ダイハツ ビーゴ 試乗レポート

  • 筆者: 松下 宏
  • カメラマン:原田淳
ダイハツ ビーゴ 試乗レポート
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先人達が大型化されて空いたスペースに出現

ダイハツでは従来、軽自動車のプラットホームをベースに1.3Lエンジンを搭載したSUVのテリオスをラインナップしていたが、テリオスには小さめのボディによる限界もあるのが実情だった。そこで、小型車クラス専用に開発した新しいプラットホームをベースに、テリオスよりひとクラス上のSUVを開発した。それが1月 に発売されたビーゴだ。

日本では、ダイハツ以外のメーカーを見渡しても、かつては小型車クラスに位置したエスクードやRAV4、CR-VなどのSUVが、モデルチェンジを経るうちに次々にボディを大型化して3ナンバー車になっているため、5ナンバーサイズの小型SUVというジャンルがほとんど空白に近い状態になっていた。ビーゴはその空白区を埋めるモデルでもある。

SUVならではの楽しさや悪路走破性の高さに加え、コンパクト2BOXとして気軽に使えるクルマであり、広い室内空間はステーションワゴン的な感覚での使い勝手も実現している。

日本の交通環境下で扱いやすいSUV

ビーゴのボディサイズは5ナンバー規格に収まるもので、全幅は1695mmに抑えられている。これは日本の道路交通環境の中での扱いやすさを保証するものだ。

外観デザインはいかにもSUVらしい力強さを表現したもので、ダイナミックな感じのフロントデザインが印象的。ビーゴを横から見ると、思い切り切り詰められた短い前後のオーバーハングが特徴的で、ロングホイールベースによる新鮮なプロポーションを作っている。リヤビューは背面に配置されたスペアタイヤが SUVらしさを表現する。

インテリアは全体的にはシンプルな印象ながらも、機能的にまとめられていて、基本的な造形はSUVとしての骨太な印象を狙ったもの。縦型に配置されたメタル調のセンタークラスターが独特のメカニカルな雰囲気を生み出している。

シートはサイドサポートの硬さを最適化したホールド性の高いもので、アームレストの採用で快適性も高めている。

街乗りを中心に使うユーザーにとっても満足度の高いSUV

搭載エンジンは直列4気筒1.5Lの3SZ-VE型。ダイハツの新世代エンジンで、80kW/141N・mのパワー&トルクを発生する。SUVのボディはちょっと重くて、フルタイム4WDは1200kg近いものになるが、それでも走りのフィールはけっこう軽快なもの。ボディに見合った動力性能といって良いだろう。

トランスミッションはFR車には4速ATのみの設定で、フルタイム4WD車では5速MTも選べる設定。今回はともにAT車に試乗したが、エンジンの吹き上がりや走りのフィールが軽快な割には、ATの変速フィールはちょっと古さを感じさせる部分があった。

また小型SUVなので仕方ない面もあるが、走行中の室内騒音はけっこう大きめ。エンジン音もロードノイズも入ってくるので、このあたりはもう少し走りの質感を高めて欲しい印象。逆にオンロードでの乗り心地などは上々のレベルで、街乗りを中心に使うユーザーにとっても満足度の高いクルマだと思う。5mを切る最小回転半径によって小回りが効くのも扱いやすさのポイントだ。

様々なシチュエーションにも応えられる

ビーゴはほとんど競合車のない特徴的なクルマ。強いていえば、パジェロ・イオやジムニー・シエラなどがライバル車ということになるが、いずれもモデルが古くなって魅力が薄れており、新しく登場したばかりのビーゴのライバル車という感じではない。

冬場に雪が積もる地区のユーザーにとっては生活4WDとして活用できるクルマだし、温暖な地区のユーザーでも4WDの走破性を求めるユーザーはいるだろう。あるいは2WD車であっても高いロードクリアランスによって、セダン系のクルマとは違う走破性を実現できるので、河原でバーベキューなんてニーズにも応えられるクルマだ。

あるいは室内空間というか、ラゲッジスペースの広さにポイントを置くなら、ステーションワゴン感覚の使い勝手を実現することもできる。

価格はそこそこ割安な印象があるものの、カーナビなどのオプションをふんだんに装着すると4WDの上級グレード車の価格は250万円近いものになる。オプションを絞って手頃な予算で手に入れたいクルマだ。

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松下 宏
筆者松下 宏

自動車そのものはもとよりクルマに関連する経済的な話題に詳しい自動車評論家。新車、中古車を含めてユーザーサイドに立った的確な購入アドバイスを語ることで定評がある。記事一覧を見る

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