ボルボ C30 試乗レポート
- 筆者: 日下部 保雄
- カメラマン:原田淳
若いユーザーへアピールするボルボのプレミアムコンパクト
ボルボは高い安全性で定評を得ているのはご存知のとおり。その代わり保守的なイメージがあり、ヤング・アット・ハートのユーザーからは距離を置いていると見られていた。しかしボルボは過去に2ドア+ガラスハッチを持った魅力的なワゴン、P1800をラインアップしたこともあり、実はユニークなクルマを出せる柔軟性のあるメーカーだ。
C30はかってのP1800をモチーフとしているが、シングルライフを謳歌するなどの若い層をターゲットとしたプレミアム・コンパクトで、合わせてボルボのエントリーモデルとなる。車体はS40などと共用し、横置きの5気筒エンジンを搭載したFFだ。ベースは4シーターと割り切ったキャビンに2ドア+ガラスハッチゲートを持つC30は、なかなか魅力的で、今後増えてくると予想されるこのクラスの先陣を切る。日本では4ドアが全盛だが、プレミアム・コンパクトで成功したミニなどを見ても、魅力的なクルマは成功している。
デザイン性とユーティリティ性を兼ね備えたユニークなリアデザイン
C30のエクスリアデザインは好評だったセーフティ・コンセプトをベースとしており、筋肉質でアスリート系のスタイルが特徴だ。特にリアのガラスハッチゲートにつながるキャビンがキリリと絞り込まれており、小気味よく好感が持てる。ガラスハッチは単なるスポーティー以上のものに加えてユーティリティも感じさせる巧みなデザインだ。
インテリアは例によって北欧家具を思わせるデザインでボルボ特有のものだ。特にS40系から始まったフローティング形状のセンターパネルはユニークでホッとさせるものを感じる。
キャビンが後方に絞り込まれているためにリアシートは完全に2座になっているが、その代わりシートをセンターに寄せることで視界が向上することと前後間のコミュニケーションが良くなっている。後席は広々感はないが大人が2人座ってもタイトな感じはない。
使い勝手はあるべきところに操作系のコントロール類があり、手足感覚でドライブできるように工夫されている。
スポーツ感覚と安心感を両立させたタイト感
横置きの2.4リッター5気筒NAエンジンと2.5リッターのターボエンジンの2種類が用意されているが、いずれも駆動方式はFFのみだ。
5気筒と言うと長いエンジンを想像させるが、このエンジンはコンパクト。そのためにハンドルの切れ角が大きく最小回転半径は5.3mと意外と小回りが利く。全幅1,780ミリはコンパクトと言うにはワイドだが、C30にはもてあますような大きさは感じない。
一貫したタイト感は切れのよいハンドリングから来ている。ドライビングテイストはキリリとしており、単にハンドルの応答性がシャープなだけではなく、しっかりとした手ごたえがあって、スポーツ感覚と安心感を両立させている。FFとはいえV6ではない5気筒エンジンによるオーバーハングの短さが生きている。170PSのエンジンパフォーマンスは妥当だ。特にビックリするようなトルクはないが、どの回転域からでも粘るような加速が出来る。C30には十分な出力と特性だ。
ボルボのエントリーモデルにとどまらない魅力
C30にはターボエンジンもあるが、こちらはマイルドターボで大排気量NAエンジンのようなフィーリングを持ち、扱いやすい。もちろん不用意にベタ踏みするとホイールスピンを起こしそうになるが、すぐにDSTC(ESP)が作動してクルマの姿勢を安定させる。32.2kg-mは魅力で、C30に余裕をまたらし、かつ過剰なパワーを感じさせないところがこのシャシーの奥の深いところだ。NAでも十分だが、こちらも魅力あるチョイスだと思う。ベースのAktivは285万から。食指の動く価格だ。
このクラスの競合車はまだ少ない。新型ミニやアウディのA3などが対象になるがC30はこれらのクルマとは違ったキャラクターがあり、独自の魅力を持っている。まさにこれまでのボルボユーザー層にはないところを狙っているだけに、エントリーモデルとしての役割は重い。
近い将来、アウディからはシューティングブレイクも登場する予定で、特徴のあるプレミアムコンパクトは注目だ。
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