トヨタの工場停止の理由は半導体問題じゃない! 新型ランクルなど人気車種の生産を20日間も停止する本当のワケとは!?
- 筆者: 国沢 光宏
- カメラマン:MOTA編集部
新型コロナウィルスが猛威を奮っている今。それに加えて半導体問題が世界中で大きな問題となっている。とくに自動車業界に与える影響は大きく、各国の自動車メーカーで納車時期が長引いている状況にある。そんな中、トヨタも9月に世界規模で減産を行うと発表。一体トヨタになにが起きているのか!? 今の状況を整理するとともに、今後起こりうることについて自動車評論家の国沢光宏氏が大予想する!
日本市場へ大打撃! 22日間の工場停止で14万台に影響
突如トヨタが「9月は世界規模で36万台/4割の減産を行う」と発表した。もっとも減産台数が多いのは日本の14万台としており、工場や車種によって22日間もラインを止めるという。このニュースを受け、株価も19日14時30分の9639円から、20日14時30分の24時間で8899円まで落ちた。トヨタに何が起きているのだろう?
工場停止の要因は半導体問題じゃない! 東南アジアの新型コロナウィルス蔓延が最大の理由
多くの人は半導体不足だと思っているようだけれど、全く違う。トヨタ、半導体については適正な価格で購入しているなど(買いたたくメーカーも多い)、半導体メーカーとウィンウィンの関係を築いており、自動車メーカーで最も影響を受けていない。したがって今回発表された大規模な減産は全く違う要因になる。
トヨタも減産の理由としてキッチリ説明している通り、東南アジアの工場で生産している部品が入ってこなくなったからだ。御存知の通り今や東南アジアはデルタ株で非常に厳しい状況にある。この地域で最も感染者数少なかったタイですら7月末から爆発的な蔓延が始まり、連日2万人規模の感染者と300人近い死亡者を出してます。
東南アジアに生産を移管したばかりなのに……パンデミック状態により生産が厳しい状況
日本の自動車部品メーカーの工場が多いベトナムも厳しく、タイと同じく7月末より感染者急増。8月下旬時点でピークに達していると言われ、連日1万人規模の感染者を出している。同じく部品メーカーの工場多いインドネシアやマレーシアも感染のピークを迎え始めた。中でもパンデミックを起こしているのは、人が集まる工場。
日本の工場と違い人海戦術で部品を作っているため、感染力の強いデルタ株に変わるや手が付けられない状況になってしまったという。自動車部品を作っている工場はラインを止めざるを得ない。
トヨタは中国の半日デモ以後、部品の調達を中国から東南アジアに移していたため、生産ライン停止の大きな影響を受けることになる。
日本メーカーは東南アジア頼み……解決するには新型コロナウィルスの収束が一番
日本の減産規模の大きさは、日本で使っている海外部品の調達先の多くが東南アジアということを物語っている。欧州やアメリカ、中国の工場で使っている部品は地域調達率高いため、日本より影響が少なかった。この状況、いつまで続くのか? 自動車部品は簡単に調達先を替えることも難しいため、いかんともしがたい状態。
一番いいのは東南アジアの新型コロナ感染がピークアウトすること。日本よりさらにワクチンの接種率が低いため(ベトナムで1回接種済みが15%。2回済みは2%。タイも30%と10%)、なかなか厳しい。
東南アジア以外からの調達も進むだろうけれど、10月も9月に近い規模での減産を強いられるかもしれない。
中古車市場が高値に! まだまだ続く負のスパイラル
もちろん減産はトヨタに限らない。東南アジアで生産している自動車部品、皆さんが考えている以上に多岐に渡る。せっかく上向きになっている自動車産業ながら、低くないハードルが出現してしまった。
とはいえ日本の自動車メーカーはこういったハードルをいくつも超えてきた。昨年の新型コロナショックを考えれば乗り越えられるだろう。
ちなみに納期の遅れは当然の如く出てくる。短くて1ヶ月。長ければ2~3ヶ月スパンでの納期遅れは想定しておいた方がいいと思う。トヨタ以外のメーカーは依然として半導体不足の影響も受けている(とくに輸入車)。一方、クルマのニーズは新型コロナ禍で増えているため、欲しい人は多い。中古車相場、高めで推移するだろう。
>>トヨタの工場が一時稼働停止でヤリスクロスなど人気車種の納車が半年かかるケースも! ヤリス&ヤリスクロス買うなら認定中古車もアリだ
【筆者:国沢 光宏】
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