フォルクスワーゲン ゴルフトゥーラン 試乗レポート

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フォルクスワーゲンが送り込む最新車は3列シートのミニ・ミニバン

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間もなく日本にも上陸予定の新型ゴルフ(ゴルフV)、そしてすでに日本でも発売済みの新型アウディA3とボディ骨格の基本設計を共にする最新のVW車がトゥーラン。ちなみに『ゴルフ・トゥーラン』というネーミングが用いられるのは日本市場のみ。フォルクスワーゲンといえばまずはゴルフ、というイメージが強い日本では、そのゴルフの人気の高さをちゃっかり利用しようという作戦が採られているというわけだ。

全長およそ4・4m。その中で3列シートのレイアウトが採用されているので、日本ではいわゆる“ミニ・ミニバン”の一種と認知をされそうなのがこのクルマ。ただし、実はヨーロッパ仕様では3列目シートはオプション設定。荷室スペースが重視される彼の地では、むしろ広大キャビンの2列シート車と位置付けられているのがトゥーランでもある。日本に導入されるのは1・6もしくは2リッターの直噴ガソリン仕様車。トランスミッションは贅沢にも(?)6速ATがおごられる。

時代の最先端を行くアイテムを搭載

エンジンインパネ

一見したところではさほど斬新さを感じさせるルックスの持ち主とは言いかねるのがトゥーラン。が、このクルマのパワーパックにはそんな見た目とは裏腹?に、時代の最先端を行くアイテムが搭載されている。

トゥーランが積む2つの4気筒エンジンは、いずれもVWが“FSI”と呼称をする直噴ヘッドを採用した最新の4バルブDOHCユニット。通常のエンジンがガソリンをマニホールド内に噴射するのに対し、FSIは燃焼室内に高圧で直接噴射。これにより、「出力と燃費という背反する性能を両立させた」というのがVWによるセールストークだ。実際、1・6リッター・ユニットが発する116psという最高出力は「従来の2リッターSOHCユニットのそれと同等」と言う。

組み合わされる6速ATは、実は日本のサプライヤー(アイシンAW)製のアイテム。MT風に扱えるシーケンシャルモードと、スポーティなシフトプログラムを備えたSレンジを用意する。

ドイツ車らしい、しっかりしたボディ剛性感と際立った高速安定性

試乗タイヤ&アルミホイール

トゥーランの走りのテイストは、いかにもVW風、ドイツ車風のものと言うことが出来る。すなわちそれは、しっかりした剛性感のボディに際立った高速時安定感を生み出すフットワークの持ち主ということ。例えば、これまでのVW車に乗った経験のある人ならば、その金属質なドアの開閉感からでも“VW車らしさ” を意識出来るだろう。見た目の華やかさよりも“乗って使ってナンボ”という価値観の持ち主――トゥーランもまさにそんな一台だと言って良い。

動力性能により大きな余裕が感じられるのは当然2リッター・モデルの方。が、巧みなシフトを行う6速ATと低められた最終減速比が効を奏し、1・6リッター・モデルも予想以上に元気な走りを味わわせてくれた。1・6mを越える背の高さゆえ残念ながら横風には少々弱い。が、スピードが高まるにつれフラット感を増す乗り味などいかにもアウトバーンの国育ちであることが実感出来るのがこのクルマの走りの実力でもある。

1.6リッターモデルでも充分実用的

フロントシートリアシート

今だにミニバンの好調が続く日本のマーケット。トゥーランはそんなこの国の市場に向けて敢えて「3列7人乗り」であることを前面に打ち出した戦略をとる最新のVW車だ。ただし、生まれ故郷のヨーロッパでは前述のように2列シートが本来の姿で、むしろ“4+2シーター”とも言うべき使われ方を前提としている。実際、3列目シートに大人が長時間座るのはかなり苦しい。スペース的に膝を抱えた“体育座り”を強要されることになるからだ。

1・6リッター・モデルと2リッター・モデルの価格差はちょうど40万円。装備的にはフルオート・エアコンや革巻きステアリングホイール、スポーツシートやアルミホイールが「前者にはなくて後者に標準」の代表的なアイテムだ。となると、個人的にはトゥーランというモデルの場合、そのキャラクター的に「1・6リッター・モデルで十分」という印象も受ける。それは先に述べたようにその動力性能が、1・6リッター・モデルの方でも実用上十分なレベルを確保しているからである。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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