「燃費」「エコカー減税」が追い詰め、三菱自が燃費偽装を行った4つの理由(3/4)

「燃費」「エコカー減税」が追い詰め、三菱自が燃費偽装を行った4つの理由
平成27年度業績概況説明会:三菱自動車本社 (左)三菱自社長 兼 COO 相川哲郎氏/(中央)三菱自会長 兼 CEO 益子修氏/(右)三菱自 副社長 中尾龍吾氏 (左)スズキ株式会社 鈴木修 代表取締役会長/(右)スズキ株式会社 代表取締役 鈴木俊宏社長 三菱eKワゴン/日産デイズ 発表会 三菱eKカスタム メーター 三菱自動車本社前に集まる報道陣 燃費不正問題が明るみになった4/20夜の三菱自動車本社前 日産・三菱資本提携で会見する三菱 益子会長 三菱自動車本社前 平成27年度業績概況説明会:三菱自動車本社 スズキ ハスラー発表会でスピーチする鈴木修会長 画像ギャラリーはこちら

理由3:軽自動車の機能の向上が行き詰まり、差が付くのはもはや燃費だけ

スズキ ハスラー発表会でスピーチする鈴木修会長

今の軽自動車は、一部の車種を除くと全高が1600mmを上まわり、一種の飽和状態に達して均質化されている。手っ取り早く差を付ける手段が燃費数値だ。

スズキハスラーのように、背の高い軽自動車でも個性化を図って売れ行きを伸ばした車種もあるが、こういった商品はなかなか開発されない。eKワゴン&デイズは、ワゴンR/ムーヴ/N-WGN。eKスペース&デイズルークスは、スペーシア/タント/N-BOXと同類に見られ、セールスポイントも似ている。

これはサイズを共通化した軽自動車の宿命でもあるが、燃費とそのほかでは緊急自動ブレーキを作動できる安全装備に、差を付けられる対象が限られていた。商品開発の行き詰まりも燃費競争の要因になっている。

理由4:話題の「惰行法」は適切な走行抵抗の測定方法なのか

シャシダイナモメータによる燃費測定方法平成27年度業績概況説明会で燃費不正の経緯を話す、相川社長

道路運送車両法では、走行抵抗の測定方法として惰行法が定められる。試験自動車を指定速度(時速20kmから90kmまで10km刻み)で走行させ、変速機を中立(ニュートラル)にして惰行させる。この後、車速の低下に要した時間を0.1秒以下の単位で測定。その結果から走行抵抗(主に空気抵抗とタイヤの転がり抵抗)を算出する方法だ。

この走行抵抗をシャシダイナモメータにインプットして、JC08モード走行試験を行い、燃費と排出ガスを測定する。

三菱自動車の場合、軽自動車については、恣意的な操作で算出された走行抵抗を使ったとされる。なおかつeKワゴン/デイズのターボ車や4WD車、eKスペース/デイズルークスは、走行抵抗を机上で計算したという。この背景には燃費数値を粉飾する目的があった。

また三菱自動車の小型&普通車の多くは、高速惰行法と呼ばれる別の方法で走行抵抗を測定していた。

スズキについては、空気抵抗は風洞実験設備で測定した空気抵抗係数(Cd値)と前面投影面積で算出した。広義のタイヤの転がり抵抗は、タイヤ自体の転がり抵抗/ブレーキの引きずり抵抗/ベアリングの抵抗/ホイールアライメントによる抵抗などの測定データを積み重ね、走行抵抗を算出した。ただしこれと併せて惰行法による測定も行い、数値の隔たりがないことを確認したという。

正規の惰行法を測定しながら、空気抵抗と転がり抵抗を別個に算出して積み重ねる作業を行ったのは不可解。有利な数値を取ったと解釈されるが、燃費数値の粉飾目的はなかったとしている。

この理由についてスズキは、相良テストコースが風の影響を受けやすいことを挙げた。道路運送車両法で定める往路3回、復路3回という風の影響を考慮した惰行法の測定を行っても、数値にバラツキが生じる。そこで個別算出の方法も併用したという。

この件を他メーカーの開発者に尋ねると、「惰行法と定められている以上、その方法で走行抵抗を測定するのは当然だが、天候で測定できる日程が限られるのは確かだ」と言う。スズキの記者会見でも、今後は相良テストコースに防風設備を設けるとしていた。

また別の開発者によると「日本では惰行法で行う規則だが、海外では走行抵抗を算出されたデータが使える国もある」とのことだ。

三菱の記者会見では「気候で有利になるから測定はタイで行う」というコメントも聞かれた。

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

検索ワード

渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

三菱の最新自動車ニュース/記事

三菱のカタログ情報 三菱の中古車検索 三菱の記事一覧 三菱のニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる