トヨタ新型アクア試乗レポート|5年目のマイナーチェンジは乗り心地にも大きな改善を与えていた。
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:島村英二
「クルマは日常の移動手段」と割り切りながら、実際に選ぶ時には、運転の楽しさとか、カッコ良さを求めるユーザーは少なくないと思う。
トヨタ アクアが堅調に売れているのも、このようなニーズがあるからだろう。全長が約4mの実用的なコンパクトカーだが、ハイブリッド専用車で燃費が優れ、全高(車高)を1455mmに抑えたボディスタイルは5ドアクーペ風でカッコイイ。ハイブリッド車とあって価格は売れ筋の“S”でも180万円を上まわり、コンパクトカーでは高価だが、多くのユーザーが買い求めた。
国土交通省の統計では、乗用車の平均年間走行距離は約1万kmとされる。この程度の距離ならば、ハイブリッドの高コストを燃料代の差額では取り戻せず、約40万円安いトヨタヴィッツの1.3リッターモデルを買う方が割安だ。それなのにアクアは走行距離が少ないユーザーの間でも人気が高く、損得勘定を超えた魅力で売れている。
そんなアクアが2017年6月19日にマイナーチェンジを受けた。発売から5年半を経過しており、フルモデルチェンジを受けても良い時期だが、今は世界的に見ると車種数が増えて環境や安全への対応も多様化した。価格の低下もあり、フルモデルチェンジを行う周期が長引いて基本設計の古い車種が増えている。ゆえに1車種当たりの人材を含めた開発コストが抑えられ、マイナーチェンジで済ませるわけだ。
アクアのマイナーチェンジの詳細は「トヨタ新型アクアマイナーチェンジ最新情報」で触れたから、今回は試乗した印象をお伝えしたい。
グレードは“G ソフトレザーセレクション”であった。
まずは外観だが、フロントマスクのボリュームが増している。以前は鋭角的な形状だったが、改良後は丸みが伴って存在感を強めた。全長も55mm伸びて4050mmになっている。
内装デザインに関しては、インパネの見栄えが向上した。メーターがインパネ上部の中央付近に配置されるため、以前はハンドルの奥側が少し味気ない印象だったが、シボ(表面の模様)の変更もあって質が高まった。
カーナビやエアコンのスイッチが収まるインパネの中央部分には、光沢のあるパネルが収まる。助手席の前側には柔らかい表皮が巻かれ、ソフトパッドではないが手触りが良い。発売当初から数回にわたって変更を受け、これまでの質感に対する不満はほぼ解消されたと評価できる。
発進して気付くのは、乗り心地の改善だ。
今でも硬めではあるが、路上の細かなデコボコを伝えにくく、段差を乗り越えた時の粗さも抑えられた。サスペンションの伸縮性が良くなった印象を受ける。今回の改良では、ボディ後端部分の剛性を高め、新しいタイプのショックアブソーバーも採用して減衰力は少し下げた。
タイヤも新開発され、従来の15インチは175/65R15だったが、改良後は185/60R15に改められた。特に上質な乗り心地ではないが、全長が4m前後に収まる国産コンパクトカーでは優れた部類に入る。
ちなみにアクアは2011年の発売後、2013年と2014年に、スポット溶接箇所を増やすなどの改善を受けている。その上で今回も手を加えたから、発売時点の硬さや粗さはかなり払拭された。
サスペンションとタイヤの設定は標準ボディとクロスオーバーで異なり、指定空気圧の区分はさらに細かい。JC08モード燃費が38km/Lの“L”は270kPa、34.4km/Lとなる“S”と“G”のスチールホイール装着車は240kPa、試乗車を含むSとGのアルミホイール装着車とクロスオーバーは230kPaだ。“L”と“S”と“G”とでは、足まわりやタイヤの設定は同じだが、“L”は低燃費化のために指定空気圧を高め、アルミホイール装着車は乗り心地を向上するために低く抑えた。
また発売当初と今では、走りと乗り心地に対する考え方も違っている。
発売当初は「キビキビとした軽快なフットワーク」をテーマに掲げ、あえて少し硬めのセッティングにした。これにボディ剛性の不足も加わり(そのために発売後に2回もボディを補強した経緯もある)乗り心地がますます悪くなっていた。この点を是正しながら今に至る。
上記の変更を施したことで、操舵した時の反応は以前よりも穏やかになり、機敏に向きを変える印象は薄れた。個性が乏しくなったともいえるが、アクアは限られたクルマ好きのユーザーを対象とするスポーティカーではないから、商品としては改良後のあり方が好ましい。
カーブを曲がったり車線変更をした時は、速度に合わせてボディが相応に傾くが、挙動の変化が穏やかだから不安はない。全高が1455mmと低く、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2550mmだから全長の割に長い。
もともと走行安定性の確保には有利なボディ形状で、今回の改良ではボディ剛性も高めたから、下り坂のカーブでブレーキングを強いられたような時でも後輪の接地性が削がれにくい。従って初期型アクアのユーザーが新型に乗り替えると、運転感覚が自然で快適になったと感じるだろう。
余談だが、今になって振り返ると発売当初のコンセプトとクルマ造りには少し無理があった。「コンパクトで重心の低いボディを生かし、キビキビと走れる楽しいハイブリッド車を造りたい」という気持ちは理解できるが、これを実現するには基本性能をさらに高める必要があったということだ。
そしてこの思いは、新しく追加された“クロスオーバー”で実現されているらしい。現時点では未試乗だが、走りのバランスを整えながら少しスポーティな方向に振っているという。
話を新型アクアの試乗に戻そう。
動力性能は以前と大差ないが、車両重量が1090kgと比較的軽く、十分な加速力を備える。巡航中にアクセルペダルを踏み増した時は、反応が素早いモーターの作用で1.8リッタークラスの加速感を味わえる。発進加速も1.6リッター並みだ。
加えて静粛性も向上している。以前はモーター駆動のみで発進した後、エンジンが始動すると一気にノイズが高まったが、新型は違和感が薄れた。
アクアはコンパクトカーでは背が低く、車内と荷室はあまり広くない。大人4名で乗車すると、後席が少し窮屈に感じる。そこに不満が生じない使い方をするなら、アクアは検討する価値のあるクルマだろう。
以前は質感や乗り心地の不満でアクアの良さがいまひとつ伝わりにくかったが、今なら5ドアクーペ的な魅力を実感できる。とはいえこの5年半の間に数多くのユーザーが購入したことを考えると、もう少し早く対応して欲しかったところだ。
[Report:渡辺陽一郎/Photo:島村英二]
トヨタ 新型アクア 主要スペック(2017年マイナーチェンジモデル)
新型アクア2017年マイナーチェンジモデル 主要スペック | |
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グレード | G ソフトレザーセレクション |
JC08モード燃費 | 34.4km/L |
価格(消費税込み) | 2,089,800円 |
駆動方式 | 2WD(FF) |
トランスミッション | CVT |
乗車定員 | 5人 |
全長 | 4,050mm |
全幅(車幅) | 1,695mm |
全高(車高) | 1,455mm |
ホイールベース | 2,550mm |
車両重量(車重) | 1,090kg |
エンジン型式 | 1NZ-FXE |
エンジン種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1,496L |
最大出力 | 74ps(54kW)/4,800rpm |
最大トルク | 11.3kgf-m(111N・m)/3,600~4,400rpm |
モーター最高出力 | 45kW(61PS) |
モーター最高出力 | 169N・m(17.2kgf・m) |
燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
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