出かけるときは忘れずに!今一度確認したい後席シートベルトとチャイルドシート・ジュニアシートの重要性

  • 筆者: 小鮒 康一
  • カメラマン:ボルボ・カー・ジャパン

違反になるからではなく安全のためにシートベルトを着用する

これから始まるお盆休み。帰省やレジャーで普段はあまり使用しない後部座席に人が乗る機会も増えるタイミングですね。クルマに乗ったらまずシートベルトの着用、というのはもはや常識ですが、普段クルマに乗らない人はつい着用を忘れがち。

もちろん、シートベルトの着用は道路交通法第71条の3で定められている義務であり、後部座席についても同様ですから、ウッカリでは許されません。

現在では後部座席のシートベルトに関して、高速道路(高速自動車国道又は自動車専用道路)での違反のみ行政処分の基礎点数1点が減点されるため、ついつい軽視しがちかもしれませんが、点数が引かれるという以前にシートベルトを着用しないということは非常に大きなリスクを背負うということ。そこで今回は、後席シートベルトの重要性を改めて振り返ってみましょう。

全ドライバーは動画必見!後席ベルト未装着で車外放出の危険性も

こちらがJAFが行ったテストの動画です。テスト内容は、車両の前席と後席(2列目)にダミー人形を各2体乗せ、後席運転席側のダミーのみシートベルト非着用とした状態で、55km/hでフルラップ前面衝突試験を実施。衝突時のダミーの挙動とHIC(頭部傷害基準値)を計測したもの。

動画を見れば一目瞭然ですが、シートベルトを着用していない後席のダミーだけが、衝突した瞬間に勢いよくシートから飛び出していき、フロントシートと運転手ダミーに激しく衝突していることが分かります。一瞬の出来事ですから身体を支える時間は当然ありませんし、そもそもぶつかったときの衝撃はとても人間の力だけで支えられるものでもありません。

死亡や重傷につながる致命的な頭部損傷を負う危険性が高い

結果的に後席ダミーの頭は、ヘッドレストを介して運転席ダミーの後頭部に衝突し、HICは2192まで上昇。HICが2000を超えると、死亡や重傷につながる致命的な頭部損傷を負う可能性が高いと言われており、非常に危険な状況と言えるでしょう。

また、後席ダミーが激突した運転手ダミーのHICも1171であり、頭蓋骨骨折などのリスクが考えられる数値。シートベルトを着用しないことで、本人はもちろん同乗者にまでも深刻なダメージを与えてしまう可能性があるというわけなのです。

ちなみに運転手ダミーが衝突後にエアバッグに接触した時点でのHICは504と、後席ダミーが激突したことで大きなダメージを負ったことが分かりますね。

なお、シートベルト非着用による被害の拡大は被害者の過失とされるため、被害者であっても、損害賠償等の場面で十分な補償が受けられなくなる可能性がありますから、シートベルト非着用のリスクは計り知れないものと言えそうです。

ジュニアシートも必須!ただし正しく装着しないと無意味な場合も!

チャイルドシートの使用率は、調査によると1~4歳では6割を超える程度と言われています。しかしながら、5歳では4割以下と低下し、さらに法律的に使用義務のない6歳以上では3割を切る数値となっており、乳児や幼児が使うチャイルドシートと比べ、ジュニアシートの使用率は大幅に低く、小学生低学年くらいの子供でも、140cm前後以上を適合身長とする大人と同じシートベルトを着用していることが判明しています。

前述のシートベルトもそうですが、こういった装備は違反になるから装着するものではなく、安全のために装着するもの。しかし、ジュニアシートに関しては着用の重要性がまだ浸透していないようなので、再びJAFのテストの結果を交えて確認していきましょう。

こちらも先ほどのテストと同じく、衝突事故を想定した55km/hのフルラップ前面衝突テスト。ミニバンの後席(2列目)にジュニアシートを正しく使用した6歳児ダミーとジュニアシートを使用せずシートベルトを着用した同ダミーでジュニアシートの使用効果を検証し、ミニバンの助手席に不適切な姿勢(背もたれを少し寝かせた状態)でのシートベルトを着用した10歳児ダミー人形が被る危険性を検証しています。

首や腹部にシートベルトが食い込む危険がある

その結果、正しくジュニアシートを着用したダミーはシートベルトが鎖骨や胸郭、骨盤にかかり衝撃を受け止めることができたのに対し、ジュニアシートを使用せずシートベルトを着用していたダミーは、体が前方に移動し、肩ベルトは首に、腰ベルトは腹部に激しく食い込み、大変危険な状態に陥ってしまったことが分かります。

また、不適切な姿勢で着座していた助手席のダミーは、背もたれを少し寝かせたために腰ベルトが腰から外れ、体が前に滑り出す「サブマリン現象」が生じています。その結果、グローブボックスを破壊するほど膝を強く打ち付け、シートベルトも首や腹部に食い込み、こちらも大変危険な状態となってしまいました。

シートベルト/ジュニアシートを正しく使用して楽しいドライブを

シートベルトは、「鎖骨や胸郭、骨盤など衝撃に耐える骨格で体を拘束するもの」、「身長がおおよそ140cm以上を目安」として設計されているため、身長が140cmに満たないうちは、ジュニアシートを使用しないとシートベルトが首や腹部にかかり、人体に大きな傷害を与える可能性があるので、必ずジュニアシートを使用するようにしましょう。

子どもに限らず、背もたれを寝かせた状態での走行は大変危険であるため、正しい姿勢で乗車することも大切。長時間の乗車ではついつい楽な体制を取りたくなってしまいますが、シートベルトなどが正しく効果を発揮できる体制をキープしたいところですね。

なお、12歳未満の子どもは3名で乗車定員2名換算となるため、7人乗りミニバンの場合、子ども6人、大人3人という乗り方でも違反とはなりません。その場合、数が足りないシートベルトやチャイルドシートなどの着用義務は免除となりますが、安全かどうかは別のお話。ここまで読んで下さった方であれば、そんなリスキーなことはしませんよね?

[TEXT:小鮒康一/PHOTO:ボルボ・カー・ジャパン]

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小鮒 康一
筆者小鮒 康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後に急転直下でフリーランスライターへ。国産旧車に造詣が深いが、実は現行車に関してもアンテナを張り続けている。また、過去に中古車販売店に勤務していた経験を活かし、中古車系の媒体でも活動中。最近では「モテない自動車マニア」の称号も獲得。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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