まもなく普及する「自動運転」の実態は進化した“スーパークルーズコントロール”!(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
自動運転は4つのレベルに分けられる
内閣府が2015年5月に示したSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行システム研究開発計画によると、自動運転をレベル1~4に分けて基準を設定した。
レベル1は加減速や操舵のいずれかを自動的に行う安全運転支援システムで、すでに実用化された緊急自動ブレーキなどを示している。レベル2は加減速や操舵の内、複数の操作をシステムが行うものだ。レベル3はレベル2を進化させ、システムが必要とした時にはドライバーが対応するもの。レベル2/3は準自動運転に位置付けられる。先に述べた日産とスバルの自動運転は、レベル2に該当する。複数の操作をシステムが行うが、レベル3には達していない。
内閣府の計画によれば、レベル3は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年から2020年代前半に実現させたいという。
そしてレベル4は、ドライバーが関与しない完全な自動運転で走行させる技術で、実現は2020年代の後半としている。
以上のように自動運転といっても、今後のプロセスは長い。実証実験が活発に行われているため、直ぐに実用化される技術のように思えてしまうが、簡単なことではない。
最初に市販化される自動運転は「クルーズコントロールの進化型」
自動運転技術を担当する複数の開発者に尋ねると「自動運転とか自動走行といわれるが、今後の数年間で実現できるのは運転を支援するクルーズコントロールの進化型」という返答が多い。
運転するのはあくまでもドライバーで、事故が発生した時の責任も負う。外界の環境を認識して判断するのはドライバーで、システムは支援にとどまる考え方だ。
従って「TVを見ている間に目的地まで移動できる」といったクルマ任せの自動運転ではない。
レベル3の「システムが必要とした時にはドライバーが対応する」のも実際には困難が多い。自分で運転をしていれば緊張状態を保てるが、自動運転を監視する立場になると気持ちが緩んで居眠りに陥ることなども考えられるからだ。
現在の全車速追従型クルーズコントロールでは、ペダル操作による車速の調節はクルマ任せでも、ハンドル操作は自分で行う。
たとえ支援機能があってもドライバーが操作するから緊張状態を維持できるが、ハンドルまで完全な自動になると、実質的に助手席に座っているのと同じだ。運転者としての緊張を保つのは難しいだろう。
今は車内にカメラを設置して、ドライバーの目の動きを監視することも可能になった。ドライバーに対するチェック機能も必要になる。
そして自動運転がドライバーの操作を必要とする時、つまりシステムがギブアップするのは、当然ながら運転が困難な状況だ。ドライバーはいきなり運転を任されて難しい操作を強いられる。
自動運転に移行する段階では、今までとは違う新しい危険が生まれ、次元の異なる安全装備が必要になりそうだ。
このほか米国や欧州には、自動運転に関係した標準化を行う組織があり、海外との協調も図らねばならない。
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