MINIシリーズのシェア3割を占める大人気モデル、新型ミニ クラブマンに試乗
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:和田清志
MINIの3割がクラブマン
2016年度(2016年4月~2017年3月)には、2万4917台が新規登録されたのだから、MINIだけで1ヶ月あたり実に2000台以上が売れた計算になるというのはたいしたものだ。販売の内訳も、全体の約35%を占める5ドアハッチバックに次いで、約30%も売れているのが、クラブマンだというのもちょっと意外だった。
いまやバリエーションの増えたMINIファミリーの中でも、3ドアコンバーチブルに次いで登場した初の派生モデルとして、2007年に登場したのが“ミニ クラブマン”だ。往年のクラシックMiniの時代にもあったシューティングブレークコンセプトを現代的に表現し、ストレッチされたボディや観音開きのスプリットドアなどを特徴としており、2015年にモデルチェンジした現行の2代目クラブマンも、そのあたりは踏襲している。
ただし、左右非対称だったサイドドアは一般的なフロントヒンジの4枚ドアとなり、スタイリングもとくにリアまわりが大きく変わり、一度目にすると忘れない、印象に残るデザインとなったのは見てのとおりだ。また、他のモデルが基本コンセプトを大きく変えることなくモデルチェンジしているのに対し、クラブマンは比較的大きく雰囲気が変わったのも興味深い。
後席の居住性と荷室の使い勝手は上々
4270mm×1800mm×1470mmというボディサイズは、MINIファミリーの中で新型クロスオーバーに次ぐ大きさ。内外装の上質な仕立てからしても、もはや「小さい」かどうかにかかわらず、ひとつのプレミアムブランドとしてやっていこうというMINIの意思表示を感じさせる。
丸型のセンターメーターはもちろん、随所にMINIらしさの表現されたインテリアは、クロームパーツやハイグロスブラック塗装を施して、上質感を演出していることも見て取れる。
まるでショートワゴンのような、広い車内空間を想起させる伸びやかなルーフラインのとおり、後席の居住性やトランクの使い勝手は申し分なし。むろん初代と異なり4ドアとなったおかげで後席へのアクセス性にも優れ、平均的な成人男性の体格である筆者が座っても、膝まわりや頭上の空間には余裕がある。後席用のエアコン吹き出し口が設けられているのもありがたい。
トランクの横幅は1m程度とあまり広くなく、ゴルフバッグを横向きには積めないが、奥行きは十分にあり、容量も360リットルある。これだけあれば一般的な使い方をする分には大きな不満はないだろう。リアシートは40:20:40の3分割可倒式で中央のみ倒すこともできるし、フロアボードは高さを2段階に調節できるので、長尺物や背の高い荷物も積みやすい。観音開きのドアは、見た目にもユニークで遊び心があってよいと思う反面、使い勝手においては一長一短あるし、ドライバーにとっては後方視界の大事な部分が隠れてしまうことになるのだが、これもクラブマンならではの重要な個性のひとつ。固いことをいうのはやめておこう。
とにかく、MINIのデザインは好きだが、ベーシックなハッチバックのMINIでは実用性に不満があるという人にもってこいの選択肢がクラブマンである。
楽しく快適な走り
エンジンバリエーションは、1.5リッター3気筒と2リッター4気筒のガソリン直噴ターボ、さらに2リッター4気筒のディーゼルという3種類があり、それぞれスペックの差別化された2グレードずつが設定されているので、選択肢の自由度はそこそこ高い。
今回ドライブしたのは、クラブマン唯一の4WDであり、141kW[192ps]/280Nmを発生するガソリンの2.0リッター直列4気筒ツインスクロールターボエンジンを搭載した「クーパーS ALL4」だ。車両価格は423万円となる。
性能的には1.5リッター3気筒のクーパーでも十分に満足できるのだが、2リッター4気筒のクーパーSは、いかにも過給してます!という感じの、やや過剰気味のパフォーマンスを楽しませてくれる。さらには音。静粛性が高く保たれた中で聴こえる、やや低く響く4気筒らしいエキゾーストサウンドの耳当たりもよい。
フットワークの仕上がりも、MINIファミリーの中でもっともそつなくまとまっている。基本パッケージがロングホイールベースでワイドトレッド、かつ重心高が低めであることが効いて操縦安定性が高く、MINIの中では異色のグランドツアラー的な味わいもある。十分に確保された居住性と相まって、長距離のドライブでもすべての乗員が快適に移動できることだろう。
それでいてMINIらしい「ゴーカート感覚」と評されるクイックなハンドリングも絶妙な按配で表現されているので、ドライバーは存分にドライビングを堪能できる。なんら気になるところもなく、とても乗りやすくて楽しい万能な味付けである。
ダイナミック・ダンパー・コントロール装着車では走行モードの選択により、さらに快適に、あるいはスポーティに走らせることができる。また、ALL 4であれば路面状況を問わない走破性にも期待できる。
このように優れた実用性とドライバビリティを兼ね備え、ユニークで魅力的なデザインの与えられたクラブマン。いろいろな個性が揃い、それぞれが存在感を発揮しているMINIの中でも、クラブマンが多くの人に選ばれている理由が、あらためてうかがい知れた次第である。
[レポート:岡本幸一郎/Photo:和田清志]
MINI Clubman Cooper S ALL4 主要諸元
全長x全幅x全高:4270×1800×1470mm/ホイールベース:2670mm/車両重量:1550kg/乗車定員:5名/駆動方式:4WD(四輪駆動)/エンジン種類:直列4気筒 DOHC 2.0リッターターボ/総排気量:1998cc/最高出力:192ps(141kW)/5000rpm/最大トルク:280N・m/1250-4600rpm/トランスミッション:8速ステップトロニック スポーツトランスミッション(8速AT)/燃料消費率:14.9km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:225/45R17(標準仕様)/メーカー希望小売価格:4,230,000円[消費税込み]
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