この点は残念だが、そのほかの装備は320iとほぼ同じだから、価格差を考えると318iを若干割安にしたようだ。
従って318iは、前述のエンジンノイズと、渋滞を含む高速道路での移動に便利なアクティブクルーズコントロールの未装着が気にならなければ、3シリーズの買い得モデルといえるだろう。特に、市街地の移動を主な用途とするユーザーなら、動力性能にも不満はないと思う。
JC08モード燃費はセダンが17.2km/L、ツーリングが17km/Lだから、320iの16.0km/L・15.4km/Lよりも8%ほど優れている。プレミアムガソリン仕様ではあるが、燃料代は妥当な範囲に収まる。BMWは新型318iを、馴染みやすいカジュアルな3シリーズに仕上げた。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正]
BMW 新型3シリーズ「318i Luxury」[直3 1.5リッター ガソリン直噴ターボエンジン搭載] 主要諸元
全長x全幅x全高:4645x1800x1440mm/ホイールベース:2810mm/車両重量:1550kg/乗車定員:5名/駆動方式:後輪駆動(FR)/エンジン種類:直列3気筒 DOHC BMW ツインパワー・ターボ・ガソリン直噴エンジン/最高出力:136ps(100kW)/4400rpm/最大トルク:22.4kg-m(220N・m)/1250-4300rpm/トランスミッション:ステップトロニック付 8速オートマチックトランスミッション/燃料消費率:17.2km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:(前)(後)225/50R17/メーカー希望小売価格:4,890,000円[消費税込み]
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。