プジョー 407 試乗レポート

プジョー 407 試乗レポート
フロントビュー リアビュー インテリア プジョー407SW ガラスルーフ エンジン 走り 画像ギャラリーはこちら

401から始まった4シリーズの7代目・NEW 407!

フロントビューリアビュー

8年を超えるロングランを続けてきた406の後継モデルとして、本国フランスでは2004年の4月にセダンが、そして同じく9月にワゴン型のSWがリリースされたのが407シリーズ。1934年の401に始まったプジョーの“4シリーズ”は、これで7代目を数える事になった。

こうして、さしあたりは今だ継続生産されるクーペを除く2タイプのボディをラインナップする407シリーズは、これまでの406に比べるといずれも明確なサイズアップを行った事がまずは特徴。ホイールベースの延長分は25mmに留まるものの、全長はセダンで85mm、SWで35mmとそれ以上のアップ。全幅も一気に60mm増しとなり、一見した印象でも406よりも明らかに大型化している事を実感する。

日本に導入される合計8バリエーションの407は3L(正確には2946cc)のV型6気筒エンジン、もしくは2.2L(同2230cc)の直列4気筒エンジンを搭載。前者が6速、後者が4速仕様のAT専用モデルとして発売される。

イマドキの高級感テイストと、ガラスルーフ!

インテリアプジョー407SW ガラスルーフ

それにしても407で文字どおり「目を引く」事になるのが、“超個性的”と言っても良いそのスタイリングだ。前述のように407のディメンションは、406に比してホイールベースの延長分以上に全長の延長分が大きい。すなわち、まるで時代の流れに逆行(?)するかのごとく「オーバーハングが大きくなった」事が、その独特のプロポーションを生み出す要素となっている。

実際、大きく開いた口が前方へと突き出したようにも見える407のフロントエンドの造形は、「このクルマならでは」という個性を演じる一方で見る人の好みによって評価を大きく分ける事にもなりそう。407に限らず、ここしばらくのプジョーのニューモデルはいずれもこうしたテイストのフロントマスクを採用する模様だが、そんな戦略はひとつの「賭け」の要素も含んでいると言えそうだ。

一方のインテリアは「これでは兄貴分の607の立場が危ういのでは!?」と思えるほどに一気に高級化した事にちょっとびっくり。センターパネル付近にはまだ少し“プラスチッキー”な部分も散見されはするものの、全体的な質感はひと昔前のフランス車のそれとはまさに隔世の感という高いレベル。ちなみに、日本仕様の場合「専用開発のHDD内蔵ナビ」が全車に標準装備。それを受けてダッシュアッパーの中央にやはり専用デザインの多機能ディスプレイをレイアウトするという気合いの入れようだ。

後席スペースは大人2人には十分ではあるものの「ライバルを圧倒する格別の広さ」という印象ではない。ガラスルーフの採用で明るいキャビンが売り物のSWは、ルーフ部分にかけてまで開く大開口のテールゲートに加え、ガラスハッチを併用する事も売り。もっとも、そのガラスハッチ自体の位置が高いためにそれを今ひとつ有効に使いにくいデザインはちょっと残念。トノーカバーがハードなボード式なのは新鮮だ。

走りはさすがの域。

エンジン走り

今回のテストドライブはセダンを3Lモデル、SWを2.2Lモデルで行っている。

1.6t台半ばの重量に最高出力210psの3Lエンジンを搭載するセダンの動力性能は、日本の走りの環境にも全く違和感のないプログラミングを与えられたアイシンAW製6速ATの助けもあって、常にそれなりの余裕に溢れた印象。静粛性の高さも一級品で、やはり「607危うし!?」とも思える上質さが目立つテイストが味わえるものだった。

もっとも、それでも“走り”が売り物のプジョー車らしいと思えるのは、3500rpm付近から上で明らかに活発さが一段増しとなるエンジンのパワーフィール。ストローク感がタップリとしたフットワーク・テイストにも、同様の印象が感じられる。ロールが抑えられ、ステアリング操作に対する応答性がシャープなハンドリングの感覚もやはり“走り”重視の意図が見られるもの。ちなみに、このあたりの印象には3Lモデルにのみ標準装備となる電子制御式の可変減衰力ダンパーの効果も含まれているはずだ。

一方の2.2LのSWは、3Lセダンと直接比べればもちろん絶対的な非力感は免れない。とは言え、日常的な多くのシーンでパワー不足を実感する事はない。スタートの瞬間の出足感も「予期したよりは力強い」という印象。1気筒当たりの排気量ではむしろ3Lモデルを凌ぐ事などがそんなテイストを生み出している可能性は高い。

嬉しいのはZF社製の4速ATのマナーが、406時代よりもずっと日本の道にも適したものとなった事。その分3速ギアで走る頻度が増す事にはなっているが、かつてのように「いつまでも2速ギアで引っ張り続ける」という状況はきれいに解消された。

こちらのフットワークは、ダンパーに可変ディバイスが入らない分だけロールを許す印象。それでもマイナス2気筒分のノーズの軽さもあってか、回頭感は3Lセダン以上にスッキリしたもの。ワゴンなりの重積載時を考慮してかリアタイヤの指定内圧が2.8barと高いものの、それによる乗り心地のハンディキャップを殆ど実感せずに済むのも嬉しいポイントだ。

個性的なところが、受け入れられるか否か。

ちょっとエキセントリックなスタイリングを備えつつも、走りはグッと上質になった407。このクルマは一体どのような人にオススメすれば良いだろう?

まず第1の候補となるのはもちろん「ルックスに惚れた」という人たち。406を遥かに凌ぐ個性的なその姿は、事によると『新時代のプジョー・マニア』という新しい層を開拓して行くことになるかも知れない。

また、「セダンやワゴンでも、やはり自らドライビングをする楽しみを味わいたい」という人々にも当然アピールをする事になりそう。大幅なフロントヘビーの傾向が避けられないFF車らしからぬ機敏なハンドリング感覚や、回すほどに活発さを示すV6エンジンのパワーフィールなどは、407の走りを大いに特徴づける象徴的な部分でもある。

一方で、これまで406を支持してきた人たちに対しては抵抗を抱かせる可能性が考えられる部分もある。1.8mを大きく超えた全幅や5.8mと大きな最小回転半径による取り回し性の低下や、前出しされた太いAピラーが日常の運転視界に大きく入り込む事によるうっとうしさ。そして何よりも、これまで紹介をしてきたよな超個性的なルックスなどがその代表と言って良いだろう。

いずれにしても、大いなる個性化への道を歩み出したそんな407が世界のマーケットでどのような評価を受けるのか? これは大いに興味の沸くところではある。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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