マイナーチェンジで魅力を大いに高めたアウディ 新型 A3セダン 1.4 TFSI Sportに試乗
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
アウディのコンパクトセダン「A3セダン」と5ドアハッチバック「A3スポーツバック」が2017年1月、マイナーチェンジを実施した。扱いやすいボディサイズで支持を集めるA3シリーズだが、フロント周りなどが最新のアウディモデルに準じたデザインに刷新されたほか、ラインナップもさらに拡充している。今回の変更で新たに追加された“sport”(スポーツ) グレードのA3セダンに自動車評論家の渡辺陽一郎さんがさっそく試乗。その印象を語ってくれた。
ドイツプレミアム御三家の注目株、アウディ
ドイツのプレミアムブランドと呼ばれるクルマは、いずれも存在感が強い。それはメリットであると同時に、ユーザーによっては心理的な抵抗を生み出す場合もある。
例えばメルセデス・ベンツは、フロントグリルに大きなエンブレムを掲げる。上級ブランドだとひと目で分かるためか、追い越し車線に乗り入れると、前方を走る車両が即座に道を譲ってくれたりする。「気分がイイじゃないか」と考えるユーザーがいる一方で、周囲のクルマを威圧するような感覚を好まない人もいるだろう。
BMWはスポーティーなブランドとして認知されているから、オーナーは「典型的なクルマ好き」と見られやすい。プレミアムブランドの受け取り方は人によってさまざまだが、乗っているクルマによってユーザーの性格まで類推される面がある。それを煩わしく感じる人は少なくないと思う。
その意味で注目されるのがアウディだ。
A3セダンは日本の道路環境にも適したボディサイズだ
アウディはフロントマスクに大きなシングルフレームグリルを採用したことで、以前よりは目立つようになったが、メルセデス・ベンツやBMWに比べるとまだ控え目だ。「良いクルマには乗りたいが、あまり目立ちたくない」と考えるユーザーには、ちょうど良いデザインだろう。
アウディの主力は、2016-2017日本カー・オブ・ザ・イヤーでインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、内外で既に高い評価を集めるA4のセダンとアバント(ステーションワゴン)だが、狭く常に混雑する日本の道路環境では、ひとまわり小さなA3が使いやすい。しかもA3はサイズがコンパクトでありながら、4ドアセダンも用意している。
A3セダンのボディサイズは、全長が4465mm、全幅は1795mmだ。全幅はA4の1840mmに比べると狭いものの、BMW3シリーズやメルセデスベンツCクラスと同程度。つまり少しワイドだが、全長は輸入セダンの中では最小クラスで(ホンダ グレイスと同等)、この大きさはアウディの控え目な雰囲気にも合っている。
2017年1月のマイナーチェンジでA3シリーズの安全装備が大幅に充実した
現行A3の発売は、5ドアのスポーツバックが2013年、セダンは2014年だが、2017年1月には両モデル同時でマイナーチェンジを受けた。ミリ波レーダーとカメラを使う緊急自動ブレーキの「アウディプレセンスフロント」、車間距離を自動制御できる「アダプティブクルーズコントロール」(ACC)を全車に標準装着している。
4WDのクワトロには、新開発された「Bサイクル」の2リッターターボを搭載した。装備ではハンドルの奥側に12.3インチのモニター画面を備えたバーチャルコックピットを採用して、カーナビを含めた各種の情報を表示できる。
注意したいのはセーフティパッケージのオプション設定が、2017年の夏以降に開始されることだ。このパッケージには後方の並走車両を検知するサイドアシスト、車線逸脱時の修正操舵を支援する「アクティブレーンアシスト」、渋滞時のクルーズコントロールによるアクセル/ブレーキに加えてステアリング制御を積極的に行う「トラフィックジャムアシスト」などが含まれる。安全性と快適性が高まり、オプション価格は13万円に抑えたので、なるべく装着したい。
FFモデル、A3セダン 1.4 TFSIの仕上がりはどうか
改良を受けたA3セダンはどのような仕上がりなのか、1.4TFSI スポーツを試乗した。
スポーツは今回の一部改良で追加されたスポーティな仕様。1.4TFSI スポーツは前輪駆動(FF)モデルだ。
エンジンは以前と同じく直列4気筒1.4リッターのターボを搭載する。VW(フォルクスワーゲン) ゴルフ ハイラインやパサートなどと基本的には共通だが、動力性能は少し抑えた。VWは2.5リッターに匹敵するが、A3セダンは最高出力が122馬力(5000~6000回転)、最大トルクは20.4kg-m(1400~4000回転)だから2リッタークラスになる。
それでも実用回転域の駆動力が高く、アクセル操作に対する反応は自然な印象だ。ターボの装着をほとんど意識させず、上質な自然吸気エンジンに近い感覚で運転できる。
今回の変更で新たに追加された“sport”(スポーツ)
タイヤサイズは17インチ(225/45R17)で、銘柄はミシュラン プライマシー3。指定空気圧は前輪が250kPa、後輪は230kPaだ。
タイヤサイズからは少し硬めの乗り心地が想像されるが、試乗するとちょうど良い印象で、市街地でも路上の細かなデコボコを伝えにくい。全長が4.5mを下まわるセダンとしては快適に仕上げた。
操舵感は17インチタイヤの装着も影響して、以前に比べると若干機敏だ。直進状態から少し転舵した時でも、車両の向きが変わりやすい。BMWなどに比べると反応は穏やかだが、従来のアウディとは印象が少し違う。
走行安定性は後輪がしっかりと接地するアウディらしい設定で、直進時、旋回時ともに安心感が高い。峠道などを走った時に曲がりやすい性格ではないが、リラックスした運転を楽しめる。幅広いユーザーに適した設定だ。
コンパクトゆえ、後席の居住性は必要最小限に留まる
居住性だが、前席については快適。座り心地は適度に柔軟で、背中から腰、大腿部をしっかりとサポートする。着座姿勢が安定する一方で、体が過度に拘束される感覚はなく、快適性と両立させた。
いっぽう後席は頭上の空間が狭い印象。
全高は1390mmにとどまり、リアウィンドウを寝かせたことも影響した。5ドアハッチバックのA3スポーツバックに比べると、頭上空間は25mmほど不足している。
後席は足元空間も広くはない。
身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ1つ半だ。それでも床と座面の間隔が相応に確保されるから、腰が落ち込む着座姿勢にはなりにくい。後席に座る乗員の足が前席の下に収まることもあり、広くはないが4名乗車には対応できる。
A3セダン FFモデルのJC08モード燃費は19.5km/Lと優秀
新型アウディ A3セダン、FFモデルの価格は、ベーシックな1.4TFSIが311万円、試乗した1.4TFSI スポーツは347万円だ。後者はアルミホイールとタイヤのサイズが16インチから17インチに拡大され、スポーツシートやタイヤ空気圧の警報機能も備わるが、実用的には1.4TFSIでも十分。前述のように安全装備のアウディプレセンスフロントなどは全車に標準装着されている。
カーナビなども備わるとはいえ、300万円を超える価格は割安ではないが、A4のセダンとアバントは1.4TFSIが447万円、1.4TFSIスポーツは478万円に達する。A3セダンは130万円ほど安く、プレミアムブランドのセダンでは求めやすい。JC08モード燃費が19.5km/Lに収まることもメリットだ(ただし使用燃料はプレミアムガソリン)。
少し地味めだけど・・・検討する価値の高い、新型アウディ A3セダン
アウディの主力は今でもA4だが、近年のドイツ車は全般的にボディが肥大化した。今のA4は一時代前のA6並みに大きい。メルセデス・ベンツ Cクラス、BMW 3シリーズも、もはや日本の交通環境にピッタリなサイズとはいい難い。
その意味でアウディ A3セダンは、以前のA4に近い感覚で使える。アウディの販売店で聞いても、2世代前のA4セダンからA3セダンに代替えするケースが多いという。2世代前のA4は全幅が1770mm前後だったので、運転感覚としては、現行A4セダンよりA3セダンが馴染みやすいのだろう。
最近のドイツ製セダンの大型化と高価格化に疑問を持つユーザーにとって、A3セダンは少々地味ながらも検討する価値の高い車種だと思う。近年のドイツ車の欠点を、ある程度まではカバーできている。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正]
Audi New A3 Sedan 1.4 TFSI Sport[FF] 主要諸元
全長x全幅x全高:4465x1795x1390mmmm/ホイールベース:2635mm/車両重量:1330kg/乗車定員:5名/駆動方式:前輪駆動(FF)/エンジン種類:直4 DOHC インタークーラー付ターボ 直噴ガソリンエンジン/総排気量:1394cc/最高出力:122ps(90kW)/5000-6000rpm/最大トルク:20.4kg-m(200N・m)/1400-4000rpm/トランスミッション:7速 Sトロニックトランスミッション/燃料消費率:19.5km/L[JC08モード]/タイヤサイズ:225/45R17/車両本体価格:347.0万円[消費税込み]
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