トヨタ 量産型燃料電池バス「SORA」|TOKYO2020の近未来バスをひと足お先に試乗
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:トクダ トオル(オートックワン編集部)
もうすぐやってくる”未来”の路線バスを体感
新興国の猛烈な人口増とモータリゼーションの急速な発展に伴う環境問題を鑑み、クルマの電動化という潮流真っただ中にある2018年。そんな中、トヨタが”究極のエコカー”として強力に推す燃料電池自動車(FCV)のラインナップに新たな仲間が登場した。その名は「SORA」(そら)。乗用車ではなく、路線バス用の車両だという。
2020東京オリンピック・パラリンピックに向け、東京都内では既に100台以上のオーダーが入る近未来のバスに緊急試乗。もうすぐやってくる”未来”を体感してきた。
実証実験を重ねてきた燃料電池バス
水素を空気中の酸素と化学反応させ電気を発生させる”燃料電池”。排出されるのは水だけ、水素自体も石油や天然ガス、バイオマスに至る様々な原料のみならず、水を電気分解しても取り出すことが出来るという多様性があるのも利点だ。
トヨタでは2014年、燃料電池を用いた乗用車「MIRAI」(みらい)の市販化をいちはやく実現している。ガソリン車並みの航続可能距離を有し、水素の充填時間も数分で出来る辺りは、航続可能距離と充電時間に課題を残すEV(電気自動車)に対する大きなアドバンテージとなっている。
そしてトヨタは、燃料電池の仕組みは大型車にも向いているとし、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業」や環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」として、路線バス車両を用いて実証実験も行ってきた。
MIRAI 2台分の燃料電池を搭載・・・え、それでバスが動くの!?
このような経緯を経て、いよいよ2018年3月28日、正式発表されたのが今回ご紹介する「SORA」だ。
屋根上に乗用車MIRAIのFCスタック(燃料電池)を2台分搭載し、水素タンクはMIRAIの5台分(10本)。駆動用バッテリーはトヨタのハイブリッドカーで長く使われる信頼性の高いニッケル水素電池を用いる。SORAの場合、クラウンハイブリッドの部品を流用したそうだ。モーターの最高出力は154ps(113kW)×2、最大トルクは335Nm×2と、それ自体はMIRAIとほとんど変わらない。乗用車2台分の性能でバスが動くとは信じがたいが、最高速度70キロという路線バスの限定用途なら十分な性能だとトヨタでは説明する。
日夜運行する路線バスとしての要件を満たすための冗長性も持たせるため、実績ある部品で構成されたSORA。航続可能距離はおよそ200キロ。都心を走る路線バスの1日の航続距離が約100キロというデータがあるそうで、渋滞などの悪条件も踏まえ、要件を十分に満たすスペックだという。
また大容量外部電源供給システムも備え、万が一の停電時に体育館規模の電源供給も出来る点も心強い。
製造はジェイ・バスが担当、ボディサイズは大型路線バス同等
全長10,525mm、乗車定員79名(立席56名・乗員1名含む)と、都内を走る大型路線バスとほぼ同等の寸法を持つ。今回披露されたモデルは黒と白の未来的なカラーリングが目をひき、ライトまわりなどのディテールも先進的な装いだ。ただしフォルム(シルエット)自体は空間効率を極めた箱型で、屋根に水素タンクやFCスタックを搭載する関係で全高が高い点以外は、日野などの市販路線バス車両と大きく変わるところはない。例えばアイボリーとグリーン・オレンジの都バスカラーに塗られたら、良い意味で違和感は少ないはずだ。
前と中に乗降扉があり、車内はステップのないフラットな床(ノンステップ)となっている。乗降時に車体を左に傾けるニーリング機構(車高調整装置)も備わり、乗り降りは容易だ。
室内に入ると、進行方向右側に備わる自動跳ね上げ式の横向きシートが通常は収納されていることもあり広々した印象だ。中扉以降は2段のステップがあり座席スペースとなっている点は、市販ノンステップ型路線バスの標準スタイルと変わりないが、シートなど内装デザインは随分と洗練されている。
トヨタブランドのモデルだが、製造は日野といすゞの合弁バス会社であるジェイ・バスが行うことから、シャシーなど基礎の部品などは市販路線バスの日野ブルーリボンと共有する部分も多いようだ。
静かでスムーズな走りは実に快適
2018年4月20日(金)に東京・霞が関の国土交通省で行われた報道お披露目会では、実際に燃料電池バスのSORAに”試乗”する機会を得た。
SORAは燃料電池の仕組みを用いる電気自動車(EV)だから、ディーゼルエンジンと変速機を介する通常路線バスと比べ、加速はとてもスムーズ。当然ながらディーゼルエンジンの唸り音も聞こえないので、車内もずいぶんと静かに感じる。スムーズで音が少ないだけで、路線バスの快適度はグンとあがることを改めて実感させられる。
ちなみに国の補助金と東京都の助成金を用いれば、現段階での実勢価格は市販の路線バスとほぼ同等なんだとか。なるほど100台規模でイッキに導入される理由がよく判る。2020年までわずか2年。究極のエコ路線バスが、気付けばあっという間に身近な存在となりそうだ。
[Photo&レポート:トクダ トオル(オートックワン編集部)]
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