フォルクスワーゲン シロッコR 試乗レポート/日下部保雄(2/2)
- 筆者: 日下部 保雄
- カメラマン:柳田由人
ゴルフにはない軽快なフィーリングを持っている
ゴルフRは世界のメーカーがベンチマークとする名車ゴルフをベースとしたパフォーマンスモデルなのに対して、シロッコはゴルフをベースとしたスポーツクーペだから、同じエンジンを搭載していても仕上がりが異なるのは当然だ。
ゴルフよりも低重心でワイドトレッド、アイポイントもゴルフと違って低く視野が違うのは乗ってみると直ぐにわかる。
ゴルフRは実用性を重視しているので、後席への乗降性は前席がバケットシートのためにそれほど良くないが、乗ってさえしまえばキャビンは広い。それに対してシロッコRはもちろん前席優先、ゴルフほどのヘッドクリアランスはないが、代わりに横幅があってユッタリとしている。
リアシートも2座のバケット形状はクッションが硬めだが、乗り込んでしまうと落ち着ける。サイドウィンドウの高さが狭いのでちょっと閉塞感があるが、空間そのものは広い。
DCC(アダプティブ・シャシーコントロール)は、コンフォートにしても路面からの突き上げは大きいが鋭角的なショックではないので、スポーツモデルとしては十分にコンフォートだ。さらにスポーツにするとロールが抑えられ、ハンドルの手ごたえもさらにしっかりしたものになる反面、乗り心地は硬い。
シロッコRは、ゴルフRと違ってAWDではなく前輪駆動。トラクションではゴルフRには勝てないが、シロッコRはゴルフにはない軽快なフィーリングを持っていて、さすがスポーツクーペの志をよく知っていると思わせてくれる。
感動的なのは、電子制御のデフロック「XDS」だ。GTIから採用されているが、前輪にかかる33.7kg-mと言う強大なトルクに対して、XDSはコーナーでも接地力を失いがちな内輪の駆動力を外側のタイヤに伝えて、グイグイと旋回していく。
機械式LSDの場合は、ハンドルを切った時から差動制限が行われるものが多く、ハンドルの応答遅れのような感じがあるが、XDSの場合は素直に姿勢を変えて、その後はアクセルを踏み込んでいくとデフロック特有のフロントを巻き込んでいくような旋回力を発揮する。
しかも、ゴルフRに対して120kgも軽い1,410kgで馬力荷重が向上したために、加速力でもあたかもエンジンがパワーアップされたかのような感じを受ける。
サスペンションはグイッと締め上げられ、DCCをノーマルモードにしても前述のように気持ちよく走れるが、スポーツを選択するとまさに路面に吸い付くような軽快な走りが可能だ。電動パワーステアリングも自然なフィーリングで好ましい。パドルシフト付6速DSGの変速の速さは言うまでもないが、使いやすくて速いだけでなく、スポーツカーの楽しみも味わえる。
シロッコRとゴルフR。どちらかと言えばゴルフのほうがカッチリした乗り味だ。しかし、シロッコのような真面目一辺倒ではないスポーツのゆとりも捨てがたい。515万の値段は決して安くはないが、気になる1台である。
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