クルマの「売り切り型」ビジネスは終わる?クルマの稼働率たったの4.2%という現実(2/2)

クルマの「売り切り型」ビジネスは終わる?クルマの稼働率たったの4.2%という現実
近年では農業女子という言葉も生まれた 田舎道を走るVWゴルフ 首都高料金所 カーシェアも浸透してきた首都圏 SUVに人気が出てきた2010年代 田舎道とVWゴルフ 画像ギャラリーはこちら

日本人はなぜ高額のクルマを買い続けてきたのか?

首都高料金所

では、そんな低い稼働率の高額商品であるクルマを、どうして日本人はこれまで買い続けてきたのか?

それは、国民的な「ブーム」だったからだ。

戦後の焼け野原から、必死に努力し、経済成長を実感した日本人にとって、クルマを買うことは「豊かな生活」のための「自分へのご褒美」だったのだ。

「週末は、マイカーでドライブに出かける」のが、ウイークデーの激務に対する「癒し」になった。また、若者カルチャーでは、ファッションとクルマが「モテるための必須アイテム」であった。

すべては、「豊かな生活」に結び付くブームだったのだ。

こうした過去を踏まえると、現在の「クルマ離れ」は「起こって当然の社会現象」だと言える。なぜなら、国民の豊かさの方向性が分散したからだ。そのなかで、「クルマが趣味」という層は残ってはいるが、高度経済成長期の「国民的なブーム」と比較すれば、その絶対数は大幅に減少している。

ふと冷静になって、「毎日1時間乗り続けても、稼働率は4.2%」「同じく高額商品である不動産に比べれば、経年による価格低下が大きい」という現実を直視すれば、「クルマは持たなくても事足りる」と思う人が増えるのは当然なのだ。

ついに下がり始めた、首都圏の自動車保有台数の減少

田舎道とVWゴルフ

クルマの稼働率という単純計算の値だけではなく、もっと深刻な数字が明らかになっている。

2年ほど前から、首都圏での自動車保有台数が初めて減少に転じたのだ。少子高齢化するのだから、こうした動きは当然だろう。

だが、問題はそうした人口統計だけではなく、「クルマは持たなくても事足りる」と思う人の絶対数が増えている点にある。

「クルマは、必要な時に、必要なサイズと種類が、適度な料金で使えればよい」ということが、徐々に「社会常識化」しているのだ。これは、筆者の単なる「肌感覚」ではなく、長年に渡り大手の自動車販売業に従事する経営者の「生の声」だ。

近い将来、新車の「売り切り型」ビジネスから、レンタカー、リース、カーシェアリングなどの様々な「クルマを使う手段」を、都会・地方都市・田舎という様々な地域で、人それぞれのライフスタイルに合った形で提供する「クルマのファイナンシャル&ライフスタイルプランナー」へと大きく転換しなければならない、と指摘する。

筆者としては、大手の事業者がここまで真剣に「時代変化を直視し、さらに早期に対策を打とう」としている事実を知って、とても驚いた。

田舎道を走るVWゴルフ

この事業者の他にも、「新しいクルマと人の付き合い方」を提案する企業が増えてきている。

そのなかには、「クルマ好き」が飛び上がって喜びそうな「こんな料金で、いろいろなスポーツカーに乗れるの?」といった類のビジネスモデルも含まれている模様だ。

毎日1時間乗り続けても、稼働率はたったの4.2%。そんな「古いタイプのクルマとの付き合い方」がこれから、大きく変わることは間違いない。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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