ホンダ アコードワゴン 試乗レポート
- 筆者: 西沢 ひろみ
- カメラマン:小宮岩男
ヨーローパ仕様と共通化を図った7代目が登場。ワゴンは11月末からの発売だ。
アメリカではトップセラーを争う人気車種であり、76年の誕生以来、ホンダの世界戦略車として屋台骨を担ってきたのがアコードシリーズ。だが国内では、知名度はあるものの姿カタチが思い浮かばない地味な存在になっていた。その理由を、ビックマーケットであるアメリカ志向が強すぎると判断した旧型は、日本・アメリカ・欧州ともに別ボディ化を図る。けれども国内市場ではこれも成功とは言えなかった。心機一転、新型アコードシリーズは、アメリカのみ別ボディでクーペとセダンをラインアップ。日本とヨーロッパは共通化を図り、セダンとワゴンの2タイプとした。とはいえ、日本のマーケットはセダンの低迷化がますます進んでいる。主力車種はワゴンが担うことになるだろう。それもあってか、セダンが10月11日より発売されているのに対して、ワゴンは11月28日からのリリースとなる。
ラゲッジの積載能力と使い勝手の高さは、リア全体を専用設計した賜物だ。
ヨーロッパ調のデザインを採用したセダンとは異なり、ワゴンのカタチはスポーティイメージだ。思い切ってルーフを伸ばし、全高を低く見せるサイドウインドグラフィック効果を狙っている。モチーフは時速300km/hで急降下するハヤブサであり、スタイリッシュなウェッジシェイプが個性の主張といっていい。インテリアは、運転席が“走り”を意識したドライビング空間、後席が居心地のいい快適空間だ。 自慢のラゲッジスペースは、リアサスやシャシー、ボディ設計の工夫により実現している。低床化を図ったフロア高は570mm、タイヤハウスの張り出しを抑えたスクエアなラゲッジは旧型よりも87L増えた576Lを確保している。驚いたのは「ワンモーションリアシート」と呼ぶ、新開発のシートアレンジ機構だ。リアシートの背もたれを倒すだけで、ヘッドレストが自動的に倒れ、座面が持ち上がり、背もたれをすっきり収納できる。この状態で荷室長はなんと 1818mm、最大積載量は921Lとなる。また、リモコン操作で開閉できるパワーテールゲートを全タイプに標準装備していることも見逃せない。
ワゴン用エンジンは2種類。足回りは乗り心地を大切にした柔らかさが目立つ。
セダンには2Lエンジンも用意されるが、ワゴンに積まれるのは中核をなす2.4LDOHCi-VTECだ。旧型よりも200cc排気量が増えている。けれどもエンジンバリエーションは1種類ではない。同じ型式ながら、200馬力を誇るハイクオリティ仕様と、低回転時に吸気2バルブの片方を休止させる VTEC機構を採用することで10・15モード燃費13.0km/hを実現した160馬力の2タイプが搭載されている。この2つのエンジンフィーリングは、絶対的な速さこそ差があるけれど、高回転域のレスポンス感はまさにホンダならではの官能ぶり。低中速域もフラットトルクの扱いやすさが伺えた。 フットワークは、セダンが極めて安定したスポーツライクな挙動を見せるのに対して、ワゴンはやや柔らかめのセッティング。クルージングは静粛性、快適性ともに満足度は高いが、コーナーを攻めるとボディの上部と下部が別々に動いている印象を受ける。
世界に先駆けて開発したHiDS、高速道路運転支援システムが装着できる。
装備で話題を呼んでいるのが、世界に先駆けて開発したHiDS(インテリジェント・ドライバーサポート・システム)だ。これは高速道路における長時間の運転で、ドライバーの負担を軽減して、人間のエラーを未然に防ぐ運転支援技術。具体的には、フロントエンブレム奥に内蔵したミリ波レーダーが前車との距離を測り、設定した速度、車間を自動制御するクルーズコントロールシステム(車速/車間制御機能)と、フロントウインドウの上部内側に設置されたカメラで捉えた画像を元に車線を保つようパワーステアリングにアシストを行なう車線維持支援機能だ。 実際に使ってみると、かなり運転時の緊張感が和らげられることがわかる。ただしHiDSは、あくまでも現時点でのクルマができる最大限の支援を追求した技術。自動運転とは異なることを頭に入れておきたい。
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