ポルシェ カイエンターボS 試乗レポート/九島辰也の“ポルシェは911だけじゃナイッ!!”(2/2)
- 筆者: 九島 辰也
- カメラマン:茂呂幸正
“ポルシェ流”SUV、その実力を公道で発揮できるのはほんの僅か
それではさっそくインプレッションだが、エンジンスタートからこいつはタダモノではない雰囲気をドライバーに与える。エンジンに火が入った瞬間のブリッピングから音はかなりレーシーで、普通ではない。
そして、その後のアイドリングではまるで「猛獣が喉を鳴らす」ような音を響かせるのだ。
スタートでは、不意なアクセルワークではカラダをシートに押し付けられるから注意が必要だ。
いわゆるフツーのスペックを持ったクルマの感覚でアクセルを踏んでは危険を伴う。しっかりとステアリングを握り、加速Gを想定したドライビングポジションをとることが要求される。
しっかりしたポジションのままアクセルを踏み続けると、目の前の景色が異様に早く流れる。低回転からターボが効き出しおよそ2.2トンのボディを軽々しく前へ押し出す。
気に入ったのはそのときのシフトマネージメント。最近は燃費を向上させるためすぐにシフトアップしてしまうクルマが多いが、こいつはパドルを使うまでもなくいい感じにエンジンをまわす。学習機能があるのだろうが、好印象である。
ステアリングはこれまで通り軽めだが、切り出して行くとフィールが出てくる。今回は箱根ターンパイクの試乗だったので、その辺はよくわかった。手のひらに伝わるステアリングフィールもワルくない。電動パワステのセッティングはリリースされるモデルごとに良くなっている気がする。
実に豪華なインテリアに、ポルシェブランドのプライドを垣間見る
ただ、ひとつだけ使い切れる装備がある。それは「ブレーキ」。ポルシェ自慢のアイテムだ。しかも、試乗車にはオプションパーツの「ポルシェ・セラミックコンポジットブレーキ」が装着されていた。
軽量でよく働くこいつの役割は大きい。運動エネルギーを瞬時に熱に換え、それを一瞬で冷やす。事実、ターンパイクの下りではその恩恵を垣間みられるシーンがあった。ガツン、という踏み応えに相当する制動距離を見せつける。オプション代「153万8,000円」というスモールカー一台分に相当する価格は伊達じゃない。
それに、イエローのキャリパーも見た目かなりクールだ。標準21インチというホイールとのマッチングもいい。
また、インテリアにもカイエンターボSの醍醐味を見た。そこには、レーシーなポルシェという印象よりもウルトララグジュアリーブランドとしてのプライドがある。レザーシートやトリムなど、“このクラス”を選ぶ人を納得させる仕上がりだ。
それもそのはず、このクルマのプライスタグは1,977万円。オプションを含め、もはやベントレー・コンチネンタルシリーズにも迫りそうなレンジにある。
それにしても、今回の試乗ではポルシェがつくるとSUVもこうなる!というのをあらためて見せつけられた。
最近、510psの新型レンジローバー•スポーツの走りに感動したばかりだが、やはりポルシェも黙ってはいないということだ。まぁ、現実的にSUVとしてここまでの仕上がりは必要なのかわからないが、とにもかくにも刺激的である。
カイエンターボSはポルシェに対するマーケットの期待に十分すぎるほど応えている。
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