日産 セレナe-POWER最新情報|セレナ初のフルハイブリッド、気になる燃費や価格を徹底評価(1/2)

2018年3月1日、日産 セレナe-POWERがいよいよ発売開始

2018年2月28日、日産の人気3列シートミニバン「セレナ」に、待望のフルハイブリッドモデル”セレナe-POWER”が登場した(発売日は2018年3月1日)。

コンパクトカーのノートに続くe-POWER第二弾となるセレナe-POWERは、東京モーターショー2017や東京オートサロン2018会場などで先行公開され、正式発売が待たれていた。ライバルのトヨタ ヴォクシー/ノア/エスクァイアやホンダ ステップワゴンなどのハイブリッドモデルとはどこがどう異なるのか。また従来のセレナSハイブリッドからはどう進化を遂げたのか。そして気になる燃費は!?

国産車を隅々まで熟知する自動車評論家、渡辺陽一郎さんが、日産 新型セレナe-POWERを詳細に解説する!

[※2018年2月28日午前10時記事更新]

セレナe-POWERの燃費はクラスTOPの26.2km/L、価格は296万8920円から|ハイブリッド比率の高い日本向けに特化

今の国内市場では、ハイブリッド車の比率が約20%に達する。全体の35%を占める軽自動車に(簡易なマイルドハイブリッド方式は勘定に含めないとして)ハイブリッドは用意されないと考えると、小型/普通車に占めるハイブリッド比率は非常に高い。

また今の日本車メーカーは世界生産台数の80%以上を海外で売り、日本国内は20%以下だが、ハイブリッドに限ると比率が変わる。トヨタは世界中でハイブリッド車を売っている印象だが、実際は生産総数の約50%を日本国内で売る。軽自動車やミニバンほどではないが、ハイブリッドは日本向けの商品だ。

この販売動向を受けてヒットしたのが、日産のコンパクトカー「ノートe-POWER」であった。

ノートe-POWERはハイブリッド車だが、直列1.2リッターの3気筒エンジンは発電機の役割のみを果たし、エンジンを直接には駆動しない。駆動自体は電気自動車のリーフと同じモーターが担当する仕組みだ。つまりリーフの駆動用電池を、1.2リッターエンジンと燃料タンクに置き換えたのが、e-POWERのメカニズムと考えれば良いだろう。

シリーズ方式(エンジンが直接駆動しない直列型)のハイブリッドだが、電気自動車に準じる技術と宣伝されて人気を得た。

ノートe-POWERのヒットもあり、2018年2月28日、ミニバンの人気モデル「セレナ」にもe-POWERが設定された。クラスTOPの低燃費26.2km/L(JC08モード燃費)を達成している。セレナe-POWERモデルの価格は296万8920円から340万4160円(価格は全て消費税込み)。

>>セレナe-POWERはノーマルのセレナとどこが違う!?[フォトギャラリー 画像150枚超!]

これまでのセレナ Sハイブリッドとe-POWERとはどこがどう違う!?

ちなみにセレナは以前からスマートシンプルハイブリッド(Sハイブリッド)を採用したが、これは簡易型、いわゆるマイルドハイブリッドだ。

セレナSハイブリッドはECO(エコ)モーターが、減速時の発電/アイドリングストップ後の再始動とエンジン駆動の支援を行うが、モーターの最高出力は2.6馬力と小さい。JC08モード燃費も売れ筋グレードで16.6km/Lだ。燃費・価格を含めて、ノーマルエンジンを搭載したライバル車のトヨタ ヴォクシー/ノア/エスクァイア、ホンダ ステップワゴンと同程度になる。

ライバルのミニバンは、ノーマルエンジンとは別にハイブリッドモデルを用意し、より低燃費を誇っていた。26.2km/Lを達成したセレナe-POWERこそが、ようやく本当のハイブリッドと言えるモデルとなる。

セレナe-POWERのハイブリッドシステムはどんな仕組み!?

500kg重くてもノートe-POWER同様の3気筒1.2リッターエンジンで大丈夫な理由

セレナe-POWERのメカニズムは、基本的にはノートe-POWERと同じだ。発電機を作動させる直列3気筒1.2リッターエンジン、駆動用モーター(ノートe-POWERや先代&現行リーフと同じEM57型)、駆動用リチウムイオン電池、制御システムなどによって成り立つ。

ただしセレナe-POWERは背の高いミニバンで車両重量も1700kgを超えるため、ノートe-POWERに比べて約500kg重い。ノートe-POWERのユニットをそのまま移植したのでは動力性能が不足するから、各機能の性能を向上させた。

発電に使われるエンジンは、オイルクーラーも追加されて最高出力を84馬力とした。ノートe-POWERの79馬力に比べると5馬力勝り、最大トルクは10.5kg-mで同じだ。いっぽうで駆動用モーターは最高出力が136馬力で、最大トルクは32.6kg-mとなる。ノートe-POWERは109馬力/25.9kgーmだから、セレナe-POWERは125%に増強された。駆動用リチウムイオン電池は容量が1.8kWhで、これもノートe-POWERの120%に相当する。

このようなチューニングが可能なことも、シリーズハイブリッド方式の特徴だ。同じエンジンやモーターを使いながら、駆動用電池の容量や制御方法を改善して性能を向上させることが可能だ。新型リーフも先代型と同じモーターを使いながら、性能を大幅に向上させた実績もある。

S/ECOモードでは”ワンペダル”ドライブも楽しめる

ノートe-POWERと同様に、セレナe-POWERはS/ECOモードを備えることも特徴だ。

このモードを選ぶと、アクセルペダルを戻せば即座に強めの回生充電が開始され、減速エネルギーを使って駆動用電池に電気を積極的に蓄える。アクセルペダルからブレーキペダルへの踏み換え回数が70%減るというデータもあり、効率を高めると同時に(ブレーキパッドの摩耗も抑えられる)、アクセルペダルだけで速度を自由に調節することが可能だ。

日産ではプレスリリースなどで”ワンペダル感覚の運転”と表現している。

そしてエンジンは発電機の作動に使われ駆動はモーターが担当するから、加速が静かで滑らかになる。遮音性能を高めたこともあり、発進加速は日産の上級ミニバンのエルグランドよりも静かで、時速50キロに達してもノイズが少し増える程度だ。

深夜の住宅街でも安心なEV走行モード”マナーモード”が追加

このほか、ノートe-POWERには採用されていないマナー/チャージモードもセレナe-POWERには新設された。

マナーモードはトヨタのハイブリッドに用意されるEVドライブモードに似た制御で、エンジンを停止させたモーター走行を積極的に行える。静かに走るから、深夜の車庫入れなどに適する「マナー」モードとした。

チャージモードはプラグイン(充電の可能な)ハイブリッド車に多く見られる機能で、ハイブリッド車には珍しい。セレナe-POWERの場合、駆動用電池が約90%充電されるまでエンジンを作動させる。走行中にチャージモードで充電した後、マナーモードを使えば、エンジンを作動させない静かな走行をフルに行える。

>>セレナe-POWERの価格・おススメグレードは!? ノーマルモデルとの損得勘定もチェック[次ページ]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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