自動ブレーキはローダウン大丈夫? C-HRやWRXで驚きの結果が!
- 筆者: 国沢 光宏
「自動ブレーキ付きのクルマに車高調整式のサスペンションを組み合わせると問題が出る、と言われていたのでレーザー+カメラ式のセンサー使うヴォクシーの『セーフティセンスC』で実車テストしてみたら正常に作動しました」、とオートックワンでレポートしたところ「他のシステムならどうか?」。
そうでしょうね! 今や一番高い評価を受けているスバルの『アイサイト』や、センサー的に気むずかしいと言われているレーダーを使う『セーフティセンスP』なども気になると思う。ということで追加テストを行ってみました。果たしてステレオカメラ式や、レーダーセンサーはどうか。
テストに使ったのは、4月にベストセラーカーとなった『トヨタ C-HR』と、アイサイト3の『スバル WRX S4』。写真を見て頂ければ解る通り、C-HRは100%ノーマル車両。WRXS4もノーマル車にしようと考えたのだけれど、アイサイトの場合すでにTEIN製車高調整式を組んでいるクルマが多数。
それでいて問題出ていない。ということで、国際格式のラリー用ダンパーや、公道で走れないほど極端な車高下げまで試してみた。加えて砂利道仕様のラリー車のため、ブレーキも競技規則に合わせ前後共に標準車と全く違う。むしろアイサイトが稼働する方が凄いという状況である。
まずはC-HRを試す。テスト項目は前回のヴォクシーと同じ。
(1)標準車高
(2)極端なローダウン
(3)極端な前下がり姿勢
(4)極端な前上がり姿勢
(5)TEINの推奨車高
テスト速度も前回と同じく、停止しているダミー(レーダーを反射する金属を裏側に貼ったもの)に対しブレーキ掛けず30km/hで接近。停止出来るかをチェックした。標準車から試すと、当然のことながら何の問題も無く自動停止。2回試すも、安定した制動状況で信頼性高い。
続いて極端なローダウンを試すと、全く自動ブレーキは稼働しない。ダミーを認知すると警告音が鳴るのだけれど無反応。当然ながらブレーキも掛からないため、ダミーを壊さないようブレーキペダル踏む。やはりレーダー+カメラ式は気むずかしいセンサーなのだろうか、と思う。
試しに少しバックして再テストすると、今度はセンサーが稼働。ギリギリで停止した。どうなっている?
3度目にトライしたら、何と標準車高と同じタイミングで停止。4度目から安定して停まる。その後、何度かテストすると、全て問題無し。1度目と2度目だけ妙だった。
そこで「もしかして車高の学習制御をしているのか?」と仮説を立て、極端な前下がり姿勢でTEINの駐車場内を500mくらい走ってからダミーに向かってみた。すると意外なことに全く問題無く停止。「それでは」と極端な前下がり姿勢にして500m走らずダミーに向かったら、センサー稼働せず。
自動車メーカーは何も情報を出していないが、どうやら車高の学習制御を行っているようである。では、ということでTEINの推奨車高のテスト前に、交換後一般道を500mくらい走ってダミーに向かう。全ての仮説が正しければ安定して止まるハズ。ということでテストすると、安定して停止。
ということで車高を変えたら500mくらい走って学習させるだけで、セーフティセンスPは作動すると判明。交換直後だけ気を付けて頂ければ、と思う。それにしても新しい発見でした。こういった特性、実際にテストしてみないと全く解らないこと。
お次はラリー車のWRXS4を試してみよう。
国際ラリー用の車高調を標準車高にセットして試すと、ダミーから20cmくらいの距離で停止。標準的なアイサイト3ならダミーの手前1mくらいで止まる。ブレーキ関係が全て違うため(砂利道用ラリー車のブレーキはローターもキャリパーも標準より小さい)、その関係で作動が遅れるのだろう。
続いて様々な車高を試してみたら、興味深いことに安定して20cm±5cmくらいで停止する。見ただけで「ほとんどレース車両ですね!」と思う極端なローダウンすら同じ。それだけアイサイト Ver.3の制御が精密だということなんだと思う。もちろん車高の変化にも強く安定していた。
レーダー+カメラのセーフティセンスPも、ステレオカメラ式のアイサイトも、車高による自動ブレーキ性能の差は無かった。ちなみに自動ブレーキの性能について自動車メーカーも保証をしていない。今回のテストも、“自動ブレーキの性能や稼働を保証しているわけではない”ということを追記しておきます。
もう一つ。レーダーでもカメラでも激しい上下動(乗り心地が悪い、ということ)をするダンパーはセンサーの性能を大幅に落とすと思う。極端に乗り心地の悪いダンパーについていえば、正常に稼働するか解らない。今回使ったTEINの車高調整式とラリー用は問題無く稼働した。
[Text:国沢光宏]
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