スバルはランクル級SUV“アセント”を日本で販売する可能性はあるのか

スバルはランクル級SUV“アセント”を日本で販売する可能性はあるのか
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最上級SUV「アセント」国内販売へ、その可能性の裏にあるトライベッカの存在

スバル 新型アセント(北米仕様)スバル 新型アセント(北米仕様)

今年4月の米ニューヨークモーターショー以降、「新型SUVのアセントを日本でも発売して欲しい」という声が、全国のディーラーやユーザーのあいだで高まっている。当然、こうした声は、営業本部がある東京都渋谷区恵比寿のスバル本社ビル、さらには群馬県太田市の開発本部にも伝わっている。

そのうえで、私は強く言いたい。「スバルは、アセントを日本で売るべきだ!」。

そう言い切れる理由は、スバルがこれまで行ってきた上級SUVへの挑戦を、私自身が長年に渡り肌身で感じてきており、いまこそ日本導入のタイミングであると思うからだ。

新型アセントは、スバルの商品ラインアップで最高峰となる高級SUVで、2018年から北米での発売が確定している。

北米市場を“生業の柱”としているスバルにとって、新型クロストレック(日本での新型XV)、フォレスター、アウトバックと続くクロスオーバー系SUVの、さらに上となるモデルの必要性は以前から指摘されていた。

いや、正確にいえば、アウトバックの上位に位置する、上級SUVとしてトライベッカがあった。しかし、スバルはこの領域について大きな悩みをかかえており、その悩みを象徴するのがトライベッカであった。

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スバルがアメリカを目指し始めた頃

スバル B9トライベッカ前期モデルスバル トライベッカ 後期モデル

時計の針を少し戻そう。

2000年代前半、スバルというクルマは、「変わった商品性が好きな人だけが買うクルマ」または「雪国での生活四駆として買うクルマ」といった商品だった。これは、日本でも、欧州でも、アメリカでも同じだった。そうしたなか、経営戦略で「アメリカシフト」を打ち出し、商品企画の主体もアメリカとした。そのなかで生まれたのが、B9 トライベッカだった。

背が高く大柄なSUVが、低重心の水平対抗エンジン搭載により、スイスイと走る。そんな気持ち良さがアメリカでも受けるはずだ。スバルはそう思った。

私は2005年、北カリフォルニアで開催されたB9 トライベッカ試乗会に参加した。走行ルートはサンフランシスコ市街地を出発し、カリフォルニアワインの産地であるソノマバレーを目指した。

確かに、B9 トライベッカの走りは軽快だった。3リッター6気筒エンジンを搭載しているとは思えぬような、取り回しの良さを感じた。だが、インテリアの質感がイマイチ。当時のスバルとしては、あれが精一杯だった。

そして、なんといっても印象的なのは、フロントマスクだ。スバルの象徴である六連星から左右に大きく羽を広げたイメージ、というデザインコンセプトだった。なんともユニーク、なんとも可愛らしい顔立ちという声がある一方で、「豚の鼻っぽくて変だ」というネガティブコメントも多かったのが事実だ。

あえなく、2年程してビックマイナーチェンジ。「豚の鼻」はなくなり、車両名称もB9がなくなりトライベッカとなった。見た目は、フォードエクスプローラーのような、またはGMシボレー系のような、またはクライスラーのような、なんとも中途半端な雰囲気に成り下がってしまった。

スバルとしては、北米市場向けとして、アウトバック・レガシィを中核として、フォレスターを強化することを第一として、インプレッサがトヨタ カローラのようにアメリカ人の定番Cセグメントになるよう、アメリカ現地の声を徹底的に洗い出して商品改良を続けていった。

そうした日常業務において、トライベッカを根底から造り変えようという“心の余裕”が、スバル営業本部・開発本部ではなかなか生まれなかった。

トライベッカとは、ニューヨーク・マンハッタンの一角を指す名称だ。スバルとしては「なんとか都会派っぽい上級車を世に送り出したい」と、背伸びをしたような、そんなネーミングだった。

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スバルが日本でも攻める機は熟した

スバル 新型アセント(北米仕様)

周知の通り、スバルはいま、アメリカ人にとって“あこがれの1台”とされるブランドに成長した。商品改良と“LOVE”を強調したマーケティング戦略などが奏功し、スバルはアメリカで大成功を収めている。販売台数では、メルセデスやBMWと互角に戦い、日系ではトヨタ・ホンダ・日産のビック3を追撃する位置にまで躍進している。

こうした日系のトップブランドとして、いまこそ最上級SUVをラインアップするべき時期である。しかもそれは、日本市場において、BMWやメルセデス、そしてレクサスと対等に戦えるだけの、本物の上級車であるべきだ。

2000年代、アメリカを事業の主軸に置くとして、ある意味で“日本市場を見切ったかたち”となったスバル。当時、そうしたスバルの戦略に対して皮肉たっぷりの記事に書く自動車評論家が多くいた。

その後、日本市場を大切に考えた商品としての、レヴォーグの登場。さらに直近では、Cセグメントの世界標準にもなり得るインプレッサが誕生し、スバルに対する評論家陣営からのネガティブコメントがすっかり消え去った。

大きく変貌し、さらなる高見を目指すスバル。単なるアメ車SUVの逆輸入としてではなく、正々堂々とした次世代スバルの最上級車として、アセントは日本国内で正式発売されるべきだと強く思う。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

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