スズキ 新型 アルト エコ[2013年モデル] 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
街乗りならコレで十分!な性能
さっそく新型アルト エコの試乗を開始しよう。動力性能は、ノーマルエンジンを搭載した軽自動車としては余裕を感じる。軽量化されたワゴンRのFXリミテッドと比べても80kg軽く、発進加速は軽快。巡航状態に入ってエンジンが2000回転以下になると、緩い加速では鈍さを感じるが、2200回転を超えると活発に加速できる。クセのないエンジンで運転がしやすい。実用回転域の2500~4000回転付近については、登坂路や高速道路を除けば力不足を感じない。
軽量化のために遮音が不十分だから、エンジンノイズは車内に相応に入る。それでもノーマルタイプのアルトが搭載するK6A型に比べると、アルトエコのR06A型は設計が新しい。ノイズの発生量も抑えたので、低価格の軽自動車としてなら不満はない。
意外に思えたのは、走行安定性と乗り心地のバランスだ。2012年1月10日に掲載した「スズキアルトエコ試乗レポート」でも触れているが、従来型のアルトエコは乗り心地が相当に硬かった。走行安定性にも不満があり、コーナリングやレーンチェンジでは、後輪の接地性を損ないやすかった。この欠点が、現行型ではかなり解消された。乗り心地は相変わらず硬めで快適とはいえないが、段差を乗り越えた時の突き上げ感は、従来型よりも穏やかだ。
「犠牲を払って燃費性能を向上させた」ワケではない
走行安定性も同様。高水準とはいえないが、過敏に曲がる性格を抑え、後輪の接地性を高めた。危険回避時でも従来型のような不安はない。先代型では「犠牲を払って燃費性能を向上させた」という印象を強く受けたが、現行型はバランスが良くなっている。
数値を見て驚いたのはタイヤの指定空気圧で、従来型の280kPaから300kPaに高まった。一般的には190~220kPa前後だから異例な値だ。燃費性能を向上させるにはタイヤの転がり抵抗を抑える必要があり、この値に至った。となれば乗り心地と走行安定性の改善は不思議に思える。
背景にある理由のひとつはタイヤの変更。13インチ(145/80R13)のサイズに変わりはないが、銘柄はダンロップSP10から同社のエナセーブEC300に変更された。スペーシアのベーシックグレード「G」と共通のタイヤを装着している。
エコカー減税政策が生み出した「歪み」
ただし、あくまでも従来型に比べると洗練度が進んだという話で、低燃費化の弊害が払拭されたわけではない。前述のように乗り心地は硬く、シートも軽量化を徹底させたから座り心地の柔軟性が乏しい。
スズキに限らず、今の軽自動車やコンパクトカーの開発現場では、走行性能や乗り心地の指標が先代型になることが増えた。燃費性能を極端に高めるから、ほかの機能は先代型と同水準で良いとされる。ユーザーとしては、燃料代が従来型に対して10%から40%も安くなれば満足ともいえるが、燃費の良さだけを求めてクルマを買うわけではないだろう。
燃費は環境性能でもあるから、昔の馬力競争とは意味が違うが、今は各メーカーとも「ガマン比べ」の状態。アルト エコが33km/Lなら、ミライースはそれ以上をねらわないと済まされない雰囲気だ。スペーシアも29km/Lだから、日産と三菱が共同で開発している新型軽自動車、ホンダの次期ライフなどは、さらに優れた数値をめざすだろう。
この争いを最初に仕掛けたのは、燃費数値を伸ばせば税額が安くなるエコカー減税だが、そろそろ歯止めを掛けたい。ここまで燃費性能を急速に高めた開発力を、ほかの機能に振り分ければ、相当に優れた軽自動車を開発できると思う。
また、違う見方をすれば、ここまで話題をふりまいて注目度を高めた軽自動車は凄い。逆に小型&普通車は澱んだ感じを拭えない。「燃費競争はどこまでエスカレートするのですか!?」とドキドキ心配させること自体、今では得難いムーブメントになっている。
[レポート:渡辺陽一郎]
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