車検のないアメリカ、カーカスタムはどこまで許される?【SEMAショー 2018】

車検のないアメリカのカスタム事情を調査! やっぱりやりたい放題なのか!?

カスタムの本場として長い歴史を持つアメリカは、カスタムやチューニング、アフターパーツの業界も日本とは比べ物にならない位大きな市場があり、かつ、老いも若きも車いじりが大好き!という国である。車の歴史も文化も、必要度も日本とは大きな違いがあるが、その違いの一つに、アメリカには日本のような車検制度がないことがあげられる。

車検がないアメリカではカスタムやチューニングに関しても、規制がないのだろうか?

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アメリカの車検と日本の車検の違い

カスタムやチューニングを思いっきり楽しみたい人にとっては、「車検がない国」アメリカは理想的な国と思えるかもしれない。確かに、日本のように、国(国交省)が厳格に管理する指定工場や各地の車検場で細かい部分までしっかり実車をチェックして車検ラインを通すような制度はアメリカには存在しない。車検以外に、重量税や各種の手数料など高額な諸費用を納める制度も同様にない。

日本の車検は世界的に見てもかなり厳しい内容で、自動車ユーザーにとっては、車検が車を買い替えるきっかけになるほどの一大行事なのである。

しかし、ユーザー車検にしろ、指定工場にしろ、厳しい基準に沿って検査員がチェックする分、万が一、車検直後の不具合が原因で事故が起きた場合、ユーザーが責任を負うことはほとんどなく、整備保証を付けている車検業者も少なくない。また、定期的に厳しい車検を受けている分、10年、20年経過した車でも、日本から輸出される中古車は高品質だという評価を得ている。

一方、アメリカでは国が主導する車検制度は存在しないが、州ごとに制度が決まっており、中にはブレーキパッドやエンジン、足回りの点検を義務化している州もある。対照的に車両検査は全くナシで、定期的に排気ガスの検査を通すだけの州もある。

アメリカにおける自動車安全基準 FMVSSとは?

アメリカには日本の国交省が定める保安基準に相当するFMVSS(Federal Motor-Vehicle Safety Standard)という安全基準があり、安全性能を中心とした車に関する様々な基準はFMVSSによって決められている。現在は101番から595番まで存在しており、基準を満たすための要件は定期的に更新され、回数を経るごとに厳しくなっている。スクールバスやチャイルドシートに関する基準もある。

ちなみに、1967年に最初の安全基準209番が採択されたが、これは「Seat Belt Assemblies」(シートベルトの構造)」に関わる内容で、乗用車、トラック、バスなどすべての車両についてシートベルトに関する安全基準が定められている。

また、アメリカといえば、サイドマーカーや赤色の後部ウィンカー、そして5マイルバンパーがUSDM(アメリカ独特の基準)として有名だが、これらについてもFMVSSに記載されている。

▲左はFMVSSの基準により『5マイルバンパー』を備えたホンダ フィット(北米仕様)。右の日本仕様と比べると、フロントバンパーに厚みがあるのがわかる。

州によって全く違う、車両検査の有無

アメリカ50州の車両の安全検査と排ガステスト(SMOG TEST)の実施状況を調べてみた。

定期的な車両の安全検査が必要な州はハワイ、ルイジアナ、テキサスなど17州ある。しかしこの「安全検査」とは、日本の車検ほど厳格で費用が掛かるものではなく、設定された保安基準をクリアしていればOKで、実際に検査をしなくても良い州がほとんど)が、まったく何の検査がない州もアラスカ、モンタナ、フロリダなど12州ある。排ガスチェックだけの州はカリフォルニア、ネバダ、オレゴンなど合計14州、排ガスチェック+車両の安全検査の両方が必要な州もある。

なお、これらの中には、他の州から引っ越して来た場合のみ排ガスや安全検査が必要としている州もある。

これは州によって排ガス基準が異なるためである。

カリフォルニアは全米一排ガスに厳しい州で、基準の緩い州から移ってきた場合、テストにクリアするのが大変な場合もあるようだ。

アメリカにも「違法改造」はある?

▼SEMAショーに出展されたカスタムされたマツダ・サバンナRX-7(FC型)は、オーバーフェンダーによって、本来PANDEMのOKマークの上にあるサイドマーカー(ウィンカー)が消えている。

FMVSSで示された安全基準は非常に細かいものがあるが、車を購入したあと、ユーザーが加えるカスタムについてはどのような基準があるのだろうか?日本のような厳しい車検基準も存在するのか?アメリカ車を中心にしたカスタムショップを経営するクワドロペット(神奈川県横須賀市)代表の市来裕昌氏に聞いてみた。

「厳密にいえば、FMVSSの安全基準を外れたところで違法改造になります。ですが、アメリカには日本のような車検がないため、違法改造がどうかを見つけることが事実上難しいでしょう。実際に直接事故につながるとか、歩行者や他の車に多大な迷惑がかからない限り、いちいち取り締まらないのが現状でしょうね。日本では平気なビードロックホイールも実際はダメです。タコ足マフラーなどもダメだったり……。また、日本に存在するマフラーの音量規制はなありませんが、とはいえマフラーそのものを外すとNGなど、州によっても異なります。」

車検のないアメリカなら何でもOKと思ってしまいそうだが、実は日本ではOKでもアメリカではNGのパーツもある。

日本のように国が主導の厳しい車両検査を課さない分、アメリカは自己責任で、万が一その『違法改造』が大事故を引き起こすことになったら賠償額は途方もないものになる。そのあたりは、ユーザー自身の良心と常識に掛かっているともいえる。

[筆者:加藤 久美子 / 撮影:加藤 博人]

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加藤 久美子
筆者加藤 久美子

山口県下関市生まれ 自動車生活ジャーナリスト 大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。出版局にて自動車年鑑、輸入車ガイドブック、整備戦略などの編集に携わる。95年よりフリー。2000年に第一子出産後、チャイルドシート指導員資格を取得し、チャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 得意なテーマはオリジナリティのある自動車生活系全般で海外(とくにアメリカと中国)ネタも取材経験豊富。愛車は22年間&26万km超の916アルファスパイダー。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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