スマート スマートフォーツー 試乗レポート

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お色直しした2代目スマート誕生

2.5mという全長の中で、一体我々は何が出来るのか?初期のコンセプトは、そもそもそうした考え方に端を発していた。かいつまんで言えば、「メルセデス・ベンツSクラス用の駐車スペースに、2台を停められる」のが最大のポイント。時計メーカー“スウォッチ”とのコラボレーションで事業計画がスタートし、当初はスマート・シティクーペ、後にスマート・フォーツーを名乗ったマイクロ・コンパクトカー(以下「スマート」)も、勿論そうした小ささこそが第一の特徴だ。

実際に販売された初代スマートは、1997年の発売以降、世界で85万台を販売。以来、唯一無二の存在として世の中にその存在と独自の考え方をアピールしたのは確かだが、一方でスウォッチ社が事業から撤退し、販売台数上も当初の目標には遠く及ばないなど、商売上は順風満帆とはいかなかったとも言う。

しかし、2代目モデルにはアメリカでの正式発売も行われるなどの“追い風”があり、その理由は言うまでもなく、世界的なガソリン価格の高騰やCo2削減のムーブメントなど、昨今の社会を取り巻く情勢にある。そんな2代目スマートが、いよいよ日本に上陸だ。

拡大されたボディデザインをどう受け取るか

ルックス上は明らかに初代モデルのイメージを継承する2代目だが、問題は拡大されたサイズをどう受け取るか。全長と全幅の180mmと45mmという拡大幅は、決して小さな割合ではない。そこにはどうやら、アメリカ市場にも初上陸という事情を含めた“時代の要請”が絡んでいるようだ。

全長延長分のうち、「歩行者保護のためのフロント延長分と室内スペースの拡大分、そしてラゲッジスペースの延長分がそれぞれ1/3ずつほど」と教えてくれたのは、アメリカ試乗会で話を聞いた安全担当のエンジニア。このうち、3番目には「アメリカ独自の安全基準が影響を及ぼしている」との事。同国には80kmでオフセット後突された場合の燃料漏れをチェックという厳しい衝突基準が存在するからだ。

エンジンは新開発の1L 3気筒を搭載

一方、全幅はエンジン排気量拡大の影響が無視出来ない。700(初期型は600)ccだった初代モデルに対し、2代目スマートは1L。そんな“大きくなったエンジン”を挟むリアサスペンションもそのスパンを増し、結果的にボディ拡幅もやむ無しになったと言うのがその理由だ。

「クーペ」と「カブリオ」の2タイプが導入された新しいスマートで走り出す。従来型よりも40~60kgほど重量が増えた計算だが、スタートの瞬間が明確に力強いのは、やはり排気量アップの効果が大きいようだ。これまでのモデルでは“ターボチャージャー頼り”という感触だったが、自然吸気式となった今度は低回転域からリニアなトルク感が得られる。ちなみに、この新型の心臓は三菱自動車で製造されるユニット。要は、軽自動車の「アイ」用ユニットを1Lまでサイズアップしたものと考えると分かりやすい。

組み合わされるトランスミッションは、従来同様の2ペダル式MT。シフト動作に必要とする時間が短くなり、それに伴うギクシャク感も幾分小さくなった。しかし、それでも一般のトルコンATなどと比べてしまえば、加速力が途切れる違和感はそれなりに大きい。自動シフトを行うオート・ポジションは今回も用意をされるものの、やはりレバー操作はマニュアルで行い、それに合わせた“MT風”のアクセルワークをした方が違和感は小さい。

ところで、今度のスマートも従来同様にハイオク・ガソリンが指定。しかし実はアメリカ仕様車には同国内での「ガソリン性状に対応」という理由から、日欧仕様では11.4の圧縮比を10.4とした“低圧縮エンジン”が搭載されている。日本でもこちらを使用する事で何とかレギュラー・ガソリン対応にならないだろうか。率直なところ割高感が漂うモデルでもあり、多少の性能ダウンには目をつぶっても、燃料面では敷居を下げてもらいたい。

横風の影響はまだそれなりに受けるものの、それでも直進安定性はグッと向上。加速時に顕著だったスクォート(尻下がり)も弱まり、フットワークは“普通のクルマ”に近づいたのが新型だ。静粛性の向上代が大きいのも新型でのポイント。要は、「従来型でのネガのポイントがことごとく潰された」のが新型の印象と言っても良い。

どこへ行ってしまった“2.5mコンセプト”

個人的にはやはり、サイズが大きくなってしまった事が気に掛かる。冒頭述べたように「小ささ」こそがスマートの命。それを拡大したという事は、そもそもの発端である“2.5mコンセプト”の退歩にもつながり兼ねないと感じられるからだ。

もっとも、さらに問題なのはこの日本という国の中では、小ささこそを善とするスマートの真価を発揮出来るシーンが極めて限定的という事。何故ならば、この国の交通政策が「都市部は全面駐車不可」であるゆえ、大きいクルマであろうが小さいクルマであろうが、そうした所で路上駐車をすれば、それは結局「違法」というレッテルを貼られてしまうからだ。

こうして“小さいクルマに優しくない”日本においては、今度のスマートも残念ながら目立ったヒット作となるのは期待薄。仮に「全長3mまでのクルマは基本的に路駐OK」とでもなってくれれば販売量が一気に増すと同時に、日本の軽自動車メーカーも小ささ主眼の真の“軽”自動車の開発に本気になってくれそうなのだが・・・。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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