新しい燃費基準『WLTC』とは?2018年10月から全面導入される新基準とJC08モードの違いを徹底解説!

クルマの燃費計測方法と表記が新しくなる

自動車の燃料消費率を表す“カタログ燃費”。全てのクルマが一定の定められた方法で測定しているため、ある程度の目安にはなるものの、そこまでの数値が出るとはだれも思っていないのが実情だ。
新車販売の商談のシーンでも「このクルマのカタログ燃費は〇〇km/Lなので、それの60~70%くらいが実燃費です」というような会話が繰り広げられているほど。

そんなカタログ燃費を算出する試験法が、従来のJC08モードからWLTP(Worldwide-harmonized Light vehicles Procedure)に変更されるという発表がなされた。自動車メーカーの大きな負担となっている、国ごとに異なる測定基準を統一するのが狙い。2017年夏以降、WLTCモード燃費で計測された自動車から順次切り替えていき、2018年10月から全面的にWLTCモードに移行するスケジュールだ。

>>【コラム】マツダが前代未聞の情報発信!? 未発売新型モデルの新燃費モードを公表した理由

新・国際基準“WLTP”とは

WLTPとは、2014年3月に開催された国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(CNE-ECE/WP29)において採択された、燃費計測における試験サイクル・方法の総称だ。定義が広いので少々解りづらい。

そして“Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycles”の略称であるWLTCは、走行条件に応じて4つに区分される具体的な試験サイクルとその結果を指す。したがってこれまでのJC08モードで表記されていたカタログ燃費は、2018年(平成30年)までにすべてWLTCモード表記に差し変わることになる。

はたしてこの新しい燃費基準とはどういったものなのだろうか?

WLTCモードとJC08モードの違い

市街地(Low)・郊外(Medium)・高速道路(High)の3種類で計測

WLTCモードで計測される燃費は、想定される走行条件に応じて下記の4つに区分されている。

◆Low:市街地モード

◆Medium:郊外路モード

◆High:高速道路モード

◆Extrta-High:日本では選択されない

ここからわかるように、WLTCモードが国際的に統一された試験サイクル・方法であると言っても、同じ車種の同じ仕様の車両が全世界的に同じカタログ燃費になるかというとそういうわけでない。

4つ目の区分である“Extra High”は平均時速約92km/h、最高速度は約131km/hにも達するため、法定制限速度が100km/hである日本では設定されていないのだ。

※“Extra High”の速度域で走行する距離は、日本においては5%
※“Extra High”に関しては、加盟国すべてで“オプション設定”という扱い

想定される車両重量の変更

また、試験車両の重量についてもJC08モードとWLTCモードで違いがある。
JC08モードは車両重量に運転者などを想定した110kgを一律で加えるのみだった。しかし、WLTCモードでは運転者を想定した100kgに加え、運転者以外に積載可能な重量の一部を上積みすることとなった。その重量は乗用車は15%、小型貨物車は28%で計算される。そのため、試験時の重量はWLTCモードの方が重くなっている。

コールドスタートの割合変更

燃費を測定する際、エンジンが冷え切った状態(コールドスタート)なのか温まった状態(ホットスタート)なのかで大きく数値が異なってくる。エンジンが冷えていればオイルも冷えているから抵抗が増すし、燃料の噴射量も増えてアイドリング値も高くなるため燃費が悪くなってしまう。

そのためJC08モードではコールドスタート25%、ホットスタート75%だった割合を、WLTCモードでは100%コールドスタートでの測定に変更した。これによって、エンジンが冷え切っているような状態でもキチンと燃費性能を発揮できるクルマでないと、優秀な数値をマークすることが難しくなったというわけだ。

シャシダイナモメーターの改良

仕組み以外の部分では、シャシダイナモメーターの負荷を無段階で増やすことが可能となった。これにより、今まで以上に実際の走行抵抗に即した負荷をかけることができるようになったわけだ。

これまではオプションの有無で10kg重量が変わるだけでガクっとカタログ燃費が悪化するようなこともあったが、そういったこともなくなり、カタログ燃費だけを追求するような仕様、いわゆる「燃費スペシャル」的なグレードもなくなることが期待できそうだ。

日本のカタログ燃費も“ガラパゴス”だった歴史

そもそも日本でのカタログ燃費は、当初60km/hで低地走行をしたときの値を表示していた。
しかしそれではストップ&ゴーのある実際の走行状態とはあまりにもかけ離れているということで1973年に当時の運輸省が市街地走行を想定した10項目の走行パターンを取り入れた『10モード』を採用した経緯がある。なお、1991年には10モードに郊外走行を想定した15パターンを追加した『10・15モード』へと変更されている。

2006年には現在使用されている『JC08モード』へと移行されたが、これはより一層現実に即した走行パターンを取り入れたほか、エンジンが冷えた状態のコールドスタート時の測定も加味されるようになったため、排ガス測定の面でも以前の基準よりも厳しいものとなった。

なお、測定に関しては全てシャシダイナモメーター上での測定となるが、実際の走行抵抗を加味するため、空気抵抗値やタイヤの転がり抵抗値を屋外のテストコースで測定し、その抵抗値と等しい負荷を与えての測定となっている。

この抵抗値の測定で不正を行ない、小さい値の負荷でカタログ燃費をよく見せていたのが、2016年に明るみになった三菱自動車燃費偽装問題だった。同様にスズキも屋外で測定すべき抵抗値の測定を屋内で行い、それに独自の係数を掛けた値を算出していたが、実際の負荷よりも大きい数値になっており再測定でカタログ燃費が伸びたという一幕も話題となったことも記憶に新しい。

「判りやすい」がユーザーに対する一番のメリット

さて話は戻るが、WLTCモードになって測定方法が変わったことでユーザーに一番メリットがあるのは、総合的な燃費の数値の他に、市街地モード、郊外モード、高速道路モードそれぞれの数値も公表されることだろう。(ごくまれに“HMLモード燃費”と表記されることがある)

これは前述の4つのサイクル(日本は超高速モードは除外)の数値となるわけだが、それぞれのシーンでの燃費が発表されることによって、「このクルマは市街地でも燃費が落ちないな」とか「このクルマは高速走行で燃費が伸びるな」というように、そのクルマの得意なシーンを想像することが容易となったことだ。

それにより、ユーザーが実際に使用するシーンに合ったクルマ選びがより一層しやすくなったと言えるだろう。もちろん、WLTCモードが100%現実に則した数値になるとは言えないが、少しでも現実的な数値になりつつあることは歓迎すべきことだろう。

▼2017年10月現在でWLTCモード表記が採用されている車種の例

ステップワゴン スパーダ ハイブリッドのモード別燃費
ステップワゴンスパーダハイブリッド G・EX Honda SENSING

JC08モード燃費

25.0km/L

WLTCモード燃費

平均

20.0km/L

市街地モード

18.8km/L

郊外モード

21.7km/L

高速道路モード

19.5km/L

マツダ CX-8(CX8) モード別燃費
駆動方式2WD4WD

JC08モード燃費

17.6km/L

17.0km/L

WLTCモード燃費

平均

15.8km/L

15.4km/L

市街地モード

12.7km/L

12.5km/L

郊外モード

15.7km/L

15.3km/L

高速道路モード

18.0km/L

17.5km/L

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小鮒 康一
筆者小鮒 康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後に急転直下でフリーランスライターへ。国産旧車に造詣が深いが、実は現行車に関してもアンテナを張り続けている。また、過去に中古車販売店に勤務していた経験を活かし、中古車系の媒体でも活動中。最近では「モテない自動車マニア」の称号も獲得。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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