渋滞時の先頭合流は“割り込み”じゃない!? ズルく見える「ファスナー合流」が推奨されている理由とは

  • 筆者: MOTA編集部
画像ギャラリーはこちら

高速道路の合流地点で、渋滞の列を横目に加速車線の先頭(一番奥)まで進む車を見て「ズルい!」とイライラした経験、ありませんか? そんな車を見るたびに、自分だけが律儀に列に並んでいるような不公平感を抱く方も多いでしょう。

実際、SNSでも「合流で先頭まで行く車はマナー違反」「割り込みと同じ」といった投稿が後を絶ちません。多くのドライバーが抱くこの感情は、とても自然なものです。

しかし実は、その「ズルい」と思っていた行為こそが、NEXCOやJAFが公式に推奨する正しい合流方法「ファスナー合流」だったのです。実証実験では渋滞を最大4割も短縮できるという驚きのデータも。

そこでこの記事では、誤解に満ちた「ファスナー合流」の真実と、自信を持って実践できる正しい方法をお伝えします。

目次[開く][閉じる]
  1. 実はズルくない! NEXCO・JAFが推奨する「ファスナー合流」とは
  2. 本当に効果はある? 国内外で実証された「渋滞解消の科学」
  3. 正しいファスナー合流のやり方(合流する側・本線側別)
  4. 【注意点】ファスナー合流は「渋滞時」だけ! 正しい使いどきの見極め方
  5. ファスナー合流で想定されるトラブルと回避術
  6. なぜ「ズルい」と感じてしまう? ファスナー合流を阻む“秩序を重んじる心理”
  7. まとめ:交通効率化は一人ひとりの意識から

実はズルくない! NEXCO・JAFが推奨する「ファスナー合流」とは

「ファスナー合流(ジッパー合流)」とは、まさに衣類のファスナーのように、合流地点の先頭(一番奥)で左右の車線から1台ずつ交互に合流していく方法です。英語では「Zipper Merge(ジッパー・マージ)」と呼ばれ、欧米では一般的な交通ルールとして定着しています。

欧州だけではありません。「NEXCO(高速道路株式会社)」も「JAF(日本自動車連盟)」も、この「ファスナー合流」を推奨しているのです。

一見すると「割り込み」のように見えますが、実は全く違います。合流車線の車は加速車線を最大限に使って先頭まで進み、本線の車と1台ずつ交互に合流する。

これが渋滞を悪化させないための、いわばチームプレーなのです。1台でも多くの車をスムーズに流すための、最も効率的な方法として推奨されています。

本当に効果はある? 国内外で実証された「渋滞解消の科学」

「ファスナー合流」は、単なる机上の空論ではありません。国内外の実証実験や研究によって、その効果は科学的に証明されています。

国内実証:一宮JCTで渋滞損失時間が約3割減少

愛知県の一宮JCT(ジャンクション)で、「NEXCO中日本」が「ファスナー合流」を促進する実証実験を行いました。

結果は、なんと渋滞による損失時間が約3割も減少したのです。

たとえば、60分かかっていたノロノロ運転が、およそ40分で通過できるようになる計算です。20分の差は大きいですよね。

この実験では、合流地点にラバーポールを設置して車両が1台ずつ合流するよう物理的に誘導しただけで、大きな効果が確認されました。

海外研究:米ミネソタ州で渋滞の列が最大40%短縮

アメリカのミネソタ州運輸省(MnDOT)が行った大規模な研究では、さらに顕著な結果が示されています。

「ファスナー合流」を導入した区間では、渋滞の列の長さが最大で40%も短縮されたのです。

これは、10km続いていた渋滞が、6kmにまで短くなるのと同じ。合流地点のはるか手前から続いていた絶望的な渋滞が、大幅に緩和されることを意味します。

「AAA」も認める効果の普遍性

そして、日本でいえばJAFにあたるアメリカ最大の自動車協会「AAA(American Automobile Association)」も、これらの研究結果に“お墨付き”を与える形で、ファスナー合流の効果を次のように断言しています。

・ 渋滞列長の最大40%短縮

・ 車線ごとの速度差の低減による安全性向上

・ 車線利用効率の大幅な改善

・ ドライバー間の公平性の向上

これらの客観的データは、「ファスナー合流」が実証された科学的な渋滞対策であることを示しています。

正しいファスナー合流のやり方(合流する側・本線側別)

理論はさておき、ではどうしたらよいのか、実際のやり方が知りたいですよね。ここでは、合流する側と本線側、それぞれの正しい方法を詳しく解説します。

合流する側:自信を持って、スマートに先頭へ

「先頭まで行くのは気が引ける」と感じるかもしれませんが、加速車線を最大限活用することは、「JAF」の公式ガイドにも明記されている合理的な運転方法です。

正しい「ファスナー合流」のやり方

以下は「ファスナー合流」の具体的な手順です。

具体的な手順

1. 早めのウインカーで合流の意思を示す。

2. ミラーと目視で、本線の状況を冷静に確認する。

3. 本線の速度に合わせながら、加速車線の先頭まで進む。

4. 本線に合流ができる1台分以上のスペースがあることを確認。

5. 急ハンドルや急加速を避け、スムーズに合流する。

加速車線の先頭で入ると「周りの視線が気になる」という気持ちは当然です。

しかし、自身が行っているのは全体の交通流を改善する社会貢献なのだと、自信を持って安全に合流しましょう。

NG例

自車の入れそうなスペースがあるからと、手前で無理やり合流すると、ゆっくりと進んでいる本線側にブレーキを踏ませてしまうため、危険を招く可能性もあります。

本線側:「迎え入れる運転」が最も重要

「ファスナー合流」は、本線側の協力があって初めて成立します。自車が本線にいる場合は、以下のように受け入れるとスムーズかつ安全です。

一定の速度を維持しながら1台分のスペースを前方に確保

本線を走行する際は、急な加減速を避け、一定の速度を保ちましょう。そして、前方の車との車間距離を適切に保ち、合流車両が1台入れるスペースを意識的に作ることが重要です。

1台を受け入れたら車間距離を保ち、速度を維持

自車の前に1台を入れたら、前車との車間距離を維持しながら、後ろに合流してくる車がスムーズには入れるようにしましょう。

【注意点】ファスナー合流は「渋滞時」だけ! 正しい使いどきの見極め方

ここで重要なのは、「ファスナー合流」がどんな時でも有効なわけではないということです。交通状況に応じた使い分けが求められます。

有効な時:渋滞中や流れが遅い時

本線の速度が時速30km以下で、断続的に停止するような渋滞時には、「ファスナー合流」が最も効果を発揮します。堂々と合流車線の先頭まで進み、1台ずつ交互に合流してください。

不適切な時:交通がスムーズな時

一方、交通がスムーズに流れていて、車間距離に余裕があるような状況では、かならずしも加速車線の先頭まで行く必要はありません。

パワーのない車などは、加速車線を使い切って、流れに乗れるように十分な速度づくりが必要です。一方で、十分に加速ができ、合流できるスペースがあるならば、本線の流れに乗れる速度となった時点での合流が推奨されます。

十分な加速が完了しているのに、あえて加速車線の先頭まで行くことで、タイミングが合わずに急ブレーキを踏むことになったり、車間距離が確保できないまま無理のある合流になったりと、かえって危険となる可能性があります。

ファスナー合流で想定されるトラブルと回避術

「ファスナー合流」を知らない方もまだまだ多いため、誤解している方とトラブルになる可能性もあります。

科学的に正しいと知っていても、周囲の冷たい視線やクラクションは気になりますよね。

大切なのは、相手のイライラは「知らないことによる誤解」だと理解し、冷静に対処することです。感情的になったら負け。スマートな運転で切り抜けましょう。

クラクションを鳴らされたら?

「ファスナー合流」は科学的に正しく、公式に推奨されている行為です。感情的な反応に動揺せず、冷静に安全確認を徹底し、スムーズに合流を完了させましょう。

ブロックされたら?

意図的に車間を詰められた場合は、無理な割り込みは絶対に避けてください。焦らず、次の車両との間にスペースができるのを待ちましょう。安全が最優先です。

進行を妨げないこと、そして安全を最優先に

渋滞時に実践している「ファスナー合流」は、NEXCOやJAFもお墨付きを与える、科学的根拠に基づいた社会貢献です。

一部の誤解による感情的な反応に惑わされず、「自分は全体の流れを良くしているんだ」と自信を持ってください。

ただし、合流時には本線の進行を妨げないこと(道路交通法 第75条の6)を意識し、目視による安全確認、ウインカーによる合図は必ず実施し、安全と円滑化を図りましょう。

なぜ「ズルい」と感じてしまう? ファスナー合流を阻む“秩序を重んじる心理”

アメリカやヨーロッパでは、「ファスナー合流」は交通ルールとして制度化され、道路標識などで積極的に啓発が行われています。特にドイツでは法律で定められ、違反者には罰則もあります。

では、なぜこれほど合理的な方法が、日本ではなかなか普及しないのでしょうか。

そこには、多くの人が持つ公平性への意識が関係していると考えられます。「自分が先に行くより、みんなでじっと耐えるべき」「列の順番は絶対に守るべき」といった、ルール以前の“暗黙の美徳”が、無意識のうちに私たちの行動に影響を与えているのです。

その結果、一部のドライバーが正義感から「ズルい車は入れてやらない」と意図的に車間を詰める“ブロッキング行為”に走ってしまうことがあります。

しかし、皮肉なことに、その秩序を守ろうとする行為こそが合流車線の流れを完全に止め、全体の渋滞をさらに悪化させる最大の原因となっているのです。

これが、効率的な交通システムの普及を阻む一因となっている側面もあります。しかし、近年は「NEXCO」なども啓発活動を活発化させており、徐々に認知度は向上しています。

まとめ:交通効率化は一人ひとりの意識から

この記事を通して、「ファスナー合流はズルい」という印象が、誤解であったことに気づいていただけたのではないでしょうか。

もう、合流地点で先頭へ向かう車にイライラする必要はありません。なぜなら、その運転こそが、渋滞という社会問題を解決する“最適解”だと、あなたは知っているからです。

ファスナー合流を実践する方は、さっきまでの「不公平感」を「社会に貢献している」という自信に変えて、交通効率化のパイオニアとして、堂々とハンドルを握ってください。あなたのその小さなアクションが、日本の道路を少しずつ変えていくはずです。

記事で紹介した商品を購入した場合、売上の一部が株式会社MOTAに還元されることがあります。

商品価格に変動がある場合、または登録ミスなどの理由により情報が異なる場合があります。最新の価格や商品詳細などについては、各ECサイトや販売店、メーカーサイトなどでご確認ください。

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

検索ワード

MOTA編集部
筆者MOTA編集部

MOTA編集部。編集部員は、自動車雑誌の編集者やフリーランスで活動していた編集者/ライター、撮影も同時にこなす編集ディレクターなど、自動車全般に対して詳しいメンバーが集まっています。

MOTA編集部
監修者MOTA編集部

MOTA編集部は自動車に関する豊富な知識を持つ専門家チーム。ユーザーにとって価値のあるコンテンツ・サービスを提供することをモットーに、新型車の情報や、自動車の購入・売買のノウハウなど、自動車に関する情報を誰にでも分かりやすく解説できるように監修しています。

MOTA編集方針

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる