スバル 新型フォレスター 新型車解説(1/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
SUVにおける本質的価値の実現を目指した、4代目新型フォレスター
水平対向エンジンと左右対称の4WD(スバルはAWDと呼ぶ)は、スバル車を代表する中核的な技術だ。この2つの特徴を生かし、ボディ剛性やサスペンションを煮詰めることで、スバル車は数ある日本車の中でも優れた走行性能を備えている。
スバルは技術指向の強いメーカーとあって、他社に比べて車種数が少ない。トヨタやダイハツから供給されるOEM車を除くと、純粋なスバル車と呼べるのは「レガシィ」「インプレッサ」「フォレスター」「エクシーガ」「BRZ」だけだ。
そのなかで、「フォレスター」はスバルのSUVとして大切なバリエーション。4WDは悪路走破というSUVの機能に直結するメカニズムだから、フォレスターはスバルの技術を発揮させやすい。
そしてSUVは大径のタイヤを装着し、路面のデコボコを乗り越えるために最低地上高も十分に確保。居住空間にも余裕を持たせているから、不可避的に背が高くなる。この高重心を抑える上でも、水平対向エンジンはメリットがあるわけだ。
そんなスバルの基幹車種の一つであるフォレスターが、2012年11月13日にフルモデルチェンジを受けた。
SUVらしい存在感を放つ新型フォレスター
新型フォレスターのコンセプトは、「SUVとしての本質的な価値の実現」。メーカーの表現はどこでも分かりにくいが、簡単にいえば「SUVらしさを従来以上に強めた」という意味だろう。
9月25日に解説記事を掲載した新型インプレッサXVは、最低地上高を200mmに拡大するなどSUVの機能を高めたため、新型フォレスターはさらに進化を図ったとも受け取られる。外観、機能ともに新型フォレスターはオフロード指向となった。
まずは新型フォレスターにおけるクルマの成り立ちだが、進化した「SIシャシー」を用いる現行インプレッサがベースとなっている。ホイールベースは先代フォレスターに比べて25mm拡大され、2,640mmになった(現行インプレッサに比べると数値上は5mm短い)。
新型フォレスターのボディサイズは全長が35mm伸びて4,595mm、全幅は15mm広がって1,795mm、全高は20mm高まって1,695mmだ。
1,795mmという全幅は日本車としてはワイドな部類に入るが、SUVには1,800mmを超える車種も多いので、フォレスターの数値はミドルサイズに属する。
外観は基本的に先代フォレスターのイメージを踏襲したが、インプレッサなどと同様にヘキサゴン(六角形)グリルを備え、ヘッドランプは吊り上がったデザイン。先代に比べて新型フォレスターでは睨みを利かせ、SUVらしい存在感を持っている。
インテリアの上質な仕上げに快適なシートなど、使い勝手もアップ
インパネについては、基本的なデザインは先代フォレスターと比較して大きな変更はない。スバル車らしくオーソドックスな雰囲気だが、細部の仕上げは上質だ。
注意したいのは、先代フォレスターではエアコンの吹き出し口の上側に装着されていたカーナビ画面が、新型フォレスターでは下側へと移されたこと。カーナビ画面がメーターパネルと横並びだった先代フォレスターに比べて、視線は少し下がる。
居住性は前後のシートともに向上。フロントシートはバックレストを60mm高めてサポート性が見直された。スライド量を32mm、着座位置の上下調節量も15.5mm増して、先代フォレスター以上に快適に座ることができる。
リアシートは、前述のホイールベースの拡大が利いている。前後に座る乗員のヒップポイント間隔を17mm広げ、フロントシートの背面形状も工夫して、リアシートの足元空間は120mmプラスになった。
ちなみにフォレスターのリアシートは、先代の時点で大幅に快適になった。ワゴン風ボディだった2世代前に比べ、ホイールベースと足元空間をそれぞれ90mm広げたからだ。先代型でも十分な居住性を得ていたが、新型フォレスターではさらに磨きがかけられた。
先代フォレスターで唯一気になったのが、リアシートの座面の造りだ。座った時の体の沈み方が少なめだった。SUVのリアシートはCX-5や新型アウトランダーを含め、座面の柔軟性に欠ける傾向がある。だが、新型フォレスターではこの点も改善されている。座面の前端形状を工夫し、縫製ラインも左右方向に通すことで、柔軟性とホールド性を高めている。
荷室容量は先代フォレスターよりも少し拡大。床がフラットに仕上げられており、荷物の出し入れがし易い。さらに、リアゲートには電動機能も採用して、使い勝手を向上させた。
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