ホンダ ザッツ 試乗レポート
- 筆者: 西沢 ひろみ
- カメラマン:芳賀元昌
雑貨といっしょにクルマが販売される時代が来るのかもしれない。
RV、そしてコンパクトカーと次々にヒットを飛ばしているホンダから、新しい軽自動車、That'sが登場した。昨年秋の東京モーターショーに参考出品されたW・I・Cの市販化である。
このクルマは、これまでのエンジンを始めとするハードウェアを中心にしたクルマ作りではなく、家電や家具といった日常的な身の回りのモノとして開発されたのが特徴。妙に四角いカタチも目を引くが、それ以上に中身が斬新かつ新鮮で個性的なクルマなのだ。インテリアも、各パーツが部屋のアイテムに見立ててデザインされている。
21世紀に入り、続々と新ジャンルが生まれている軽自動車は戦国時代に入っている。その中で初めてクルマを道具、つまりモノとして割り切ったThat'sはどんな評価を得るのだろう。ここ数ヶ月、そして1年後の販売動向が楽しみだ。
エンジン、シャシーを共有するライフとは、見事に走行フィールが違っている。
That'sのグレードは極めてシンプルだ。NAエンジンを積むThat'sとターボエンジンを搭載するThat'sターボの2機種。あとはアクセサリーを選ぶだけでいい。このあたりもモノ感覚のひとつなのだろう。38kwの3気筒SOHCエンジンは基本的にライフと同じで、クルマの流れにのって街中をスイスイ走れる性能だ。遮音にも力が注がれ、静粛性の高さはしっかりと体感できる。だけどダラダラと続く坂道では、加速がやや緩慢に感じる。コンパクトカーに対抗するべく身だしなみを整えたら、車重が820kgとやや重めになったことが影響しているようだ。低回転域から過給を始めるターボなら不満はまったく残らないけれども、逆に元気のいい走りも期待できない。
乗り味はキビキビ感を演出したライフに対して、That'sはロール感を伴うマイルドな味付け。軽快感や気持ちのよさといった、これまでのクルマが目指していた部分を完全に切り離している。ただし標準装備のタイヤサイズは145/80R12とお粗末。ABS+13インチアルミは是非装着したいところだ。
広く居心地のいい居住空間に比べると、機能性はあまり高くない。これも雑貨感覚なのだろう。
決められたボディサイズの中で広く快適な居住空間を得るために、That'sは前後左右のウインドウをギリギリまで立てた。視覚的にも工夫を凝らして、全体的な広さ感を演出。実際にも、クラストップレベルの室内長1685mm、室内高1260mmを確保したのだ。確かに、どのシートに座っても1クラス上の居住性が得られる。だけど乗降性を優先した610mmのシート高は、女性の平均的体型で運転ポジションをとると、座面がちょっと低くて膝が浮いてしまう。これではアクセルとブレーキのペダルの踏み換えがしづらく、疲れにもつながる。せめてシートリフターやチルトハンドルを装備して、体型に合わせた微調整ができるようにして欲しかった。
後席を折り畳んでラゲッジを拡大する操作性もいまいち。ヘッドレストを外して、フロントシートを前にスライドさせて、リアシートを格納しなければならないからだ。ライフで指摘されていた、荷室床のフラット化を意識しすぎた気がする。
他の軽自動車と比べることは間違い。雑貨として見て、触れて、乗ってみたい。
背高ノッポのミニミニバンから、マルチワゴンへ。軽自動車の主流は変わりつつある。だがスポーツ路線も復活の兆しを見せているし、アルトラパンといったファッションと室内空間を融合させた個性派も注目に値する。最新の軽自動車であるThat'sは、ひと言なら広さが自慢のクルマ。コンセプトも面白い。3 速ATしか持たないため、走りで勝負したくてもできないホンダが選んだ新しい方向性である。それでも、クルマに興味を持たない若者が増えている今の時代にマッチしたクルマ作りであることは確かだ。
多機能を備える携帯電話を選ぶのと同じ感覚でThat'sに触れれば、新しいクルマの価値観が伝わってくるかもしれない。
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