日本人ペインターによる超精密ボディメイクがアメリカで大好評! 全面“彫刻”インパラを見逃すな【SEMAショー2018】

カスタムカーの本場アメリカを驚かせた日本人とは?

2016年のSEMAショーで展示され、見る人すべてを驚愕させた黄金の日産 GT-R(右写真)。このGT-Rを生み出したIZAWA ART DESIGN代表の井澤孝彦氏が、今年のSEMAショーでさらなる超絶技巧を凝らしたシボレー インパラ(1957年型)を展示した。

インパラ自体のレストアから数えると、完成までの時間はなんと1年半!カスタムの本場アメリカで車のプロフェッショナルから絶賛された車とは、いったいどんなカスタムが施されているのだろうか?

■【画像】近くで見るとスゴい! インパラ&GT-Rのボディメイクをもっと見る

■【関連記事】金のGT-RがSEMAショーに登場! ボディ全面の彫刻、お値段5900万円

SEMAショーとは

SEMAとはSpecialty Equipment Market Associationの略で、日本語では特殊部品市場協会と訳される。

SEMAショーはアメリカ最大規模のカスタムカーの見本市で、日本の東京オートサロン、ドイツのエッセンモーターショーと並ぶ、世界三大チューニングカーショーに位置づけられている。例年10月末~11月初旬、ラスベガス・コンベンションセンターで開催される。

エングレイビング(彫刻)の技術を駆使して、唯一無二、至高のインパラが完成

左写真がそのインパラ、右写真はこのインパラを生み出した井澤孝彦氏である。SEMA会場への搬入時から、すでに大きな話題となっていた車で、出展ブースでのサイン会には大勢の来場者が詰めかけた。

ちなみに、SEMAは自動車関連のビジネスをしている人たちだけが入場できるトレードショーゆえ、来場者は基本的に全員が「車のプロ」である。カスタムカーのビルダーはもちろん、板金塗装やレストアといった分野のプロ中のプロが、世界中から毎年やって来る。井澤氏のインパラはカスタムの本場アメリカで、非常にハイレベルなプロフェッショナルたちから絶賛された。

絶賛のポイントは、第一にこの外装が、ラッピングではないということにある。

遠目に見てもシルバーボディのインパラは非常に目立つ存在だが、近くに来てみてびっくり!シルバーの彫刻模様が入ったラッピングフィルムで外装を仕上げているのではなく、車全体に施されたエングレイビングと特殊なメタル塗装によって、長い時間を掛けて完成させられているのだ。

世界中の車のプロを驚かせた「エングレイビング」とは?

カーカスタムの技術の一つ「エングレイビング」(engraving)は彫刻を意味する。

ガラス製品の加飾や銅版画の技法にも同様の技術があるが、カーカスタムの世界ではこれまで金属製のバンパーやサイドミラーなど、狭い部分への限定された施工が一般的だった。それですら、繊細な模様を彫刻刀で彫り込むには非常に高い技術力を必要とする。誰もやったことのない「巨大なインパラのボディ全体にエングレイビング」というのは、非常に大きな挑戦だったのだ。

しかし、どんなに素晴らしい技術であっても、ただ彫り込んだだけではこのような至高の美しさは創造できない。エングレイビングの上に塗る独自開発の「メタル塗料」無くしては完成しないのだ。

0.9kgで7万円! 開発に10年を費やした超高級メタル塗料とは

エングレイビングと並んでこのインパラに使われているのが、独特の光沢を放つ特殊なメタル塗料だ。

井澤氏が独自に開発したメタル塗料は原料メーカーと試行錯誤度繰り返し、完成までなんと10年の歳月がかかっている。2016年のSEMAショーに展示された黄金のGT-Rにも使われた塗料だが、こちらは現在、世界中のカスタムペインターから注文が殺到しているとのこと。

井澤氏いわく、「これまで、ボディを金属色のメタル調に仕上げるには、クロームメッキシステムや銀を使った塗装が一般的でした。しかし、これらの手法では条件によってはわずか数か月で紫外線による退色や黄変が始まってしまい、さらには銀(Ag)ベースなので化学反応しやすく、黒ずんだり、白くなったりと美しさを保つことは到底できなかったんですよ」とのこと。

10年の歳月を経て完成されたメタル塗料は圧倒的な輝度を誇り、さらには変色、劣化の心配も一切なく、一般の自動車塗料のように使えるという。

当然、塗料の値段もケタ違いで、0.9kgで7万円!一般的な補修用自動車塗料の約20倍である。

なお2016年のSEMAに出展された黄金色のGT-Rは、まず銀色のメタル塗装を行った上で、こちらも独自開発のキャンディ塗料を塗装している。

インパラもスゴイが、隣のGT-R も実はかなりスゴイ

インパラのインパクトは相当なものだが、隣に並べられていた青いGT-Rも、実は誰にも真似のできない技術力とセンスが発揮されている。

こちらはSEMAには初出展だが、2018年1月に開催された東京オートサロンのKUHL RACING JAPANブースに出展したものと同様なので、記憶にある方もいるだろう。

当然、施工の簡単なラッピングではなく、すべて塗装で仕上げられている。ボディを走る白いラインも下描きなどなく、緻密な計算をするわけでもなく、すべては井澤氏の「感覚」によって作られているそうだ。

しかし、強烈なインパクトを与えるインパラの横に並べられると、どうしてもインパラの方に目が行ってしまう。GT-Rに向かう来場者の関心がやや薄かったように感じたことは少し残念だった。

SEMA IGNITEDではデモ走行も! 2019年には東京オートサロンで展示へ

SEMAでは例年、4日間のショー最終日に、各出展者が展示車両を実際に走らせるパレードランのようなイベントが行われる。こちらはパブリックなイベントなので、一般来場者も参加費用を払えば入場可能だ。銀色のインパラと青いGT-Rもこれに参加してパレードランを盛り上げてくれた。

カスタムカー文化の根強いアメリカにあって、長い歴史のあるシボレー インパラは特別な車なわけだが、そこに全く新しい斬新な流れを日本人が持ち込んだことは、さらなる評価の対象となった。

どんな車なのか一目見てみたい!という方は、来年の東京オートサロンに足を向けるべし!このシボレー インパラの出展が予定されている。

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加藤 久美子
筆者加藤 久美子

山口県下関市生まれ 自動車生活ジャーナリスト 大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。出版局にて自動車年鑑、輸入車ガイドブック、整備戦略などの編集に携わる。95年よりフリー。2000年に第一子出産後、チャイルドシート指導員資格を取得し、チャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 得意なテーマはオリジナリティのある自動車生活系全般で海外(とくにアメリカと中国)ネタも取材経験豊富。愛車は22年間&26万km超の916アルファスパイダー。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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